私の好きな映画

カッツ
2025/12/14 12:35

ラストコーション

2007年公開、アメリカ・台湾・中国・香港の合作による歴史サスペンス映画であり、第二次世界大戦下の香港と上海を舞台に、抗日組織と日本の傀儡政権との間で繰り広げられる暗殺計画と、そこに芽生える禁断の愛を描いた作品である。主演はトニー・レオン。

タイトルの「ラスト」は“肉欲”を意味する。私はLast caution(最後の警告)だと長いこと思っていたが、愛欲と警告だ。物語は肉体と感情、任務と愛情の狭間で揺れる女スパイの心理を繊細かつ大胆に描いている。彼女が暗殺対象である特務機関員と関係を深めていく過程は、緊張感と官能性が入り混じり、観る者に複雑な感情を呼び起こす。

モデルとなった実在の人物テン・ピンルー、彼女は中国人の父と日本人の母を持つ実在の人物であり、その出自が物語にさらなる深みと複雑さを与えている。彼女の立場は、国家や民族の境界を越えた葛藤を象徴しているようにも感じられる。

香港や上海の街並みは忠実に再現されており、当時の上流階級の生活様式や空気感が細部にわたって描かれている。当時の香港、上海の上流階級がずいぶん贅沢な生活をしていたんだなあと感心した。それに比べて日本の兵隊が料亭で宴会をしているシーンなど、少し貧弱に見える。その分中国のセットや衣装、美術に相当な予算がかけられている。歴史的背景と美術的完成度が融合した映像は、まるで一枚の絵画のような美しさを持っている。

トニー・レオンとワン・チアチーによるベッドシーンは、過激でありながらも物語の核心に触れる重要な場面として描かれており、単なる官能描写にとどまらない心理的な深みがある。

『ラスト、コーション』は、歴史の闇と人間の欲望、そして愛と裏切りの境界を描いた、静かで激しい作品である。観終えた後も、登場人物たちの選択とその余韻が心に残る。

 

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1 件の返信 (新着順)
LOQ
2025/12/17 00:22

本作は名画ですね。
「芝居は現実そのもの。観客は痛みを理解したのよ」とセリフにあるように、虚構と現実が反転。
現実はまがまがしく一偽りに満ちていて、一方スパイ目的の愛人関係がほんとうの愛情になっていく。
日本軍も酒宴ではどこか貧弱で、うさを晴らすだけの飲み方は勇猛さもなく虚勢を張ってるだけのよう。
彼女が彼を逃した後の道路封鎖も周囲はどこかのどかでさえある。

アン・リーのみごとな演出ですね。