DISCASレビュー

カッツ
2025/10/28 07:39

祭りの準備

昭和30年代の高知県中村市(現・四万十市)を舞台に、ライターになる夢を抱きながら信用金庫に勤める青年と、彼の周囲に暮らす人々の姿を描いた作品である。
地方都市のゆるやかな時間の流れの中で、登場人物たちのささやかな希望や葛藤が丁寧に描かれている。近所の“ワル”を演じる原田芳雄は、粗野でありながらどこか人間味のある存在感を放っており、物語に深みを与えている。
青年の恋人役には、デビュー間もない竹下景子が出演しており、初々しさと芯の強さを感じさせる演技が印象的だった。火事のシーンでは、彼女の裸身が拝める貴重な映画である。
日本がまだ貧しく、地方の暮らしが素朴だった時代の空気が、画面の隅々にまで染み渡っており、四国の街に生きる人々の生活が実にリアルに映し出されていた。

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