『春画先生』これは究極の推し活だ‼︎
みなさんは偏愛と聞いて、何を思い浮かべるだろうか?私にはあまり馴染みのない言葉だ。
では推し活やフェチだったらどうだろう、現代ではよく使われ浸透している言葉、今や誰の心にも推しやフェチがあるのではないか?対象は人でなくても、動物や建築物でもいい、そこに真面目な変態性を加えたのが偏愛なのだと私は捉えた。本作は春画に魅了され、偏愛を恐れず、好きな物にとことんのめり込んでいく可笑しな人たちの物語だ。
🔸一部ネタバレがあります🔸
➖あらすじ✍️➖
”春画先生”と呼ばれる変わり者で有名な研究者・芳賀一郎は、妻に先立たれ世捨て人のように、一人研究に没頭していた。退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。やがて芳賀が執筆する「春画大全」を早く完成させようと躍起になる編集者・辻村や、芳賀の亡き妻の姉・一葉の登場で大きな波乱が巻き起こる。それは弓子の“覚醒”のはじまりだった。『春画先生』公式より引用。
内容のまえに更に本作について触れると映倫【R15+】商業映画として全国公開される作品としては日本映画史上初、劇中の春画は無修正です。
\\私が注目したポイントはこちら💡//
☑︎春画の奥深さ
☑︎愛すべき、キャラが濃すぎる人たち
☑︎譲れない物
☑︎心のリミッターを外すキーパーソン
(ここでネタバレあり!)
☑︎まとめ
🎬 春画の奥深さ
私は春画をここまでじっくり見たのは本作がほぼ初めてだ。
男女の顔は無表情、筆触は細いが、行われていることは大胆で機械的。そのギャップに興味をそそられるのかもしれないと芳賀と弓子を見て思った。歴史を遡ると江戸幕府の禁制品だった春画。表には出回ることが無かった為、自由な創作が可能となり江戸時代の真のエンタメとなったそうだ。弓子じゃないが最初はその部分にしか目が行かない、それも一つの見方。でも周りに目を向けると当時の景色や生活感、着物や手足の動き、技法にも浮世絵師それぞれの個性が見られ趣きがあった。これには私も意外だった。そこに注目しながら見ると面白い。
🎬 愛すべき、キャラが濃すぎる人たち
本作の面白さの一つは、登場人物全員のキャラが濃いところだ。でも決して悪印象ではなく、むしろ好印象だった。自分の欲求にどこまでも正直なだけなのだ。
春画先生の芳賀(内野聖陽)は無意識に人を虜にさせてしまう真の人たらし。芳賀に会った人は皆、心のリミッターを外されてしまうという。愛する人と春画への熱量を天秤にかけたら、時には春画のほうを取ることもある。
その芳賀に振り回されるのが弓子(北 香那)春画を学びたい気持ちもあるが、芳賀を心から愛し全てを把握していたい、嫉妬深く喜怒哀楽が激しいわかりやすい女性だ。
次に通称いい加減な色男の辻村(柄本佑)おそらくご覧になった方は印象に残るだろう…青いブリーフ姿…。いや、そこではなく!芳賀と弓子をよ〜く知り尽くしている人物。ときには弓子にアドバイスもするが男女問わず自分も楽しんでしまう。性に対して自由奔放だ。
芳賀家の家政婦 絹代(白川和子)出番こそ少ないが、芳賀が新しく弓子も家政婦にしたことで弓子に嫉妬心を抱く。白川さんは実際に日活の専属女優として活躍されていたそうだ。
もう一人の藤村一葉(安達祐実)は後にとっておく事にする。
🎬 譲れない物
自分の好きな人や物を譲らないところも本作の魅力。自分の好きな物が手に入るまで、とにかくジタバタする、芳賀と弓子がその典型的だ。その姿はカッコ悪く、でも潔くてかっこいい。詳しい内容は伏せるが、ときには体も張ることもある。そこまでして欲しい物はありますか?と聞かれたら、私は無いと答えてしまう。その対象に裏切られてしまう可能性があるからだ。芳賀と弓子の自分の信念を貫く姿には尊敬すら感じたし、弓子は実にいきいきとしていた。
🎬 心のリミッターを外すキーパーソン
ある意味、芳賀も辻村も心のリミッターを外す人物だが、あともう一人いる。ここはネタバレになってしまうが、その人物はズバリ藤村一葉(安達祐実)だ。芳賀の元恋人で亡くなった妻の双子の姉。互いへの心のリミッターを外せない芳賀と弓子をその先へと導いていく。芳賀の性癖までも知る人物で、やり方はかなり強引だが的を得ていた。一葉は亡き妹の存在を芳賀から離すキッカケを与えたのだ。それに素早く対応したのが芳賀への愛で溢れる弓子だった。愛しい人の性癖までも包み込む、弓子の大きな愛を感じられた。
その他にも芳賀が暮らす日本家屋、一葉が住む館の違いも面白い。それぞれの個性がよく現れていた。
🎬 まとめ
鑑賞後に思った事は、偏愛とは人をよく知ること、そして愛しさで溢れる世界という事だ。それに何もないより自分だけの秘密や変態性を持っていたほうが魅力的に思えた。
それに春画に対するイメージが変わった。とても身近に感じられたし、改めて新しい芸術に出会った感じ、それは嬉しいことだ。
全くの余談だが、私の心のリミッターを外す場所はライブだ。推しがMCで毎回言う、外せ‼︎ と。あれ?それなら既に私は本作のような世界に居たのか?それに推しも相当な人たらしなのだ。そう考えると私にとって『春画先生』は共感できる作品だ。
偏愛とは自分の自我と向き合うことに繋がるから めんどくさい世界でもあるが、それを超えたら愛しい世界が待っている。『春画先生』は何かにのめり込むことを躊躇う人の味方になってくれるでしょう。
ここまで読んで頂きありがとうございました😊