オリジナルを再評価させる使命を負った「シン・仮面ライダー」
「シン・仮面ライダー」のパンフレットに庵野秀明監督のコメントが掲載されていて、そこにはこんな意味のことが書かれています。
「僕の考えた仮面ライダーを作りたいではなく、仮面ライダーという作品に恩返しをしたい」
「オリジナルの魅力を社会に広げ、オリジナルの面白さを世間に再認識させたい」
つまり、オリジナルの仮面ライダーを「古臭い、子供だましのチャチな作品」と捉えて、それを大人の鑑賞に耐える現代的な作品に作り直す…というアプローチでは、なく。
オリジナルの仮面ライダーなんて「古臭い、子供だましのチャチな作品」と思ってるだろう世間の人々に、実はこんなに面白いんだ!ということを、自分が作る新作を通して再認識させる、というアプローチをやっているのだと思うのです。
だから、「シン・仮面ライダー」は「オリジナルのチャチだったところを現代風にリファインする」ということを、ほとんどやっていません。
仮面ライダーはジッパーの見えてる革ジャケットを着ていて、マスクからは後ろ髪がちょろっと出ている。
派手な特撮とか流れるようなスムーズなアクションではなく、短いカットを次々につないで、何だかよくわからないけどカッコいい動きをしているように見せている。
間の過程は全部すっ飛ばして敵のアジトに到着し、どうでもいいところは省略し、理屈よりも勢いでストーリーを展開させていく。
この辺、全部オリジナルの特徴なんですよね。なおかつ「時代ゆえの粗さ」と取られがちで、リファインされてなくなってしまいがちなところなのだけど。
でも、観ていて体で感じる「仮面ライダーらしさ」を醸し出しているのは、実はこういうところなのだと思うのです。
一方で、変えてあるところもあります。
ショッカーは世界征服をたくらむ悪の秘密結社ではなく、人類の幸福を目指す愛の秘密結社になっています。
他の生物と融合したモンスターだった怪人は、オーグメントとなり、ライダーと同様にマスクとスーツを着た存在に変更されています。
この辺りはテーマやディテールを現代的なものにしてあるのだけど、ここは言ってしまえば「どっちでもいいこと」なのでしょうね。
オリジナルの「仮面ライダー」においても、ショッカーの「世界征服」なんて何だかフワッとした目標で、闘いの構図を作るための便宜上のものでしかなかった。
だから、そこの変更は観ていて感じる「仮面ライダー」らしさには影響してこないのだと思うのです。
「シン・仮面ライダー」はオリジナルの「仮面ライダーらしさ」をそのまま保ちながら、それを現代の役者、現代のテーマ、現代の演出でカッコよく、面白く見せることに、見事に成功していると私は思います。
というわけで! ぜひ再評価してほしい、オリジナルの紹介をしておきます。
仮面ライダー ←レンタルはこちら
1971年に放送されたオリジナルのテレビ版「仮面ライダー」。
映画に登場するキャラクターのモデルになっている怪人「クモ男」は第1話、「コウモリ男」は第2話、「サソリ男」は第3話、「ハチ女」は第8話に登場します。
一文字隼人の初登場は第14話。Wライダーが共演するのは第40・41話など。
仮面ライダーTHE MOVIE ←レンタルはこちら
1971年〜72年の放送当時に公開された映画版を3本収録したDVD。
「仮面ライダー対ショッカー」「仮面ライダー対じごく大使」は映画オリジナルのストーリーになっています。
ブログでも、シン・仮面ライダーの解説記事を書いています。よろしかったらどうぞ。