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私の好きな映画

椿五十郎 バッジ画像
2023/10/20 21:16

【まいふぇいばりっとぱーそん①】アメリカエンタメ界の偉人 メル・ブルックス

みなさん、こんにちは。
椿です。

 

今回は、私の大切な映画人をご紹介したぁぁぁい!!
ということで【まいふぇいばりっとぱーそん】なるコーナーを設けました。

なにせ、浅薄な知識しか持っていない五十郎ですので、本コラムを読んで「そんなこと知ってるよ」と思う方もいらっしゃるでしょうが、お付き合いいただけますと幸いです。

今回ご紹介する御仁は・・・

メル・ブルックス

でありますっ!

Angela George, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10257010による

 

映画お好きな方でも、

「誰??」って方、いらっしゃるんじゃ、あ~りませんか?

 

正直いっちゃうと、偉大な映画監督であるキューブリックだとかスピルバーグだとか、その他もろもろ、名前が出てくるであろう、偉大な映画監督達と並び評される人物なのに、日本ではいまいち知名度が・・。
 

メル・ブルックスが愛される理由

まぁ、それもそのはずといいましょうか、この方、パロディコメディ映画の大家でして、古き良き時代の映画やミュージカルなんかを徹底的にパロる。しかも、作風はドタバタ、お下品。アメリカ人にしか分からない感覚のギャグもあるので日本人にはピンとこなっかったりもするのでしょうね。
 

そんな作風の彼が、何故アメリカで偉大な映画人として尊敬を集めているか?

 

まず、「パロディコメディ映画の創始者」と言える方なのです。彼の前の時代のコメディ映画といえば、チャップリンやキートン、マルクス兄弟などに代表される、スラップスティックコメディ(身体を使い笑いを取りに行くコメディ)でしたが、ブルックスの映画の登場でコメディ映画は、(今現在でも)〝パロディもの”が主流となりました。

彼のパロディの対象はブロードウェイミュージカルに西部劇、30年代ユニバーサルの恐怖映画から、サイレント映画、ヒッチコック映画、史劇、果てはスターウォーズに至るまで、アメリカを象徴する映画、エンタメを徹底的に研究しパロるのです。しかもそのどれにおいても、元ネタである映画への愛が溢れている。パロディにされた映画に関わった人々やファンにも愛されている。

 

次に、彼の笑いは社会悪への批判的精神を、声高に訴えることなく、下世話な笑いの中に消化して(昇華して?)いることです。彼の出自はユダヤ人であり、こと、ヒトラー、ナチスを大いに笑い飛ばすことをライフワークとしており、監督デビュー作だった『ザ・プロデューサーズ』では67年という、第二次大戦後まだ20年程しか経っていないときに「ヒトラーを礼賛するミュージカル」を作って大コケさせて儲けようという、当時として(今でも欧米なら)は不謹慎な題材を見事な大爆笑映画に仕立て上げてしまうのですから。その挑戦的な精神は先端を行くコメディアンであったと思います。

また、マイノリティへの差別にも批判的精神を向けています。彼の作品ではゲイの登場人物が重要な役割を担って登場します。前述の『ザ・プロデューサーズ』、それをミュージカル化した『プロデューサーズ』、『メル・ブルックスの大脱走』などに登場するゲイのキャラクターは、一見するとなよなよしたおじさん達という、今ではその描き方が批判されそうな登場の仕方ですが、彼らの登場が物語を支え、かき回し、断然面白くする。彼ら無しには作品はよくならない。彼らもこの映画の中の重要な仲間である、という、愛が感じられるのです。今の行き過ぎるポリコレ旋風吹き荒れるアメリカエンタメ界ではミュージカル『プロデューサーズ』の史上最高の快挙を成し遂げることは叶わなかったかもしれませんが、今でもこのミュージカルや映画は多くのゲイの人たちからも高い評価を得ています。

そして、彼の映画には、古き良きミュージカル的な要素があふれています歌と踊り。これは昔の映画の重要な娯楽要素。アメリカ映画に限らず、洋の東西問わず、日本映画ですらもそうです。ブルックスはチャップリンと同じく、なんでもマルチにこなして映画を作る人。監督、製作、脚本、出演、そして作詞作曲。彼の紡いだ曲の数々は楽しく、耳馴染みの良い優しさ暖かさが溢れています。観る者にホットな気持ちを導き出し、笑いの世界へ誘う、歌はコメディの重要なアイテムであることをブルックスは証明してくれています。彼の作品を見て、彼の歌に触れたなら、きっとそのメロディを口ずさんでることでしょう。

メルに集う人々

 

そんな、愛されるメルの周りには、素晴らしい俳優やスタッフが集います。
まず、ブルックスファミリーとも言えるような、彼の映画のおなじみの俳優達。ジーン・ワイルダークロリス・リーチマンマデリーン・カーンのようなアカデミー賞俳優もいれば、メルの先輩格の有名なコメディアンであるシド・シーザーゼロ・モステル。もともと素晴らしいコメディアンだけど、ブルックスの映画から更に飛躍したマーティ・フェルドマンドム・デルイーズハーヴェイ・コーマン。(余談ですが、今夏公開のホラー『ヴァチカンのエクソシスト』のプロデューサーで、まめに日本のSNSでファンサービスを行い、作品を大ヒットに導いたジェフ・カッツ氏のX(旧ツィッター)で使用されているアイコン画像はハーヴェィ・コーマンです)
また、ハリウッドの大スターが、「メルの映画なら」と、サイレント映画をサイレントで撮る、というおバカコメディ映画に本人役で出演を快諾するのですが、この布陣がすごい。バート・レイノルズジェイムズ・カーンライザ・ミネリ、パントマイムの第一人者のマルセル・マルソーポール・ニューマン。出演時間10分も満たないコメディシーンにこれだけの大スターが出演するのです。
また、名作として名高い『ヤングフランケンシュタイン』ではジーン・ハックマンが自らメルの新作に出演したいと申し出、盲目の老人役で出演。オープニングタイトルにクレジットされていないので、あの老人がまさかハックマンだったとは⁉と思った人も多いはず。

 

スタッフ系でも、ブルックスファミリーと呼ばれる人は多く、共同で脚本をしたり出演をしたりしているルディ・デ・ルカは自身もコメディ映画の監督(『突撃!バンパイアリポーター』)をしています。また『レインマン』でアカデミー監督賞を受賞したバリー・レヴィンソンもその一人。『新サイコ』では大爆笑シーンで出演もしています。特殊視覚効果では『遊星からの物体X』等、名作映画に多数関わっている大家、アルバート・J・ホワイトロックがブルックス作品のほとんどに参加。やはり『新サイコ』等で出演も果たしています。音楽のジョン・モリスは賑やかしな明るい曲から、格調高い哀愁を帯びたメロディまで、多彩な音楽でブルックス映画のほとんどを支えてきました。また、ブルックスの作曲する歌パートに見事なオーケストレーションを施すなど、ブルックス映画には欠かせない存在です。

ブルックスの仕事

監督として・役者として
ブルックスの監督作品は11本。そのうち自身出演作は8本。ほかの人物が監督した映画出演は1本。すべてコメディ。アニメ映画では『ロボッツ』『トイ・ストーリー4』『モンスター・ホテル』等に声優としても出演。テレビアニメ『ザ・シンプソンズ』にも声優で出演しています。
 

製作者として

脚本家としてキャリア初期には様々なテレビドラマにかかわっています。日本でも放送された『それ行け!スマート』は企画にも加わっています。(後年アン・ハサウェイ主演で映画化『ゲットスマート』)
またプロデューサーとしてデヴィット・リンチの『エレファントマン』、デヴィッド・クローネンバーグの『ザ・フライ』等、映画史に残る名作を製作。シリアスな作品をプロデュースするときは、映画のクレジットに自身の名を載せないブルックス。理由は「自分の名が出てくるとコメディだと思われてしまうから」とのこと!なんか、偉くないですか!?

ブロードウェイで

映画、テレビのみならずブロードウェイにも進出。自作の映画をミュージカル化した『プロデューサーズ』はブロードウェイ史上に残る大ヒットを飛ばします。また自作映画『ヤングフランケンシュタイン』もミュージカル化。こちらは『プロデューサーズ』ほどの成功には至りませんでしたがヒットします。

(余談ですが、日本では『プロデューサーズ』は井ノ原快彦・長野博、井上芳雄・吉沢亮主演、『ヤング~』は小栗旬、ムロツヨシ、賀来賢人主演で上演されています)

 

アメリカエンタメの巨匠として

今春公開され、かなり話題になった映画『TAR/ター。主人公のリディア・ターは人気実力ともすごい女性指揮者。彼女はアメリカエンタメの4大賞である、アカデミー賞、グラミー賞、エミー賞、トニー賞のすべてを受賞している、とインタビューで紹介されるワンシーンがあります。ここでこの司会者は、この4大賞をすべて受賞したのはターを含め4人(5人、、だったかなぁ?)、と言ってその受賞者の名前を挙げてゆく。最後に司会者が挙げた名前「メル・ブルックス」。これを聞くと、その場にいた観客が笑いだす。


そうなんです。このメル・ブルックスこそ、4大賞すべて受賞という、世界で数人しか成し遂げていないことをやっちゃった人なのであります。


特に、舞台・演劇・ミュージカルに贈られる「トニー賞」では『プロデューサーズ』で受賞。ミュージカル部門で受賞可能な13部門のうち12部門で受賞してしまったっという、史上最多受賞でした。こと、助演男優賞では3人、主演男優賞ではネイサン・レインとマシュー・ブロデリックの2人がノミネートされるという、この年のトニー賞はプロデューサーズ一色だったのです。

 

そのほか、様々な諸作でテレビや映画の賞を受賞しているブルックス。2009年には1978年から始まった、国を挙げてのエンタメ功労者を讃える「ケネディセンター名誉賞」を受賞(もっと前に受賞が決まっていましたが当時のブッシュ大統領(息子)のイラク政策に嫌悪を示し受賞辞退。後年、オバマ大統領になって受賞を受け入れました)。2012年にはAFI(アメリカンフィルムインステュート)の名誉博士号、13年には生涯功労賞を受賞そして今年度にはアカデミー名誉賞が受賞されることが決まっています。

↓ケネディセンター名誉賞、ロバート・デ・ニーロ、ブルース・スプリングスティーンらと

Official White House Photo by Lawrence Jackson - White House (Official) [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8745662による

最愛の妻 アン・バンクロフト

 

二人目の妻、大女優アン・バンクロフトとは1964年から彼女の死を迎える2005年まで仲睦まじい結婚生活を送っています。残された二人の写真を見ると本当に幸せそうな夫婦像で、普段おどけてばかりのブルックスが優しい、まじめな表情で彼女と手を握り合っている写真なんかを見ると胸熱くなります。
また、『奇跡の人』『卒業』等シリアスな役どころが多い、アカデミー受賞女優である彼女ですが、ブルックス映画に出演している2本ではコメディエンヌとしての才能も発揮。前述した『サイレントムービー』ではギョロ目のマーティ・フェルドマンと寄り目合戦したり、『メル・ブルックスの大脱走』では、夫婦主演で大活躍。美魔女の魅力を振りまいています。

彼女との間にできた息子、マックス・ブルックスはブラッド・ピット主演の映画『ワールドウォーZ』の原作者。ほかにも多くのホラー小説を執筆しています。(小説の『ワールドウォーZ』は映画の数倍面白いので、是非読んでほしいです!!)

ブルックス映画、何見たらいい!?

 

もちろん、みんな!!と言いたいところなんですが・・。
実は私も1本だけ未見の作品があります・・。😢

それから、比較的新しい作品なのに見るのが難しい作品もあったりでなかなか難しい。そしてなにより、下ネタギャグ、アメリカンギャグ、ブルックスのギャグについてゆけるか?という事で見る人を選ぶ映画もあるので、五十郎の独断と偏見で、ブルックス映画を見たことないけど見てみよう、と思った方に5本、おススメしますっ。
順位は見やすい映画、ブルックスの世界に入りやすい映画という意味でつけました。

(レンタルは画像をクリック)

 

 

1位 『プロデューサーズ(05)』
 トニー賞最多部門受賞のミュージカルを映画化。楽しい音楽と笑いに溢れた、これぞエンタテイメント!監督は舞台版の演出もしたスーザン・ストローマン。
出演:ネイサン・レイン、マシュー・ブロデリック、ユマ・サーマン、ウィル・フェレルほか

ブルックスは猫の声、鳩の声、メルという名の特攻隊員の声、ラストにちょこっと顔出します。 

 

2位 『メルブルックスの大脱走』
 1942年の傑作コメディ「生きるべきか死ぬべきか」のリメイク。元ネタ映画の良さを最大限いかしつつ、更なる笑いとサスペンスを融合させた名作、だと思う。本作でヒトラーの変装をしたブルックスが歌うラップ(映画には出てこない)もアメリカでは人気。
監督:アラン・ジョンソン 出演:メル・ブルックス、アン・バンクロフト、ティム・マティソン、チャールズ・ダーニング、ホセ・ファーラー、クリストファー・ロイドほか豪華出演陣 

 

3位 『メルブルックスの新サイコ』
 私の最も好きな作品。ヒッチコックの様々な映画をパロった大傑作!もうおバカでそれなりにサスペンスで、ブルックス映画特有のクセはあるけれど、それでも見やすい作品だと思います。ヒッチコック映画を知ってる方なら、「あっ、観たことある場面だ!」「これ、よく研究してんなぁ~」って感想を抱くはず。原題は「高所恐怖症」なので、どちらかというと『めまい』のパロディがメインだけど、『サイコ』のあのパロシーンがあまりにインパクト強いので・・。
監督・出演:メル・ブルックス 出演:マデリーン・カーン、クロリス・リーチマン、ハーヴェィ・コーマン、ハワード・モリス、バリー・レヴィンソンほか 

4位 『スペースボール』

 「スターウォーズ」のパロディでルーカスも大好きな作品。90年代に入るとブルックス節は多少弱くなりますが、誰でも知ってるスターウォーズなので、おバカを楽しめる。ダークヘルメット、ヨーグルト、ピザ・ザ・ハットと、もう、くだらなさが分かりますね。特撮をスターウォーズのILMが担当してるので本格的。「映画マガジン」でコラムニストの方もおススメされてる1本です!
監督・出演:メル・ブルックス 出演:ビル・プルマン、ダフネ・ズニーガ、リック・モラニス、ジョン・キャンディほか 

 

5位 『ヤング・フランケンシュタイン』

 アメリカ映画史、コメディ史に残る傑作。30年代ユニバーサルの「フランケンシュタイン」を見事にパロった名作です。当時の雰囲気よろしくモノクロで演出されており、当時のホラー映画としても評価されています。TSUTAYA実店舗でレンタルされてた時は大抵「ホラー映画」のコーナーに置いてありましたが、違うだろ~感が(笑) 
監督:メル・ブルックス 出演:ジーン・ワイルダー、ピーター・ボイル、テリー・ガー、マーティ・フェルドマン、マデリーン・カーン、クロリス・リーチマンほか 

 

こちらでご紹介していない作品のほとんどがTSUTAYA DISCASでレンタルが可能なようです。この5本を見て、また興味が湧いてきたら、是非ほかの映画にも挑戦してみてください。

 

配信はブルックス映画のほとんどがありません。
傑作西部劇パロディ『ブレージングサドル』、『ザ・プロデューサーズ』がU-Nextで、あるのと、テレビシリーズの『メル・ブルックス珍説世界史PARTⅡ』がディズニー+で配信されているくらいですかね。。

 

御年97歳。
まだまだ長生きしてアメリカを笑わせてほしいものです。

 

う~ん、
今回も、愛情押し付けの長たらしい文になってしまいましたっ
ここまでお付き合いくださいました皆様に感謝です。

あなたに素敵な映画ライフを送っていただける一助になれたら幸いです。

最後にブルックスが2009年ケネディセンター名誉賞を受賞した際の記念コンサートの模様をおさめた動画をアップします。

 


 

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