2023年に観た映画(35) 「BAD LANDS バッド・ランズ」
原田眞人監督は、映画監督よりも昔から映画関連のライターとしての認知が先で、1976年~1984年に雑誌「ポパイ」で「原田真人のロサンジェルス超特急(M.Harada's L.A.EXPRESS)」という連載をしていたのだけれど、米国在住ならではのコネクションと情報に支えられた独自の映画評は他の評論家にはないもので、当時の「地獄の黙示録」に関する記事などを興味深く読んだ覚えがあります。
映画監督と評論家。造る側と批評する側はある意味相容れない立ち位置であり、この点において優れた批評家だからこそ、原田監督作品を観たいという動機が生じませんでした。最近の2作品を観て、それを後悔する事となりました。
№35
日付:2023/10/6
タイトル:BAD LANDS バッド・ランズ
監督・脚本:原田眞人
劇場名:シネプレックス平塚 screen1
パンフレット:あり(¥990)
評価:6
日本のフィルム・ノワールにおいて、大阪弁は実に効果的。ヤクザ者の博多(というより筑豊)弁も迫力ありますが、本作において舞台が大阪というのが重要な意味と効果を得ている。
特殊詐欺グループの一員として生き馬の目を抜く姉ネリ(安藤サクラ)と、少年院を出所したばかりの弟(山田涼介)。この姉弟が抱える闇を徐々に明らかにしながら、2人を食い物にする犯罪組織と警察を交えた四つ巴の攻防。ほんの1週間余りの間に起きた出来事を、怒涛の駆け足感で描いたクライム・サスペンス。
基本原作物を脚本・監督するのが原田監督の手法のようですが、本作においては原作というよりも原案と言った方がよいのかも。前半の状況説明や展開がスピーディなのは前作「ヘルドッグス」同様で、大阪弁のノリと共に付いていくのに苦労する。ただ後半は組織側の追い込みが少々ユルいようにも感じてしまった。
「0.5ミリ」「百円の恋」でその魅力にはまった安藤サクラさん。本作もさすがの存在感で頭の切れる“三塁コーチ”を演じていて、ストーリーをグイグイ引っ張っている感じ。NHKの朝ドラの時も賛否あったようですが、彼女の大阪弁はどうなんでしょうね?圏外の私にはちょっと借り物的に聞こえてしまった。
山田涼介君は姉の足を引っ張る出来の悪い弟役を快演。サクラさんよりも彼の大阪弁の方が自然に聞こえた。ただ本作は主役の2人だけでなく全ての演者さんの役ごとのエッジが効いていて、監督の采配が冴えわたっている。サリngROCK(林田)、宇崎竜童(曼荼羅)、吉原光夫(佐竹刑事)、田原靖子(酒井刑事)、大場泰正(教授)、、、こんな風にそのキャラを生かしてくれると、演じる側も役者冥利に尽きるのでは。
<CONTENTS>
・イントロダクション
・ストーリー&相関図
・キャスト 安藤サクラ[ネリ/橋岡煉梨] 山田涼介[ジョー/矢代穣]
・インタビュー 安藤サクラ×山田涼介
・キャスト
・タイムライン
・バッド・ランズ マップ
・監督
・原作
・スタッフ
・プロダクション・ノート
・プロダクション・デザイン 監修:金勝浩一(美術)
・コラム_1 金原由佳(映画ジャーナリスト)
・コラム_2 前島秀国(サウンド&ヴィジュアル・ライター)
・クレジット
「ヘルドッグス」(2022年)
韓国や台湾のフィルム・ルノワール作品のようなノリで、全編異国の無法地帯を舞台にしたかのようにドンパチが繰り広げられる。音と映像がワンカット毎に計算づくで、スクリーンに観客の注意を引くテクニックの存在を如実に感じる。導入部からその世界に引き摺り込まれました。
何事も展開がスピーディで、こちらがヤクザ組織内の勢力図を整理する暇もないままにテンポよく畳み掛けてくる。組織の内と外でのしのぎ合い、色と欲(男と女)、ヤクザ社会の契りとけじめ、警察組織との駆け引き、、、信頼と裏切りとが交錯するこれらの要素をオーソドックスにちりばめながら、その全てに緊張感と猜疑心とが同居し続ける。
岡田准一君のアクションは実に日本人好みというか、派手さの欠片もない実践的な動きがちゃんとアクション映画の凄みに結実していて素晴らしい。俳優としての七難を隠して余りある圧倒的な彼の武器が本作において最大限に発揮されています。
世にアンダーカバー物の佳作は色々とありますが、本作も相当いい線いってるんじゃないかと思います。
日付:2022/10/2
タイトル:ヘルドッグス
監督・脚本:原田眞人
劇場名:シネプレックス平塚 screen1
パンフレット:あり(¥1,200)
評価:6.5点
<CONTENTS>
・イントロダクション
・ストーリー
・相関図
・キャスト・コメント 岡田准一
・キャスト・コメント 坂口健太郎
・対談 岡田准一 × 坂口健太郎
・キャスト
・コラム SYO(物書き)
・監督
・原作
・スタッフ
・コラム 松崎建夫(映画評論家)
・プロダクション・ノート
・アクション・シーン解説
・ロケ地紹介
・プロダクション・デザイン
・コラム トミヤマユキコ(ライター/漫画研究者)
・クレジット
もう最近はすっかり映画監督の方が本業ですね。原田監督作品、どこかで特集上映とかしてくんないかな。遠征してでも観に行きたいです。
そういえば「ラスト・サムライ」(2003年)では大臣の大村役を好演していた。三刀流か!