Discover us

私の好きな映画

趣味は洋画
2024/08/18 18:40

懐古 アメリカ映画の1962年

昔の時代を慕い、アメリカ映画の名作を年度別に振り返っている。

 

前々回の「1960年」、前回の「1961年」に続き、今回は「1962年」(昭和37年)の話題作を懐かしむ。

 

「奇跡の人」 監督:アーサー・ペン

 

ヘレン・ケラー :1880年6月27日、米国アラバマ州タスカンビア生まれ
アン・サリヴァン:1866年4月14日、米国マサチューセッツ州フィーディング・ヒル生まれ

そして、1887年3月3日、2人は運命的な出会いを果たす。

 

 

少女ヘレン(パティ・デューク)は2歳のときに高熱髄膜炎にかかり、両親や医師の懸命の治療、看病によって一命をとりとめる。だが、視力、聴力、言葉を失い、話すこともできなくなるという三重苦を背負う。家庭教師として、そんな彼女の面倒をみることになったのは、自身も盲目の女性教師サリヴァン(アン・バンクロフト)だった。(前述の1887年3月3日、盲学校から派遣されてくる) サリヴァンは小さい頃から弱視だったが、手術をして回復し、完全ではないが視力はあった。
自分の経験を生かしながら、サリヴァンはヘレンに対し、「指文字」、「言葉」を教えるだけでなく、人間としての「しつけ」を徹底的に教え込む....

 

 

ヘレン・ケラーを演じたパティ・デュークは出演時16歳
とても演技とは思えぬ(迫力さえ感じられる)熱演で、当時最年少でアカデミー助演女優賞を受賞
11年後に、テイタム・オニールによって記録は破られる。(73年「ペーパー・ムーン」、オニールは出演時10歳

 

 

一方のアン・バンクロフト。
舞台でサリヴァンを演じた経験から、映画版でも実に手堅い演技をみせている。

 

 

原題の「Miracle Worker」とは「(何かに対して働きかけて)奇跡を起こす人」という意味があるとか...つまり、ヘレン・ケラーではなく、アン・サリヴァンのことを指している

 

 

 

 

「史上最大の作戦」 監督:ケン・アナキン

             ベルンハルト・ヴィッキアンドリュー・マートン

 

この映画を超える戦争映画を観た記憶はない
数ある戦争スペクタクル作品の中でも群を抜くスケールと迫力、そして贅沢なキャスティングと、この作品は映画作りそのものにおいても‘史上最大の作戦’だったといえる

 

 

1944年6月6日、第二次世界大戦の勝敗を決する空前の大作戦が決行された。舞台はフランス北部のノルマンディー海岸である。ドイツ軍の強固な防衛線を打ち砕くべく、米・英・仏など連合軍の大部隊が上陸する。虚を衝かれたドイツ軍は必死の反撃を試みるが...
 


冒頭の、レジスタンスの暗躍とドイツ軍司令部の葛藤から、連合軍空挺部隊の夜間攻撃へと緊張感を高めながら、映画は将軍から末端の兵士まで、印象的なエピソードをうまく織り込んでいく。
そして最大のハイライトである上陸シーンでは、兵士の目線とカメラが一体になり、上陸地点ごとに異なる様相も同時進行で描き分けてみせている。
なかでも注目は、ドイツ軍戦闘機が海岸線を舐めるように機銃掃射するところを、パイロットの目線で追うシーン。さらに、市街地に入った部隊が一斉に動く様を俯瞰で追うシーン。
ともに撮影スタッフの技術の賜と、映像センスに敬意を表したい。

 

 

ヘンリー・フォンダジョン・ウェインロバート・ライアンロバート・ミッチャムら、数多くの大物俳優が大挙出演している。

 

ラストシーンに流れる口笛のマーチはあまりにも有名。

 

 

 

 

「アラバマ物語」 監督:ロバート・マリガン

 

人種的偏見の強いアメリカ南部の田舎町を舞台に、白人娘へのレイプ罪に問われた黒人青年を弁護する正義派弁護士の姿を描く。

同時に、弁護士の幼い兄妹と、隣家に住む知的障害をもつ青年との関わりも重要なポイントとなっている。

 

 

1932年、アラバマ州メイコム。黒人差別がまだ残るこの田舎町に、男やもめの弁護士アティカス(グレゴリー・ペック)は息子ジェム(フィリップ・アルフォード)、娘のスカウト(メアリー・バダム)と住んでいる。ある日、農夫ボブ(ジェームズ・アンダーソン)が、娘のメイエラ(コリン・ウィルコックス)が使用人の黒人トム(ブロック・ピータース)に強姦されたと警察に訴えた。判事は罪を否認するトムの弁護人に、アティカスを指名した。ところが町の住人たちは ‘黒人を弁護したらただでは済まないぞ!’ とアティカスに警告した。不正と偏見を嫌い、何よりも正義を重んじるアティカスは気にもとめないのだが...。

 

 

監督のロバート・マリガンは、差別を大人の世界の不条理の一つとして提示するだけで、あくまでも視点は子供の側(特にスカウト)に置いている。他人を思いやる気持ちを理性で伝えようとする弁護士の父親の姿に、6歳のスカウトは彼女なりに得たものがあったのだろう。

 


グレゴリー・ペックは、頼もしい父親であると同時に、黒人差別と闘う高潔な弁護士を好演、アカデミー主演男優賞を受賞している。

 

 

 

 

「酒とバラの日々」 監督:ブレイク・エドワーズ

 

アルコール依存症の夫と、夫に感化され酒に溺れていく妻の悲劇をリアルに描いた社会派ドラマ。

 

 

広告宣伝会社の営業担当のジョー・クレイ(ジャック・レモン)は、仕事に馴染めず、そのストレスを酒で紛らわせている。彼はやがて得意先の大会社の秘書カースティン(リー・レミック)と知り合い結婚する。ところがカースティンも夫の付き合いで酒を飲むようになり、夫婦そろってアル中になってしまう。カースティンは酔い潰れてアパートを火事にしてしまい、ジョーも酒の上の失敗で会社をクビになってしまう。2人は禁酒しようと努力するが、いつも失敗の繰り返し。行く先を案じたジョーは、アル中患者の更生団体職員ハンガーフォード(ジャック・クラグマン)の助けを借りることになるのだが...。

 

 

レモンとレミック、2人が鬼気迫る演技をみせている。特にレモンが、レミックの父親エリス(チャールズ・ビックフォード)の経営する植物園の中で、必死で酒瓶を捜すシーンは絶品だ。
激しい雷雨と白黒映像の効果も相まって、最高の見せ場となっている。

 

 

ヘンリー・マンシーニのテーマ曲は、1960年代の映画音楽の名曲として大ヒットし、今もこのメロディーを聴けば、作品中の名シーンが甦ってくる。

 

 

 

 

「ハタリ!」 監督:ハワード・ホークス

 

アフリカ・タンガニーカ(現・タンザニア)に半年にわたるロケを行い、多くの動物大自然の壮大な景観をスクリーンに描き出した迫力ある映像が素晴らしい。
 


タンガニーカのアルシャの町に近いモメラ野獣ファーム。ここでは多くの猛獣を捕獲して、世界中の動物園に供給している。亡き所長の後を継ぎ、娘のブランディー(ミシェル・ジラルドン)はリーダーのショーン(ジョン・ウェイン)を中心に有能なメンバーと共に切り盛りしている。ある日、女性カメラマンのダラス(エルザ・マルティネッリ)が猛獣狩りをカメラに収めにやって来た。ショーンはダラスの我儘な態度に閉口するが、メンバー達は猛獣狩りを恐れず一緒に行動を共にする彼女に親しみを感じた。負傷した仲間の代役で雇ったフランス人青年チップス(ジェラール・ブラン)の横柄な態度に、カート(ハーディ・クリューガー)は立腹したが、ショーンが仲裁に入る。彼らは今日もまた、猛獣捕獲のために大平原に出かけていく...。
 


一口に猛獣狩りといっても、本作で描かれているのは銃で仕留めるハンターではなく、生け捕りにするトラッパー達である。当然、生け捕りには大きな危険が伴う。本作の題名が「ハタリ」(スワヒリ語で「危ない!」となっているのはそういう意味合いなのだろう。

 


劇中で使用された「仔象の行進」は現在でもあちこちで耳にするが、軽快なテンポユーモラスなメロディーは、仔象3匹が水浴びに行くシーンにピッタリだった。

音楽はヘンリー・マンシーニが担当している。

 

 

主役は動物と言えるかもしれない。
キリンシマウマが群れをなして疾走する。ダチョウの可愛い歩行シーン。仔象に乳を与えるために集められた山羊。木に群がるサルたち。突進してくるサイ。突然現れるワニ
だが最も印象的で親しみを感じるのは、仔象のテンボだった。

 

 

 

 

「何がジェーンに起ったか?」 監督:ロバート・アルドリッチ

 

名声を失ったのは姉のせいだと思い込んだ往年の子役スターが、復讐を企てるスリラー映画

 

 

ベティ・デイヴィス54歳、ジョーン・クロフォード57歳。
この映画に出演したときの実年齢である。
老女とよぶには若すぎる年齢だが、姉ブランチ(ジョーン・クロフォード)も、妹ジェーン(ベティ・デイヴィス)も、特異のメイクで鬼気迫る怪演...特に妹のほうは、まるで「老女」だ。
 

 

6歳の時から舞台に立っていたジェーンが、子役としての人気を失いかけていた頃、姉のブランチは映画スターとして人気者になっていた。ブランチは自分の主演映画を作る時には、必ず妹が主演のものも1本作らせていたが、ある日、自動車事故で下半身不随となり、映画界から退いた。数十年後、姉と2人で暮らすジェーンは、酒に溺れ異常な行動をとるようになっていくが...。

 

 

この映画で、ベティ・デイヴィスは2回泣く
幼い頃の名子役から年月を経、変わり果てた自身を鏡に映して...
また、姉に対する陰湿で心卑しい支配と、掃除婦エルヴィラ(メイディー・ノーマン)惨殺後の苦悩に耐えきれず、階段に伏して...

 

 

後半、ブランチが車椅子生活を余儀なくされることとなった原因が明かされる
予想に反する結果に、それまでの姉妹に対する感情が逆転しかかる。
本当に復讐心が強いのは、姉のブランチのほうではないのか...
この映画の見どころの一つだ。

 

 

 

上記以外にも、「西部開拓史」(監督:ジョン・フォード、ヘンリー・ハサウェイら)、「終身犯」(監督・ジョン・フランケンハイマー)、「渇いた太陽」(監督:リチャード・ブルックス)、「戦艦バウンティ」(監督:ルイス・マイルストン)、「リバティ・バランスを射った男」(監督:ジョン・フォード)、「隊長ブーリバ」(監督:J・リー・トンプソン)といった傑作が公開されている。

 

コメントする
2 件の返信 (新着順)
LOQ
2024/09/06 14:50

『 史上最大の作戦 』は『 遠すぎた橋 』『 トラトラトラ ! 』と並んで、第二次世界大戦の叙事詩的大作で、僕には他とは別格の3作です。
いずれもちゃんとした原作もある。

連合軍側とドイツ側を対等に描いているし、アメリカ映画だけどイギリスやフランスもちゃんと立てていて、戦争映画だけど和解と歴史共有の国際友好の企画ですね。

共同監督の一人、ドイツ側を描いたオーストリアのベルンハルト・ヴィッキはこの作品の前に監督した『 橋  』が評価されての起用でしょう。
橋の防衛を命ぜられたドイツの少年兵の映画で、戦争の悲惨さ残酷さを描いています、
今の日本ではあまり知られてないし、レンタルや動画配信もされてないのが残念です。

LOQ
2024/09/06 14:31

書いておられるとおり、奇跡の人とはアン・サリヴァンのことを指しますね。
当時20歳で、早くに親を亡くし救貧院育ちで自身も目の障害があって、何の権威もなく見た目も小娘。  やり方も強引で厳しいし。  ヘレンだけでなく自分も顧みられない存在ですね。
重箱の隅をつつけば30歳のアン・バンクロフトは貫禄があって強く見えすぎるきらいがあります。

でも彼女自身も順風満帆な芸能人生ではなく、最初は映画のお色気要員のわき役でパッとせず、舞台でトニー賞獲って這い上がってきた苦労人。 本作もパティ・デュークとともに圧巻の演技です。

メル・ブルックスとは意外なカップルでおしどり夫婦。  ミセス・ロビンソンはやはり伝説。
『 チャーリング・クロス街84番地 』は地味な小品ですが、おそらく彼女の好みの企画で、製作の夫から愛妻へのプレゼントのように思います。  共演のアンソニー・ホプキンスともどもすばらしいです。


趣味は洋画
2024/09/08 22:20

ロキュータスさん、コメントありがとうございます。

>(史上最大の作戦)第二次世界大戦の叙事詩的大作
はい、おっしゃるとおりだと思います。
些細なシーンが多いかと思えば、ダイナミックな映像もあったりで、
そのバランスが良かったですね。
些細なシーンもちゃんと丁寧に描かれていましたから。

ベルンハルト・ヴィッキの「橋」は観たことがありません。
でも「モリツリ/南太平洋爆破作戦」(65年)は観たことがあります。
彼は「パリ・テキサス」(84年)には俳優として出演していたと思うのですが...。



又、「奇跡の人」に関しても様々な情報を教えていただきありがとうございます。
アン・バンクロフトは舞台で経験を重ねて這い上がってきた人だったんですね。

「チャーリング・クロス街84番地」(86年)は観ました。
好印象をもってます。