私の好きな映画

シン・新幹線大爆破 後篇

47年ぶりの再見!

劇場でみるのは2回目。

テレビでみるのと、時間の感覚が違うように思います。

何回も見ていながら、忘れていたシーン、見逃していたカットがありました。

 

ドラマの緊張感を引き出しているのは、演技陣による白熱演技です。

場面の多くは新幹線車内、運転席、指令室、捜査本部などインドアの設定なのです。

対話する人物たちは実際は対面していないのです。

これは脚本・演出・演技・撮影・音楽が一丸と!なって、突発的に起こるアクシデント、有事に立ち向かうことに重点がおかれたドラマになっているのです。

 

売りにした新幹線の特撮は前半の浜松駅でのアクシデント、ポイント切り替え。

この特撮はディライト撮影でよくできています。

後半、姫路を越えたあたりで夜間に。

新幹線はプラレール丸出しで、特撮バレバレ映像になっております。

あと新幹線爆破シーンが出てきますが、

ここもミニチュア丸出しで出来はよくありません。

 

カット?最後のピンチ!

シナリオでは終盤、地震が起こって送電がストップしてしまいます。

新幹線の車内の灯りが点滅し出し、乗客たちはもうダメだ!と絶望するシーンがあったのです。

しかしそこはカットされてました。撮影したのかどうかわかりませんが、

あってもよかったかな?と。

そのピンチは宇津井健が中国電力に頼んで、送電させて窮地を脱するのでした。

 

パニック映画とジャンル分けされていますが、

サスペンス映画としたほうが正しいかもしれません。※0

 

キャスト・考察

●犯人側

あのドスノ利いた声で国鉄を脅す高倉健※1、

左翼的超大作に欠かせない山本圭※2、織田あきら※3、

そしてダイナマイトを手配した郷鍈治※4

 

●受けて立つ国鉄

脅迫電話を受ける公安部、初代「食いしん坊バンザイ!」渡部文雄、

新幹線指令室にキャップ、宇津井健。 同氏は東映初出演。KEN VS KEN‼

そして新幹線には

乗り込んだ鉄道公安官、学園ドラマのヒーロー、そしてゴリさん、竜雷太

車掌は「リンゴをかじると歯茎から血がでませんか?」、福田豊土※5

運転手は「決まってるねチバちゃん」千葉真一。

チバちゃんがこんな狭い場所に閉じ込められての演技がいままでなかったでしょう。

運転助手に小林稔侍。

救援車両で新幹線平行運転するのが滝こと、千葉治郎が兄貴を助けにきます~

 

●捜査班

捜査を指揮する班長が民藝の重鎮、鈴木瑞穂

特捜係に美声の久富惟晴

刑事ドラマの常連、青木義朗

初代ウルトラマン・ハヤタ隊員、黒部進

わんぱくでもいいたくましく育てほしいー田中浩※6

現在も活躍中、浜田晃

東宝特撮の常連、田島義文

などピラニア軍団は出てこない。

捜査のトップにタイガー田中、丹波哲郎※7

 

この三者間でドラマが展開されます

 

●乗客には

学園ドラマの女子高校生役で知られる、田坂都

その妻に浮気ばれて実家に帰るのを追ってきた、服部半平・植田俊※10

なにかと迷惑をかけられる十勝花子※11

本作品が映画デビューとなる草太にいちゃん、岩城滉一※12

その岩城扮するクールスらしき不良バンドを取材する下世話感にあふれた記者を林ゆたか※13

田坂都のお産を診療する女医、藤田弓子

そしてMJ隊員の福岡正剛

 

●主役級俳優による豪華ワンポイント~

女性陣は

脅迫電話を受ける交換手、ビジンダー・志穂美悦子

山本圭の手掛かりとして浮上したスナックの店員、ザ・プレイガール・片山由美子※13

爆弾図面の隠し場所の喫茶店員に松平純子※14

高倉健の元女房に宇都宮雅代

ラスト、SASの空港カウンターに多岐川裕美。

 

●重鎮たちが重役で

新幹線総局長を永井智雄

国鉄総裁、志村喬※15

内閣官房長官に山内明

特別出演枠※16で

山本圭の兄を黒板五郎・田中邦衛にまむしの兄弟・川地民夫の刑事がやってくる。

山本圭を羽田空港で待ち伏せる刑事に北大路欣也

 

最後に爆弾犯からの℡にとまどう新幹線運転所員にキャプテンウルトラ、中田博久

 

ネット記事で草彅剛氏は昭和の演劇陣の迫力に圧倒されたというような発言を見ました。

その比較はするまでもないことです。

 

NETFLIX版がJRの協力を得ましたが、却って制約を受けてたそうです。

主人公が車掌になったのもJRのアドバイスによるものらしいです。

本作は国鉄が協力(製作中止要請までされた)しなかったことで結果的に自由な表現ができました。

東映新聞より

パクリ疑惑について

作品のネタと言われているものに黒澤明監督で予定されたいた「暴走機関車」があります。※17

黒澤明らによる脚本は運転手のいない機関車が暴走し、そこに乗っていた囚人2人と砂係が列車を停めるべく格闘するお話で、”暴走する列車を停める!”って話です。

これよりも「夜空の大空港」の方をネタにしていると考えられます。※18

 

ANGER & APPRECIATION

NETFLIX版はこの新幹線大爆破のリブート作品で、こちらを面白いと言う声に異を唱えるつもりはなかったのですが、この佐藤純弥作品を見て、樋口真嗣に怒りを覚えるシーンがありました。

NETFLIX版の救出作戦は丸パクリをしていたのです。

佐藤純弥監督、高倉健さんはNETFLIX版を見てどう思うのでしょうか?

 

NOTHING TO SAY?

 

ただ、NETFLIX版の存在で本作が再見する機会があったことは感謝したいです。

 

キネ旬70年代邦画ベスト3!

数年前にキネ旬が年代別ベストテンを洋画邦画で行いました。

本作は第三位。一位は「太陽を盗んだ男」ベストテンには「ルパン三世 カリオストロの城」「ハウスや15位に「最も危険な遊戯」などがランクインされていた。いづれも娯楽作品で興行的失敗作でありました。

この時代、邦画の娯楽作品は不運なのでした・・・※19

 

東映の不運でもあった

当時日本は不況下にあり、映画界はさらに冷え込んでいました。そんな世相を反映したか、パニック映画がブームになり、便乗した企画でした。

東映は実録路線が下火となり、新たな新機軸を打ち立てようと、本作を発表しました。破格の予算をつぎ込み、ヒット間違いなしとふんでいたのでした。

 

結果はさんざんたるもので打ち切りとなり、従来のやくざ、不良系作品に軌道修正し、大型予算を組むのを回避していくのでした。※20

 

佐藤監督はこの後フリーとなり、日本映画の大作を担う監督となりました。しかし本作を超える傑作は生みだせませんでした。

 

高倉健も東映を退社し、イメージを一新して日本映画のトップスターとして君臨し続けました。※21

 

仮に本作がヒットしていたら、その後どんなことになっていたのか、想像はできません…

 

                                           (終)

 

※0

:懸案の特撮パートがうまくいかないのを想定して「大捜査網」と仮タイトルがうたれた。犯人と警

 察、国鉄の駆け引きに重点をおいたとライナーノーツに記載されていた。

※1

:高倉健の起用に関して、プロデューサーとライターで相違がある。

 脚本家は高倉健が犯人役をやるとなって、予定してなかった犯人像を急遽つくりこんだと証言があ 

 る。高倉健が単なるテロリストではいけないため。

 プロデューサーは当初から高倉健で行こうとしていたが、岡田社長が難色を示し、ギャラを大幅に 

 さげる条件がつけられた。高倉健はインセンティブをつけることで合意した。国内配収が芳しくな

 かったため、インセンティブがあったかどうか不明。海外での収入はインセンティブの契約外であ

 った。東映のずる賢さが出ている。

 高倉健の養女が刊行した書籍のなかで、大変気に入ったと作品と記載している。ラストに海に飛び 

 込むのだが、物凄く臭かったと言っている。

※2

:おじさんの山本薩夫監督作品によく出演したため、プロレタリア的な役が多かった。晩年は警察、

 総理大臣など権力側の役を演じている。これを山本圭の左右転向と言われる。

※3

:テレビ「宇宙からのメッセージ銀河大戦」以降、見ることがなくなった。

※4

:宍戸錠の弟、ちあきなおみの夫であった。凶悪犯の役が多いが素顔は実に優しい表情をされてい 

 た。フジオという役名だが、どうも苗字だった。

※5

:デンターライオンのCM。このようなCMに出演しながらドラマでは悪役が多かった。

※6

:丸大食品のCM。この人もほとんど悪役だった。

※7

:「日本沈没」、「砂の器」、「人間革命」と立て続けて大作に出演していた。

※10

:「人造人間キカイダー」での役。その後は「オンザロード」という映画に出ていた。

※11

:「なんたって18歳」など主人公をいびる役が多い。野村沙知代の学歴詐欺を批判。

※12

:東映が暴走族出身の不良スターとして売り出すも、麻薬所持で逮捕。高倉健初の連続ドラマ「あに

 き」も一話で消えた。舘ひろしも同様のキャラ設定で東映「暴力教室」でデビュー。この作品の主

 演は暴力事件で逮捕されていた松田優作の芸能界復帰作でもある。

※13

:「ジャイアントロボ」に出演していたユニコーンの隊員。

※14

:BGMが自身が歌う曲「両国橋」、吉田拓郎が作曲。拓郎も気に入ってたらしい。

※15

:東映作品とは縁がないと思っていたら任侠映画や「網走番外地」など多数出演あり。

※16

:月曜ロードショーでの放送では特別出演は丹波哲郎のみ、表示。

※17

:アブコエンバシーピクチャーズで制作が発表されるが、脚本を巡って日米間で相違があり、

 実現に至らず。日本側の脚本は暴走する機関車を巡って、電鉄側と乗り込んだ鉄道員三人の模様を

 時系列に進行する娯楽に徹した構成になっている。シーンが390近くあり、シーン数で上映時間を

 推定できないものの、2時間をゆうに超える作品と思われる。

 日曜洋画劇場で「暴走列車/大惨事への豪雪山脈急勾配」というTVムービーが放送された。原題 

 がTHE RUNAWAY TRAINSとなっており、解説の淀川長治が黒澤作品のことを言及している。

 尚、Webにある作品リストは「暴走パニック超特急」となっているものが見られる。これは全く別 

 の作品で、誤表記と思われる。

※18

:こちらも日曜洋画劇場で放送された。高度〇〇フィート以下で爆発する爆弾が旅客機に仕掛けたと

 いうストーリー。その高度以上にある空港を見つけ無事着陸する。「新幹線大爆破」公開後に再放

 送された。脚本R・サーリング、音楽L・シフリン以外は知るスタッフ・キャストはいない。

 当時の批評に、この作品を下敷きにしたという指摘は多々見られた。

※19

:75年ベストテンの上位はある

 1.映画監督の生涯 溝口健二の記録 2.祭りの準備  3.金環蝕  4.化石  5.男はつらいよ寅次郎相合い傘   6.田園に死す 本作は7位にランクイン。

※20

:その後、飯干晃一原作「日本の首領」がヒットし再びやくざ映画に舵を切る。続編の「野望篇」で

 一本立興行に踏み切る。ほかに時代劇や、動物パニック、オカルト、スペースオペラなどパクリ路線

 はあったものの、成功に至らず。やくざ映画が手堅く、「極道の妻たち」シリーズまで継続されて 

 いく。やはり豆腐屋は豆腐にしか作れない?

 因みに「日本の首領」は「ゴッドファーザー」にあやかったとされている。

※21

:東映時代は圧倒的に男性、その筋の人々だったが、フリー以降やくざの役は2本のみ。没後に開催さ

 れた高倉健展の来場者はほとんど女性だった。その筋っぽい人は皆無だった。

 同じく任侠映画のスター、鶴田浩二の葬儀はその筋関係者たちが取り仕切っていた。鶴田浩二ファ

 ンで参列した人からの話。「どこの組の方ですか?」と尋ねられたそうだ。

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