毎日蒸し蒸し、暑さも日々増していくこの頃ですね。
そんななか、冬景色広がるクリスマスシーズンの物語「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ（アレクサンダー･ペイン監督 2023年）」を先週みにいってきました。
今年の米アカデミー賞で作品賞、主演男優賞（ポール・ジアマッティ）、助演女優賞（ダヴァイン・ジョイ・ランドルフは受賞）など5部門にノミネートされた本作。じんわり心に響く、期待以上の作品でした。

《ストーリー》
舞台は1970年、ボストン近郊にある全寮制の男子校。
校舎の外は、クリスマスシーズンらしく雪に覆われている。ほとんどの生徒・教師は帰省するなか、年齢も立場もバラバラな3人が、校舎にカンヅメとなる。嫌われ者の教師ハナム（ポール・ジアマッティ）、帰省したいのに学校へ留まるよう母親に懇願されたアンガス（ドミニク・セッサ）、料理長のメアリー（ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ）。次々と事件が起こるなか3人の胸のうちがあかされ、冬休み序盤の息が詰まるような空気はいつのまにか溶解するが・・

《おもな登場人物》
●生真面目な考古学の教師：ハナム（ポール・ジアマッティ）
融通のきかない性格で生徒に容赦なく、校長や他の教師からも煙たがられている。斜視＋持病のため体臭もあり、独身。教師生活に身を捧げてきた。
●成績は良いのに問題児：アンガス（ドミニク・セッサ）
精神を病み入院中の父、新しい夫と新婚旅行へ旅立つ母のはざまで、幸せだった頃の家庭を忘れられずにいる。心に陰りがあるせいか常に不遜な態度。
●学食の料理長：メアリー（ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ）
シングルマザーの苦労人。大切な一人息子をベトナム戦争で失って間もない。息子の死から立ち直れないまま、料理長の仕事を黙々とこなす。

《キャストが最高✨》
ポール・ジアマッティ、本作でアカデミー賞助演女優賞を獲得したダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、両者のもの悲しさも見事ながら、本作アンガス役で映画デビューしたドミニク･セッサ、涙目の演技も胸に迫るものがありました。
一見大人びているし、強がってもいる。だけど実はパパやママが恋しい・・！
少年の健気さに思わずウルルとなりました。ベテラン陣を相手に渡り合える実力ある役者さんで、今後が楽しみです・・！

《古き良きロック＆ポップスも魅力的♬》
ダミアン・ジュラード「Silver Joy」や、ラビ・シフレ「Crying, Laughing, Loving, Lying」、ショッキングブルー「Venus」など、70年代の舞台に溶け込む数々のロック＆ポップスがとても効果的に使われています。サウンドトラック（日本で発売されているのか？未確認です）欲しくなりますね・・！

《クリスマス休暇のはじまりとあとでは別世界に✨》
見た目も境遇も違うハナム、アンガス、メアリーの3人。通常の学校生活では必要最低限のこと以上に係わりはなかったことでしょう。そんな彼らは各々孤独であり、心に傷があります。ホリディスタート時は三者ともあきらめモード（アンガスにいたっては＋やけくそモード）。
ところがそれぞれのつらい心境があかされ、いつしか不思議な絆が芽生えます。思いがけず心が通じていくさまが、なんとも心地よくあたたかです・・！
冬休みが終わったあと、お互いへの思いは以前とは確かに変わっています。この「思いもよらないことが起きた」感じ、サプライズのプレゼントをもらったような感覚にちょっと似ているかもしれません。
かなり早めながら、私もクリスマスプレゼントをいただいたかのような気持ちになりましたよ・・！