懐かしき1940年代の映画「アメリカ編」
前回まで、1950年代、1960年代、1970年の名作を「アメリカ編」、「ヨーロッパ編」、「日本編」に分けて振り返ってきた。
今回は1940年代の、懐かしいアメリカ映画の名作を振り返ってみたい。
独裁者(1940年) : チャールズ・チャップリン監督
ナチスがポーランドを侵攻した1939年に製作開始、ヒトラーの独裁政権とユダヤ人迫害を痛烈に批判した作品。 チャップリン初のオールトーキー作品でもある。
1918年、第一次世界大戦の末期、トメニア軍の一兵卒であるユダヤ人の理容師(チャールズ・チャップリン)が、戦傷のため記憶を失い病院に収容される。数年後、トメニアに政変が起き、理容師にそっくりな顔をした独裁者ヒンケル(同じくチャップリン)が政権を握り、ユダヤ人迫害を始めた。その頃、理容師がユダヤ人街に帰ってくる...
生年月日:チャールズ・チャップリン1889年4月16日
アドルフ・ヒトラー 1889年4月20日
たった4日しか違わない。なんとも奇遇ではある。
わが谷は緑なりき(1941年) : ジョン・フォード監督
19世紀、英国・ウェールズの炭鉱町を舞台に、平凡な人生をヒューマニスティックに謳いあげた美しい叙事詩。まさに文芸作品の最高峰と言っていい。第14回アカデミー賞・作品賞受賞。
ギリム・モーガン(ドナルド・クリスプ)は炭鉱で働きながら家族を養い、一家は平和に暮らしていた。気丈な妻のベス(サラ・オールグッド)は夫を支え、末っ子のヒュー(ロディ・マクドウォール)を除いて5人の息子達も炭鉱夫である。やがて長男が結婚し、披露宴の日、姉のアンハード(モーリン・オハラ)は村に赴任してきた牧師(ウォルター・ピジョン)と知合う。
我が道を往く(1944年) : レオ・マッケリー監督
第二次大戦下にあって、観客に心和む一瞬を与えたであろうパラマウント映画の名作。
ニューヨークの下町の古い教会。老神父フィッツギボン(バリー・フィッツジェラルド)のもとへ、若いオマリー(ビング・クロスビー)が副牧師として赴任して来る。オマリーはマイペースで環境浄化に乗り出し、老女と家主の仲裁や、町のヤクザに素人芝居を教え、不良少年たちに音楽を教え、合唱隊まで編成するが...。
教会という本来なら堅苦しい場所に、ユーモアに満ちた神父を登場させた設定が素晴らしい。
戦時中なればこそ、敢えてアメリカ映画が謳いあげたヒューマニズム映画の金字塔。
第17回アカデミー賞・作品賞受賞。
市民ケーン(1941年): オーソン・ウェルズ監督
オーソン・ウェルズを天才たらしめた傑作で、複雑なプロットを明確に展開させた演出法や、斬新な映像テクニックは、いま観ても実に新鮮だ。
母親から莫大な財産を相続したケーン(オーソン・ウェルズ)は、リーランド(ジョセフ・コットン)やバーンステイン(エヴェレット・スローン)らと共に「ニューヨーク・インクワイアラー紙」を屈指の大新聞にし、人民擁護の主義宣言を掲げる。その上で選挙に立候補するが、愛人のオペラ歌手スーザン(ドロシー・カミンゴア)とのスキャンダルを暴かれて敗れ、リーランドと訣別する。やがて恐慌の波が押し寄せて...。
我等の生涯の最良の年(1946年) : ウィリアム・ワイラー監督
同じ町に住む3人の復員兵と、彼らを迎えた家族の人間模様を描いた名作。
陸軍軍曹だったアル(フレデリック・マーチ)は銀行員で、副頭取への昇進が待っていたが、愛妻(マーナ・ロイ)や娘ペギー(テレサ・ライト)との幸福な生活が取り戻せるかを心配している。空軍大尉だったフレッド(ダナ・アンドリュース)は失職したばかりか、妻(ヴァージニア・メイヨ)がバーに勤めて男と遊び歩く姿に失望する。水兵だったホーマー(ハロルド・ラッセル)は、戦闘中に腕を失い義手になった。恋人(キャシー・オドネル)がいるが、果たして結婚出来るかどうか自信がない。やがてフレッドとペギーの間に恋が芽生えるが...。
ハロルド・ラッセルは自らも傷痍軍人であり、実際に義手をはめている。まったくの素人が水兵役を好演し、アカデミー賞・助演男優賞を受賞した。第19回アカデミー賞・作品賞受賞。
カサブランカ(1943年) : マイケル・カーティス監督
キザで粋な ‘ボギー’ ことハンフリー・ボガートと、美しすぎるイングリッド・バーグマンのコンビが、名曲「時の過ぎゆくままに」同様、時を経ても色褪せない魅力を放っている。
1940年、フランス領モロッコの都カサブランカ。リック(ハンフリー・ボガート)が経営するナイトクラブは、リスボン経由で米国へ亡命する者たちの溜まり場だ。旅券を盗んだ男ウガルテ(ペイター・ローレ)、反ナチ運動の首領夫妻(ポール・ヘンリード/イングリッド・バーグマン)らである。やがてリックの友人である警察署長(クロード・レインズ)が、ウガルテを逮捕するが...。
ハンフリー・ボガートの代表作で、いわゆる彼の ‘ボギー・スタイル’ が確立された作品。
第16回アカデミー賞・作品賞受賞。
失われた週末(1945年) : ビリー・ワイルダー監督
アルコール依存症の実態を正面から見据えた作品。第18回アカデミー賞・作品賞受賞。
売れない小説家のドン(レイ・ミランド)は、同居する兄(フィリップ・テリー)の努力も空しく、アルコール漬けの日々。兄は週末をドンと共に田舎で過ごし、断酒をさせようとする。そこへ現れたドンの恋人ヘレン(ジェーン・ワイマン)が、音楽会のキップを2枚持っていると言うと、ドンは彼女と兄を無理やり音楽会へ行かせ、その隙に酒を探すが一滴も無い。金もなく、どの酒場へ行っても断られるドンだったが...。
一般的に、映画に登場する酔っ払いは滑稽な人物として描かれて場合が多い。だが、本作はアルコール依存症を笑いを生むための材料ではなく、一つの病気として描いた点が斬新である。
上記以外の作品にも、名作、傑作が目白押しである。
「レベッカ」、「怒りの葡萄」、「マルタの鷹」、「偽りの花園」、「ミニヴァー夫人」、「心の旅路」、「誰が為に鐘は鳴る」、「ラインの監視」、「ガス燈」、「素晴らしき哉、人生!」、「紳士協定」、「三十四丁目の奇蹟」、「ハムレット」、「ジョニー・ベリンダ」、「オール・ザ・キングスメン」、「黄金」、「女相続人」等々、何れ劣らぬ力作ばかりが並ぶ。
これらの作品についても、いつの日か懐古してみたい。
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投稿を表示趣味は洋画さん♪楽しく拝読いたしました。
これらの作品の中には私が幼いころにテレビの洋画劇場で放映されたこともあるものもあります。1940年代といえば、その前半は戦時なのに、映画の内容は割合に戦争と関係ないテーマが目立ちます。戦時中ですから何らかの検閲はあったとは思いますが、それでも、これだけの名作が作られたことにアメリカの底力を感じます。
筆頭に挙げられた『独裁者』はまだアメリカが戦争に参加する前で国内にもナチスのシンパがいたことを考えるとチャップリンの覚悟が分かる作品です(例えば有名人ではヘンリー・フォードやチャールズ・リンドバーグなど)。この作品はチャップリンのリバイバル・ブームがあった頃に劇場で観ました。
私も大分、観ていない作品もあり、ご紹介で興味を持った作品をDISCASさんでリストインしておくとします。(いつ観られるかが問題ですが。)
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投稿を表示趣味は洋画さん♪
1940年代の作品て、こんなにも名作ぞろいなのですね。
【風と共に去りぬ】が入っていない!と思ったら、あの映画は1939年だったのですね。
見ていない作品もたくさんありますので、リストに入れます!
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