【ネタバレあり】「哀れなるものたち」への違和感を探る旅
こんにちは!
そぜです。
『今日何観よう?』のお手伝いができるように
お茶の間や映画館からつながる良質映画を厳選紹介しています。
今回紹介したい作品はギリシャの鬼才ヨルゴス・ランティモス監督の最新作であるコチラ!
哀れなるものたち:Poor Things
★製作国: イギリス
★上映時間: 141分
★監督: ヨルゴスランティモス
★キャスト: エマストーン マークラファロ
ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞した本作は、波に乗って賞レースで圧倒的な存在感
2024年も1月7日のアカデミー賞の前哨戦と言われるゴールデングローブ賞授賞式で
映画・作品賞(ミュージカル・コメディ部門)と主演のエマ・ストーンが主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞するなど絶好調。
2024年3月に開催されるアカデミー賞でも
「オッペンハイマー」に次いで多い11部門でノミネートされたのがギリシャの鬼才ヨルゴスランティモス監督の本作。
1月26日に公開されるなり唯一無二の内容に
日本中の映画館とレビュー界隈を熱狂的にざわつかせていますね。
私も満を持して精神を整えて鑑賞してきました。
今こうして時間をおいて振り返っていますが、まだ他の方のレビューを観ていません。
自分が受けた印象をリアルな時系列順にコラムに残したいと思います。
その後でシネマニストをや他SNSの本作レビューサーフィンをしたいと思います
(ようやく見にいける笑)
【序章:観る前に見よう】
本作のマーケティング戦略で目を引いたのが奇抜なポスタービジュアル達。
本コラムのアイキャッチ画像と合わせて全部で3種類のポスターが公開されています。
今回訪れた単館映画館のコーナーに3種類のポスターと特設コーナーが設けられていました。
とりあえず入口のカフェでハートランドの瓶を注文し、その間、特設コーナーでじっくり鑑賞します。
もうポスターからして世界観がやばいですね。
色々なパターンのポスターはいずれも美術館に展示されてもおかしくないようなクオリティとクリエイティビティ。
改めてまじまじと眺めると1枚目のお化粧ポスターの3色はそれぞれ3人の男性の姿と顔が浮き出ています。
ベラの魅力に夢中になっていくも表情を見ると翻弄され、落ちていくような印象を持ちました(いずれにしろ誰もハッピーエンドを迎えることはなさそうです)。
もう一方のポスタービジュアルは特に異彩を放っています。大人の女性からさらに枠を超えて新たに誕生しようとするベラが表現されているように見えますし、全体のビジュアルが女性器を表しているようにも見えます。
3つ目のポスタービジュアル(アイキャッチ画像)は上記要素を合わせた感じでしょうか。
ベラの肖像の中央の穴(これも女性器を象徴?)から何かがあふれ出しその上でベルに翻弄されるであろう男性たちの姿が描かれています。サイズ的にもベラの圧倒的な魅力の手のひらで転がされているかのような印象を感じ取りました。
タイトルは「Poor Things」
邦題は「哀れなるものたち」
何か社会道徳を違反した様な行為が連続するのでしょうか。
Thingsは”モノ”を意味しますがポスターを見る限りベラが男性陣をも”モノ扱い”しているようにも捉えられるので、つまりそういうことかもしれません。
「哀れなるものたち」の中にベラ本人も含まれているのか、それともベラから観た彼らへの印象なのかが気になるところです。
お、注文していたビールが呼ばれました。
あふれる期待と若干の畏怖を抱いて映画館へ向かいます。
【上映開始までにする儀式、そしてスクリーンへ】
勢いよくスクリーン入口をスルーして、恒例の儀式である鑑賞前トイレへ。
2時間以上の作品を最後まで楽しむためには必須の儀式ですね。
予告編がはじまっていようがこの儀式をないがしろにはできません。
満を持して身体と精神を整え、自分の定位置であるスクリーン中央最後方席へ向かいます。
自分ゴルゴなんで鑑賞の時は後ろに気配があると嫌なんですよね。
映画スクリーンのみならず他の観客も鑑賞したいんです(共感できる人は”いいね”お願いしますw)。
21時スタートの本作はレイトショーにも関わらず客席の半数は埋まっています。
席に着いた時には丁度予告編が終わり、館内が暗くなったところでした。
慌てて携帯を取り出し電源OFFにしようと一旦画面表示させてしまった矢先に隣の方から「携帯やめてもらえませんか」と注意されてしまい、少しイラっとしましたがwそんな気持ちは一瞬でぶっ飛ぶくらいの世界観が開始後すぐに表れたので最後まで気持ちよく見れました(尚、上映後彼は一人だけ席を立たずに必死に鑑賞記録をメモにとっていた生粋の映画ファンだったので逆に好感を持ちました。最初に全力集中乱してごめんなさい)
【あらすじ】
原作はスコットランドの作家アラスター・グレイのゴシック小説の映画化。
ヴィクトリア朝時代を舞台に、天才外科医の禁断の手術によって蘇った女性ベラが、
時代の偏見から解き放たれ、驚くべき成長を遂げていく冒険を奇想天外に描くストーリー。
【所感と感じたこと】
「いやー、、、、、、これは凄っ。。。」
本編を観終わった時にかろうじて漏れた言葉です。
バクスター博士の食事で絞り出す声と合わせて浮き出るしゃぼん玉のように。
正直なところ思考が付いていけなくて何も考えれなかったです。
衝撃が強すぎてしばらく呆然としてしまいました。
本作が良かったか悪かったかはともかく、
間違いなく今までに見たことが無い”唯一無二の怪作”で五感をフルに使ったような、そして非日常な情報が多過ぎた難解作でした。
その後、夢遊病患者かのように映画館を後にし、電車に乗り、家に帰ったのは日が変わる間近でしたがその間はひたすら振り返りと自問自答していてどうやって帰宅したのか全く覚えていませんでした。
レビューも思考を整理するために週末まで置くことにしました。
その間も雪崩のようにみなさんのレビューがタイムラインに流れてきますが、必死で読みたい衝動を我慢して今に至ります。
4日ほど寝かせて、改めてふり返ってみると
この作品を観て率直に感じた感情は”違和感(ギャップ)”でした。
以下率直にその原因を述べます。
【違和感その1:超古典的だが超奇抜な設定と違和感の正体】
まさかこうくるとは。
投身自殺を図った妊婦。
解剖学を研究している天才外科医ゴッド。
この二人が偶然出会ったのが物語のはじまり。
脳死となった妊婦の頭に未だ生存している胎児の脳を移植して生まれたのがベラ。
つまり、身体は母親で中身は娘。
この一行だけ読むともうぶっ飛びすぎているのですが
設定自体は超古典作の「フランケンシュタイン」であり、少し状況は異なりますが我々日本人にとって親しんでいた手塚治虫の
「ブラックジャックのピノコ」なんですよね。
マッドサイエンティストが外科的手術で人造人間を創り上げるストーリは
なんら奇抜ではないのですが
私が少し吐きそうになったのは
「胎児を母親に移植して自殺を試みた母親を生き返らせたこと」
なんですよね。
頭は死んでいるから母親は存在しないのですが、見た目上は生き返っているかのようなカタチ(ただ中身は脳欠損している本人のような姿)になり、その倫理観のぶっ飛び具合が”違和感”というか”嫌悪感”の一つでした。
この部分は物語が進む上で次第にそれは薄れてきますが序盤の説明も何もない”何かがおかしいベラ”の理由が分かった時のパンチがきつかったのと実際かなりお酒も嗜んでいたので、名前の通り”パンチドランカー”のような気分が
エンディングまで続いていたことは確かです。
また終始流れるサントラも奇妙な世界観を没入させるよう上手く表現していましたが
不安を掻き立てるような印象で正直苦手でした。
まとめ:本作は悪酔いするので観る前のお酒は控えた方がいいです
【違和感その2:支配からの卒業と解放のビジュアル】
その後のベラは圧倒的なスピードで成長していきます。外観の大人のベラと産まれたばかりのベラとのギャップをものすごい勢いで埋めていきます。
ただ、この成長もあくまで籠の中での体験のみ。ゴッドは自分の家から出ることを許さず、
雇った弟子マックスと結婚契約と一緒に家に住み続ける契約を交わすほどに
ベラを外界から遮断しようとします。
狂ってますね。
ただ、この策も長くは続かず、上記契約を作成する弁護士ダンカンによって駆け落ちし、大陸横断の大冒険に出ることとなります。
【想像主からの支配からの解放=自由の解放】ですね。
親元を離れ、まだ見ぬ世界を目にした時のベラ目線の世界が素晴らしいです。
今までのモノクロームの世界から一気にカラーに花開く世界。確か19世紀の時代設定だったはずだが映し出される世界は現実離れした色鮮やかな空とどこか近未来的な光景で当時のものとは異なる世界。
これは外に出たい願望と想像を募らせていたベラ目線からみた世界で彼女には確かにそう見えていたのでしょう。
(余談ですがカラフルになってからの世界観、「ボーはおそれている」のボーの実家へ向かうシーンの世界観と少し被ってたんですよね。互いに精神的な問題を抱えているからなのか)
ここからは弁護士ダンカンとの旅がはじまります。
ここで彼を通じて学んだ【性の解放】が彼女自身のアイデンティティを一気に押し上げます。
ダンカンとの性行為を重ねる度に成長していくベラ。
そして船の上で出会う知的な人々からも貪欲に吸収し哲学の世界にも没入するように。
ここで知性が芽生えてきますね
ある事件がきっかけでベラとダンカンはパリに降り立つことになりますが
そこで出会った売春宿のオーナーから仕事を通じて自分で生計を立てる術を学びます。
ここでベラにとって制限され虐げられてきた【女性の権利の解放】を経験します。
誰にも支配されない、自分で生き抜くことを身につけたベラ。
そして、当時の良識ある大人の女性にはとてもできないベラの自分の欲求に正直な衝動と行動。
やりたくないことはやらない、したいことだけをする。
それが出来るのはベラが子どもだから。
この女性の社会的解放とそれに伴いダンカンとの上下関係が逆転するのは興味深かったです。
これらの【自由の解放】【性の解放】【女性の権利の解放】
をブーストすることでベラの世界観は一転し通常の5倍速で成長していく様子が面白いです。
終始ビジュアル面で感じた”違和感”はベラ自身からから観た世界を体現していたからでした。
まとめ:「この支配からの卒業」は尾崎豊だけじゃないんだぞ。
【違和感その3:役者エマストーンへの違和感】
誰しもがそう思ったのでは。
過去の作品ではタイプは違うが力強い女性像を数々演じ、「ラ・ラ・ランド」ではアカデミー賞主演女優賞に輝いたエマ・ストーン。
本作はそのキャリアの延長上の想像イメージを見事に裏切り、粉々に破壊した、超弾道ロケットばりの軌道にのった役でした。
ランティモス監督と自分も参画している製作の意図を汲み取り、ベラの大冒険を全身で体現したエマストーン。
いままでの役とのギャップに戸惑いつつも、本当に素晴らしい女優だなと思いました。
本作で一気に彼女のパーソナリティの範囲が拡がり、今後の作品にますます目が離せなくなった。
このエマストーンに対する”違和感(ギャップ)”は今後どんな役でもこなす期待感に変わりそう。
まとめ:「ミアでも金、ベラでも金」 by Ema亮子
※金=オスカーの意
いかがだったでしょうか。
本作は多方面から高評価の声が聞こえています。
私も素晴らしい作品であることには全く同感ですが人とシチュエーションを選ぶ作品と思います。
万人受けする作品ではありませんし
間違っても付き合ったばかりのカップルがデートで観ることは避けていただきたい🙏
まだ自分の中での消化度は半分くらいで残りは
他の方のレビューを読みながら補填していくことになりそうです。
またランティモス監督独特の世界観は他の作品も観た上で再評価する必要がありそうです。
ちなみに「ロブスター」は最後までついていけませんでした。
間違いなく本年度のアカデミー賞でも爪痕を残すであろう「哀れなるものたち」は絶賛上映中です。
是非3月10日の開催までにご自身で見届けてきてください!。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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👨🏻💻今まで観た数5,000本のシネマニア
👨🏻💻TSUTAYA映画マガジン【Discover us】コラムニスト
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投稿を表示わたしにとって観るたびに消化不良を起こす
とんでもない作品です。パネル展を見ながら、自分に落とし込んだけど、まだまだ消化不良が続いています🥹
ベラでも金🥇期待しています!
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投稿を表示こんばんは。
私は今日見てきました。
凄いものを見てしまったという思いですが、とても混乱しております。
自分の中で、消化出来るのには時間がかかりそうです。
いや、果たして
これは消化出来るのでしょうか。。。
エマ・ストーンのイメージは見事に崩されましたが
全身でベラを演じた彼女の演技は素晴らしかった!
ベラでも金、あるかもですね!
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