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2025/04/01 19:20

映画『Flow』~アカデミー賞 長編アニメ賞受賞作品の魅力とは?~

ラトビア出身のクリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督の長編2作目となる『Flow』。2024年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映を飾り、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞、観客賞含む4冠を受賞。2025年ゴールデングローブ賞では錚々たるビッグタイトルをおさえてアニメーション映画賞を受賞。大規模なスタジオ作品では数百人が携わり、予算が数百億円とも言われるアニメーション制作において、全編がオープンソースソフトウェアBlenderで制作され、スタッフは50人以下、制作費は350万ユーロ(約5.5億円)という、アニメーション制作の常識を覆す極めてインディペンデントな体制と革新性も、驚きと賞賛を以て受け止められている。そして2025年アカデミー賞では、ハリウッドメジャー大作を抑え、長編アニメーション賞受賞の快挙を果たし、アニメーション映画の歴史を変えた作品となった。そんな歴史的な作品の魅力に迫っていく。


(c)Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

■あらすじ
大洪水になった世界に迷い込んだ猫
それは想像を超えた冒険の始まりだったー。
世界が大洪水に包まれ、今にも街が消えようとする中、ある一匹の猫は居場所を後に旅立つ事を決意する。流れて来たボートに乗り合わせた動物たちと、想像を超えた出来事や予期せぬ危機に襲われることに。しかし、彼らの中で少しずつ友情が芽生えはじめ、たくましくなっていく。彼らは運命を変える事が出来るのか?そして、この冒険の果てにあるものとは―?


リアルな映像美


手描き風3DCGアニメーションの魅力
本作は、やはり映像の美しさが第一の魅力でした。自然の質感や動物たちの動きがリアルかつ温かみのあるタッチで表現されています。​特に、水の表現に関しては、水の質感を映し出す映像が圧巻でした。本作では、Blenderというオープンソースの3D制作ソフトウェアを用いて、全編が制作されているとのことで、​監督のギンツ・ジルバロディスにより、効率的かつ高品質な映像表現を実現されていました。印象に残っているシーンとして、主人公の猫がヘビクイワシに掴まれ、空高く舞い上がるシーンがあります。​このシーンでは特に臨場感あふれる映像体験を感じました。
手描き風映像によって、映像が洗練されすぎていない点もまた魅力の1つです。これにより、手作り感や温かみを持つ映像が感じられ、より深く物語に引き込まれるような感覚に陥りました。この手作り感や温かみといった点は、やはり小規模なチームで制作が行われたことで、インディペンデントな体制が生み出した魅力の1つであるように感じました。


セリフのない表現による深い感情描写


本作では、登場する動物たちが一切セリフを発しません。​しかし、その豊かな表情や仕草、鳴き声を通じて、動物たちの感情や物語の進行を深く理解することができます。​この手法により、視覚と聴覚だけで物語が伝わるという新鮮な体験をすることができます!
ストーリー性も共感部分が多く、主人公の黒猫は、旅の途中で多くの個性豊かな動物たちと出会い、最初はお互いに警戒心を持っていたものの、共に困難を乗り越える中で友情と協力の大切さを学び、成長していく様が描かれていました。セリフがなくとも感情を読み取ることができ、共感することができ、自分が動物になったのではないかという錯覚をも味わうことができます。
人間は一切出てこず、動物の世界が描かれており、人間の姿が消えた後の世界で、動物たちは自然の中でたくましく生き抜く姿が描かれていました。​動物にも感情や、個性があり、それを人間である私たちに共感できるような作品となっていることが本作の最大の魅力のように感じました。


(c)Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

3月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にて全国ロードショー!

監督・脚本・音楽:ギンツ・ジルバロディス 
音楽:リハルズ・ザリュペ 
2024/ラトビア、フランス、ベルギー/カラー/85分 
配給:ファインフィルムズ

原題:Flow  
映倫:G 
©Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five. 
公式サイト:https://flow-movie.com/

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