闘病・余命もの✕町工場の社長奮闘記が織り成す大泉洋映画の決定版『ディア・ファミリー』
■ディア・ファミリー
《作品データ》
ノンフィクション作家の清武英利原作『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』を大泉洋主演、月川翔監督で映画化! 愛知県でビニール製品樹脂工場を営む坪井宣政は心臓病を患い余命10年の宣告を受けた次女・佳美を救うべく、人工心臓作成を依頼するために日本・海外の心臓外科医を訪ねるが良い返事をもらえないでいた。そこで宣政は自らの手で人工心臓を作る決心をすることに。主人公・坪井宣政役を大泉洋が演じ、他菅野美穂、福本莉子、新井美羽、上杉柊平、徳永えり、満島真之介、戸田菜穂、川栄李奈、有村架純、松村北斗、光石研が出演。
・TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー中!
・配給:東宝
・上映時間:117分
【スタッフ】
監督:月川翔/脚本:林民夫
【キャスト】
大泉洋、菅野美穂、福本莉子、新井美羽、上杉柊平、徳永えり、満島真之介、戸田菜穂、川栄李奈、有村架純、松村北斗、光石研
・公式HP: https://dear-family.toho.co.jp/
〈『ディア・ファミリー』レビュー〉
陽キャの大泉洋を主演にしながらも、フライヤーや予告編からいかにも主人公の家族の余命もののヒューマンドラマ作品の匂いがプンプンの月川翔監督作品『ディア・ファミリー』。いざ、見てみると確かに主人公の家族の余命にまつわるストーリーだが、思いの外、闘病苦の描写を最小限に抑え、それ以上に主人公を演じる大泉洋の明るさと、彼が演じる娘のために必死で駆けずり回る町工場の社長のバイタリティに圧倒され、
闘病・余命もの✕町工場の社長奮闘記が織り成す新たなる感動ヒューマンドラマが作られた!
ストーリーは1973年のエピソードを起点に、そこから約10年の町工場の社長のパパと娘とその家族の奮闘記を描いている。一見、無関係に思えそうな宣政のアフリカ出張エピソードも宣政のとにかく諦められない性質を知る上で重要な伏線になっている。医学について全く知らなくても、工場内に掲げている「為せば成る」の精神で次々と体当たりで奔走する宣政に昭和の町工場の社長のド根性とバイタリティを見せつけられ、そのノリはどことなくTBSドラマ「下町ロケット」や「陸王」などの池井戸潤原作ドラマにも通じる。
一応、宣政の次女・佳美の闘病・余命ものであり、自宅での様子や、数少ない学校でのエピソード(主に登下校)、入院時の病室での様子など、闘病・余命ものの定番エピソードが次々と見られる。が、意外にも佳美が病気で苦しむ描写は少ない。これは月川翔監督作品『君の膵臓をたべたい』でも同様のスタイルで、この時には病気に対するリアリティに欠ける描写に辟易したが、本作においては不思議とマイナスの感情はあまりなかった。これを大泉洋の陽キャっぷりと彼が演じる宣政の焦燥感やバイタリティで上手く打ち消したようにも感じられる。
考えてみれば、観客の多くは大泉洋主演として映画を見に来ているから明るく、バイタリティが溢れる大泉洋が見られれば満足感と感動を得られる。