期待高まる岩屋拓郎初監督作品
ジャパニーズノワール
監督:岩屋拓郎
時間:93分
映倫区分:R15
ヤクザ・半グレ・記憶喪失
幼馴染の3人。男2人に女1人、ドリカム状態。
後をつけて歩くが、どうやら女はわかってないようだ。ヒロト(清水尋也)はヤクザの組員。敵対する木村(松浦慎一郎)率いる集団には、幼馴染の金森(高杉真宙)。普通の女の子、くれは(伊藤万理華)もうこの顔ぶれ、大好きな人ばかり。設定もアンダーグラウンドと好物。
喫茶店のシーンで頼む「小倉トースト」からもわかるように、舞台は名古屋。
ヤクの売人をシメたヒロト。その対応にイラつく血気盛んな若者、林が先走ってヤクザの親分の息子を刺す。ここから運命が狂い始めていく。
最近のノワール傾向を踏襲している
あえて今まで距離を取っていたはずの3人。
そこまで丁寧に描いていて、後半の刹那的な流れに良い助走。時々出てくる同じ道、風景は戻れない過去を表現していた。くれはが記憶を無くした理由は明かされるものの、そこまで深く描いていない。それと同じく金森が半グレ集団に居る理由も。この作品には余白も多い。ふと今年観た作品達も思い出す。内山拓也監督の『若く見知らぬ者たち』は、点と点だけ描いても伝わる事もあったし、観る側の想像を掻き立てる楽しさもある作品だった。この作品も、セリフで説明等は極力抑えており、若者が出てくる息苦しさが類似していた気がする。また、どうする事も出来ない生活や生きづらさを描いた韓国作品の『このろくでもない世界で』は、特に裏社会が舞台でもあり似ていた。こちらはさすが韓国ノワールといった作風で、私はあそこまでのヤクザの世界を見せてくれても良かったと感じた。それには画面的にもっと暗くても良い位だった。それが色味なのか醸し出す雰囲気なのか。
加速する終盤が良くもあり
惜しい気もする
ヴィランとして登場するのは組長の息子タケル(青柳翔)がまた非常に良い。一体何がしたいのよ?レベルで嫌な事してくる。なんならこの3人が今こーなってる元凶。そこを青柳翔の安定したキャラクター作りと演技で説得力を持たせていた。
何回か刺されてましたが、あんまり大怪我しない不死身のタケル。林の落とし前をつけさせようと、金森を呼びます。そこに幼馴染とわかっていてヒロトも呼びます。いや、そこよ。意地悪なタケル。このようなあり得ない程の嫌な奴を作る事って観てる側にも感情入るから大事です。おまけにここに、くれはも登場して役者が揃います。
どんどん転落していく3人。血の量も増えていき、いよいよジャパニーズノワールとなっていく。好きな役者さん達の手が血に染まったり、返り血を浴びている様を見るのは私の喜びだ(え?大丈夫そ?)バイオレンスやアクションもありますが、アクションは『ベイビーわるきゅーれ』シリーズにはかなわない。とはいえ、悪くなかったし気分もアガります。
ただ、金森とつるんでたアンナ(杏花)は物凄く手練れだったという設定らしく、それが本当の最後にわかるのだが、ここは残念ながら唐突。また、半グレ組織の頭である木村についても同じで、敵対する関係性や実はヤクザより強いという描写があると、もっと違う楽しみが出来た作品だったと思う。内容とは別ですが、組の親分と息子役なんだけど、小木茂光さんと青柳翔さんはマジで似てて驚いた。そして2人とも安定の悪者役で落ち着くし間違いない芝居でした。
岩屋拓郎初監督作品、とのこと。次回作も期待して注目したい。