日本アカデミー賞 主演女優賞! 女優「岸井ゆきの」いま観たい初期三作品
こんにちは。DISCAS編集部のミヤタです。
「きっと、あなたの心に届く」をテーマに良質な邦画を厳選してお送りする「良質邦画工房」。
今回は女優「岸井ゆきの」特集。
目下の最新主演作「ケイコ 目を澄ませて」で第46回日本アカデミー賞主演女優賞、第77回毎日映画コンクール女優主演賞、第96回キネマ旬報ベスト・テン主演女優賞と名だたる映画賞を総ナメにし、名実ともに日本のトップ女優となった岸井ゆきの。
そんな彼女の初主演作品を含む初期作品の中から三作品をピックアップしてご紹介します。
当時から変わらない女優としての芯の部分や、キャリア初期だからこその初々しい部分に注目して観てみると、今後の作品を観る時の輝きや魅力が一層増すかもしれませんよ。
それでは早速いってみましょう!
「おじいちゃん、死んじゃったって。」
「普通」を演じきった恐るべき初主演作。
一作品目は「おじいちゃん、死んじゃったって。」(2017年)
岸井ゆきの、記念すべき初主演作品です。
旅行代理店に勤める吉子(岸井ゆきの)。離れて暮らす祖父が亡くなったという報せが届きます。お葬式の為に親族が久しぶりに集まるのですがそれぞれが抱えている問題、こじれた思いがもつれあって、、。というお話。
何といっても見どころは、クセと主張が強いキャラたちの中で岸井ゆきのが見せる「受け」の演技。みなが好き勝手に発言し振舞う中で、流されるでもなく真正面からぶつかる訳でもないけれども、素直に驚いたり怒ったり泣いたりする様を自然にみせられる岸井ゆきの。
「普通にいそうな人」を演じられるのってすごいと思うんですよね。
「普通」があるから「へんてこさ」が際立つ。本作での岸井ゆきのは主役として中心にいながら周りを際立たせるという偉業をやってのけているのです。
岩松了、光石研、岡山天音といった演技巧者が集っている本作。岸井ゆきのに注目しつつ、映画としても十二分に楽しめますので是非チェックしてみてください。
「光と禿」
ミュージシャンとの異種格闘技戦。岸井ゆきののTKO勝ち。
二作目は「光と禿」(2016年)
映画と音楽のコラボをテーマにした映画祭「MOOSIC LAB 2016」で岸井ゆきのの最優秀女優賞など5冠を勝ち取った作品です。
岸井ゆきのは盲目の女性、梢(こずえ)を演じています。相手役は、半裸に電飾パンツ一丁で身近な悲哀を歌い上げる超・個性派ソロユニット「クリトリック・リス」のスギムが本人役で出演。
本作はそんな2人がひょんな事で出会い、心を通わせるまでを描いた作品です。スギムは離婚した元奥さんの娘に土下座してお金を借りたり、ライブハウスの機材を破壊して出禁になったりと、社会一般的には偏見の目で見られてしまうかもしれない存在。しかし梢は彼の本質的な優しさや魅力を「見抜く」訳です。
岸井ゆきのの「目が見えない」演技の上手さもさる事ながら、親友以外には閉ざしていた心をスギムとの触れ合いを通して、光が差し込むように徐々に開いていく機微を繊細に演じきったのはあっぱれ。
「歌ってよ」「ハグさせて」「見えないからこそ見えるものがあるんだよ」。照れてしまうような言葉を発する岸井ゆきのの、穏やかなんだけどまっすぐな輝きは観ていて気持ちが良い!
岸井ゆきのとスギム。甲乙つけがたい異種格闘技戦ですが、スギムは優しいので自らリングを降りた(ただし半裸で)ことにして岸井ゆきののTKO勝ち!
本作は「MOOSIC LAB」作品なので音楽が流れるシーンが随所に登場。町の中華屋さんで流れた「ライスだーーーい♪」はきっとあなたの耳と心に残ることでしょう。
「友だちのパパが好き」
わたしは岸井ゆきのの眼輪筋が好き
今回最後にご紹介する三作品目は「友だちのパパが好き」(2015年)
これはですね、、
観る人を選ぶ映画かもしれません。なんせ親友が自分の父親を好きになる。しかもかなりガチで、、というタイトル通りの内容でしかもけっこう生々しい描写があります。私は2015年にこの作品を観て岸井ゆきのの存在を知り、強烈な印象を受けたので紹介させて頂きます。
岸井ゆきの演じる妙子は、親友マヤが自分の父親である恭介の事を好きだと打ち明けられ、その後のマヤの激烈アグレッシブな言動に見事に巻き込まれていくというこれまた「受け」の演技。
親友以外の登場人物も妙子以外はたいがいぶっ飛んでおり、ある意味非現実的なお話なのですが、妙子がしっかり「ドン引き」したり「叱責」したりするから観る側は安心してストーリーについていけるんですね。お笑いでいう「ツッコミ」の立ち位置。
白眉は後半クライマックス。とある「事件」が起きるのですがそこで岸井ゆきのが見せる眼輪筋までも駆使した「呆れ&怒り」の演技は見ものです。私は3回巻き戻して観ましたね、ハイ。
いかがだったでしょうか。女優・岸井ゆきの いま観たい初期三作品特集。
演じているのだという前提をつい忘れてしまうほど普通っぽいことの凄さ、派手な立ち振る舞いをする事なく心の中に渦巻く複雑で繊細な感情を目線やほんの少しの表情の変化で表現できる巧みさ、キャリア初期から現在に至るまで一筋縄ではいかない役どころを開拓していくチャレンジ精神。
芯の部分はそのままに、一作品ごとに音をたてて成長していく岸井ゆきのから目が離せません。
今回は以上になります。お目通しいただきありがとうございました。
それでは皆さま、今日も良き映画ライフを!