何度も観てしまう 昭和40年代邦画どん底時代の快作!
昭和50年夏公開、超大作として公開されながら
まったくの不入りで見捨てられた映画「新幹線大爆破」。
「ポセイドンアドベンチャー」や「大地震」、「エアポート75」などのパニック映画が洋画の潮流となって、邦画のパニック映画として東映が挑んだ作品です。
当時開通したばかりの東京ー博多間の新幹線に爆弾を仕掛け、80キロになると爆発するという、ノンストップサスペンスで、国鉄、警察、犯人たちと虚々実々の駆け引きが展開するオリジナルストーリー。プロッとだけでも、これは面白い!
あの道頓堀のひっかけ橋から見えるビルボードにでかでかとこの看板が出てました。
しかし、この夏興行には洋画の超大作「タワーリングインフェルノ」の一本被りで、「新幹線大爆破」は見向きもされませんでした。
聞くと公開の3日前に作品が完成されたようで、試写会もなく、テレビの宣伝は新幹線が走って来るイメージだけのものでした。
また東映の宣伝が大失敗だったのです。
新幹線を精緻なミニチュアとシュノーケルカメラという特殊技術でみせるという、
特撮を売りにしたことです。
これは東宝の「日本沈没」が大人向け特撮映画でヒットしたことに便乗してしまいました。
と、当時はやくざ映画が主流の東映にあって、客筋があっていなかった…
現に客足が伸びないので併映を「仁義の墓場」に変更したのです。
当時、小学生のわたくしはこれでは観に行けないじゃん!
この穴埋めに急遽、製作されたのが「トラック野郎」、のちに東映の看板作になるのは知られたこと。
当初主役は菅原文太を予定で、「爆弾犯は嫌じゃ~」と拒否。
自ら企画した低予算穴埋め企画がスマッシュヒット!
健さんより文ちゃんのほうに、風が流れていたようです。
(東映の社長は陰りの見えて来た高倉健、鶴田浩二をじゃけにして、菅原文太に重きをおきだしてく…)
国内では散々な成績ながら、海外でヒット!
とくにフランスでは大ヒットしたニュースが流れます。
「SUPER EXPRESS109」というタイトルでフランス語版が逆輸入公開されました。
そっぽ向いてた映画関係者がようやく観ると、作品の評価が高まり、キネ旬ベスト10入り、
読者選出ではベストワン、さらに朝日新聞の朝日シネマでもベストワンになります(これは関西だけのものだと思います)
わたしが観たのは数年後。いちどテレビ放映される予定だったのですが、類似する事件が起こったため別作品にチェンジ。
大阪三越劇場にて「幸福の黄色いハンカチ」の2本立てで観ることなりました。
東映末期、人気が凋落してきた高倉健とその後東映を去って、やくざ映画から足を洗い路線変更に挑んだ高倉健を一度に見れるスゴイ二本立てでした。これで高倉健を初めて観たのです。
本作はテレビで何度も放映されています。いまネットフリックスでも配信されています。そのたびに観てしまっています。
観ていただくと、悪条件のなかで必死につくった日本映画陣の逆境魂が伝わってきます。
高倉健が自ら乗り出した企画とも言われ、新境地に取組み、その意気込みは当時のキネ旬の記事になっています。
またテロリストを演じるあたり、脚本になかった犯人たちの人物像が加筆され、作品の厚みが増しています。
観客は「健さんが爆弾犯をするなんて、何かひとかたならぬわけがあるんじゃないのか?」と犯人側に感情移入してしまい、一層、テンションがあがっていきます。
カメラワーク、そして音楽も秀逸です。
オープニングは東映らしからぬ、女性スキャットのメランコリーなテーマが流れます。このメロディーが犯人側、健さんらのモチーフになっていきます。
スキャットの主は伊集加代、日本代表するスキャットの女王です。
この作品を最大限評価するのは、「新幹線大爆破」というタイトルで推し進めたことです。
国鉄より再三、撮影中止、タイトル変更を要求されました。しかし東映の岡田社長は頑とし譲らず、このタイトルで突き進めました、偉い!
国鉄全面非協力のもと、新幹線の車両、東京駅のセットを自前でつくることになります。
新幹線指令室はドイツ人を雇い、ドイツ鉄道会社に扮装し社会見学と偽り盗み撮りをし、新幹線の車両は製造元に発注したそうです。その製造会社は国鉄から出禁になったそうで。
そんな昭和の映画野郎の渾身の作品なんです
数年前にキネ旬で日本映画70年代ベストテンで本作は第3位にランクされました。
1位は「太陽を盗んだ男」、2位「仁義なき戦い」。ほかに「最も危険な遊戯」と「ルパン三世カリオストロの城」が入ってました。
「仁義なき戦い」以外は不発で、しかもいづれも娯楽作品。
これぞ、どん底時代に生まれた傑作です。
まだ未鑑賞の方はぜひ、ご覧ください。
高倉健没後10周年にあたります。
ネットフリックスでリメイクされるようですが、キャスト、監督を聞いてがっかりしました。
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投稿を表示さっちゃんと申します。初めてお邪魔します。
そうでしたね。健さんが亡くなったの10年前になるんですよね。
本作は私も海外のパニック映画に乗っかった安易な模倣かと思っていたので劇場に足を運ぶことはなかったですが、後にCSで放送されたときに初めて観て、骨太の作品であることが分かりました。
国鉄が前面非協力というのは聞いていましたが岡田社長がタイトル変更を受け容れなかったというのは初めて知りました。私もエライと思います。
車内や車両の製作裏話も面白かったです。このメイキングを再現して映画にしてもいいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
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投稿を表示「幸福の黄色いハンカチ」の2本立て ってすごいですね
僕も中坊でボーっと観ておりましたので、今まで気が付かなかったのですが、
これって「スピード」の元ネタじゃーあーりませんか
因みに子どもではありましたが、山本圭にシンパシーを感じた記憶があります
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