自身の体験談を映画化したら、豪映画史上屈指の大ヒット!『クロコダイル・ダンディー』
■クロコダイル・ダンディー
《作品データ》
オーストラリアのコメディアンのポール・ホーガンがオーストラリア親善大使としてニューヨークに訪れた際のエピソードを元に作られたポール・ホーガン原案・脚本・主演のコメディ映画。ニューヨークの新聞社に勤めるスーはオーストラリアでワニに襲われたことで話題になっていたマイケル・J・クロコダイル・ダンディーを取材するために郊外の街に滞在。スーら地元のバーでウォルター・ライリーの紹介でマイケルと会い、意気投合し、マイケルをニューヨークに招待する。マイケル・J・クロコダイル・ダンディー役をポール・ホーガンが演じ、他リンダ・コズラウスキー、ジョン・メイロン、デヴィッド・ガルピリル、マーク・ブラム、マイケル・ロンバード、レジナルド・ヴェルジョンソン、リク・コリッティ、マギー・ブリンコ、スティーブ・ラックマン、ジェリー・スキルトン 、テリー・ギル 、ピーター・ターンブル、クリスティナ・トトス、アーヴィング・メッツマン、アン・カーライル 、アン・フランシーヌ、ケイトリン・クラーク、ナンシー・メット、ジョン・スナイダー、サリヴァン・ウォーカー、ピート・ブコッシが出演。
・公開日: 1987年2月21日
・配給: 20世紀フォックス
・上映時間:97分
【スタッフ】
監督:ピーター・フェイマン/原案・脚本・主演:ポール・ホーガン/脚本・製作:ジョン・コーネル/脚本:ケン・シャディー
【キャスト】
ポール・ホーガン、リンダ・コズラウスキー、ジョン・メイロン、デヴィッド・ガルピリル、マーク・ブラム、マイケル・ロンバード、レジナルド・ヴェルジョンソン、リク・コリッティ、マギー・ブリンコ、スティーブ・ラックマン、ジェリー・スキルトン 、テリー・ギル 、ピーター・ターンブル、クリスティナ・トトス、アーヴィング・メッツマン、アン・カーライル 、アン・フランシーヌ、ケイトリン・クラーク、ナンシー・メット、ジョン・スナイダー、サリヴァン・ウォーカー、ピート・ブコッシ
《『クロコダイル・ダンディー』考察》
キャノン・フィルムズ製作のスタローン主演の『オーバー・ザ・トップ』に続いて、こちらは日本公開が1週間違いだったポール・ホーガン原案・脚本・主演映画『クロコダイル・ダンディー』。日本での興行成績は『オーバー・ザ・トップ』が12億4100万円に対して『クロコダイル・ダンディー』は6.7億円ではあるが、アメリカでは『クロコダイル・ダンディー』は約3億2800万ドル(当時の米ドル為替が1ドル=153.5円の計算で日本円になおすと503億4800万円!)と桁違いの成功をおさめている。ちなみに『オーバー・ザ・トップ』はアメリカとカナダを併せての興行成績は1605万ドル。日本円で約24億6367円になる。
この『クロコダイル・ダンディー』の約3億2800万ドルがいかに凄いかというと、オーストラリア映画で唯一これに勝っているのはジョージ・ミラー監督作品『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の世界興行収入約3億75,83万ドルになる。
こう見ると日本では『オーバー・ザ・トップ』よりも人気が下のように思えるが、当時はテレビCMもそこそこやっていたし、プロレスファンならば新日本プロレスのレスラー、小林邦昭が一時期「戦うクロコダイル・ダンディー」と辻よしなりアナウンサーに呼ばれていたが、これは今思うとかなり謎。この辻󠄀よしなりアナウンサーが大先輩・古舘伊知郎氏に追いつこうといろんなレスラーに「語呂はいいけど、よく考えると謎ワード・とんちんかんなレスラー異名」を付けていて、小林邦昭の「戦いのクロコダイル・ダンディー」に関しては長年の謎で、改めて『クロコダイル・ダンディー』を見てもやっぱりリンクしないどころか余計乖離したようにも…。
あれかな、小林邦昭が長野県出身だから田舎者ってこと?いや、カッコいい小林邦昭に対して「戦いのトム・クルーズ」とか「戦いのチャーリー・シーン」と言うには明らかに違うし、『ランボー』や『ロッキー』、『コマンドー』や『ターミネーター』も違い、その間を取った「戦いのクロコダイル・ダンディー」なのかな。非常にどうでもいい話ではあるが、気分的にはこの件で辻󠄀よしなり氏を軽く問い詰めたい。
ともかく、オーストラリア人コメディアン・俳優による『クロコダイル・ダンディー』。予想通り、ターザンのようなマイケル・J・ダンディーことクロコダイル・ダンディーがニューヨークに来てカルチャーギャップ巻き起こしと、後に結婚もするリンダ・コズラウスキーとのラブストーリーもいい感じで展開している。
このカルチャーギャップに関してはもちろんオーストラリアの、それも比較的未開拓の地で育ったというのも大きいが、それだけではない。なぜなら、同じニューヨークでもイタリア系のタクシーの運ちゃんが案内したバーにはかなり馴染んでいたし、オーストラリアのバーのシーンもこれに近いから、田舎者だからという一言では片付けられない。
加えて、途中でスーがマイケルの暴力的な言動を非難するシーンや、マイケルがやたらとタバコを吸うシーンがある。さらにはこのマイケルに対してスーの上司のリチャード・メイスンのスノッブな感じもよりマイケルのワイルドな性格をより浮き立たせる。
このハイソサエティとワイルドの対比は直前に見たスタローン主演の『オーバー・ザ・トップ』のスタローンにも通じる。前回触れなかったが、『オーバー・ザ・トップ』は2月14日のバレンタインデーでの公開。バレンタインデーのデートムービーとしては…まぁ、スタローンファンならありだろうけど、その観点なら『クロコダイル・ダンディー』の方がまだ向いているかもしれない。ちなみにアメリカでは2月13日(金)、そう13日の金曜日の公開だった。
それでも『クロコダイル・ダンディー』のリチャードのハイソと『オーバー・ザ・トップ』のこまっしゃくれた少年マイケルやその祖父のジェイソン・カトラーらの世界観は近いものがあるし、世の中の風潮としてもこんな感じだったかも。
考えてみれば、『ウォール街』や『摩天楼はバラ色に』、日本のホイチョイ三部作と共通する時代の空気があるし、『オーバー・ザ・トップ』と『クロコダイル・ダンディー』はこうした世界観に対するカウンターカルチャーから生まれた、と令和になった今なら俯瞰して見れる。
確かに中盤から大都会ニューヨークでのマイケルのカルチャーギャップぶりのコメディを見るが、前半のオーストラリアのシーンもわりとある。
よく考えてみるとこのカルチャーギャップの構図はサシャ・バロン・コーエン主演の『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』にも通じる。というか、エディ・マーフィ主演の『星の王子ニューヨークへ行く』だってそうだし、「◯◯ニューヨークへ行く」はその後のコメディ映画における定番の一つになったかもしれない。
ニューヨークを本拠地にし、キャラクタープロレスを売りにしたWWFではサモア系のレスラーやオーストラリア、ニュージランドのレスラーで土着的なキャラで売り出したレスラーが結構いたから、『クロコダイル・ダンディー』がアメリカで大ヒットしたのも頷ける。
それと、本作はアメリカ映画ではなく、オーストラリア映画というのもポイントの一つ。オーストラリアのシーン、特にバーのシーンの独特な空気はニューヨークのバーのシーンのそれとは違う。感覚的には1971年のオーストラリア映画『荒野の千鳥足』や『マッドマックス』の1作目、『ムーラン・ルージュ』等で知られるオーストラリア出身のバズ・ラーマン監督の初期の作品『ダンシング・ヒーロー』にも通じるオーストラリア映画特有の空気がある。
こうした雰囲気は2010年代の『アニマル・キングダム』やそれこそ最近公開したオーストラリア映画『ロイヤルホテル』の荒くれ者だらけのバーにもオーストラリアらしさが出てはいるし、『荒野の千鳥足』から90年代の『ダンシング・ヒーロー』に通じるラフさも若干ある。
元々、オーストラリアのコメディアンのポール・ホーガンがもたらしたネタを映画化して、オーストラリア映画史上屈指の成功をおさめた本作は続編も1作目程ではないがやはり成功したということもあってか、1990年に結婚したポール・ホーガンとリンダ・コズラウスキーは以降の映画出演が少ない、というかほとんどない。『クロコダイル・ダンディー』とその続編がポール・ホーガン自身が原案と脚本、主演と兼ねていれば利益の配分も多かっただろうからとも取れる。
1939年生まれのポール・ホーガンは1988年の続編『クロコダイル・ダンディー2』ともなると49歳と当時としてはわりと高齢だったから90年代以降はセミリタイア状態になったかも。尚、クリント・イーストウッドはポール・ホーガンよりも9歳年上、80年代半ばにジェームズ・ボンドを勇退したロジャー・ムーアは勇退時は58歳だから年齢的にはセミリタイアをするには早かったかもしれないが、『クロコダイル・ダンディー』と『クロコダイル・ダンディー2』の2発併せての大成功もあってセミリタイアを早めたのであろうか?
その辺りの考察も含めて続編に当たる『クロコダイル・ダンディー2』も近々見る。
それにしても、これだけ大ヒットした映画を今さら見て、書くというのはちょぴりハズいが、ま、いいかと思うしかない(笑)。