第37回東京国際映画際 黒澤明賞受賞 フー・ティエンユー監督 独占取材🎥
第37回東京国際映画祭で11月5日、黒澤明賞を受賞したフー・ティエンユー監督が、帝国ホテルで行われた授賞式に出席した。フー監督は女性理髪師の物語を描いた「本日公休」で人と人との絆をテーマとし、庶民の生活を温かい目線で描いた手法が高く評価された。また、今年の黒澤明賞には日本の三宅唱監督も選ばれた。
※黒澤明賞は、日本が世界に誇る故黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞。選考委員は、山田洋次監督、奈良橋陽子氏、川本三郎氏、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの4名。
第37回東京国際映画祭(TIFF)で行われた黒澤明賞授賞式直前の貴重なお時間をいただき、フー・ティエンユー監督のインタビューを行いました。(取材・文/U子、IKA)
U子:フー監督、改めて黒澤明賞受賞おめでとうございます。受賞にあたり、率直な感想をお聞かせください。
フー監督:大変光栄です。今もまだ少し信じられないのですが、黒澤明賞というとても大きな賞をいただけるということは、私の映画に対して高い評価をいただけたということなので、この知らせを初めて聞いた時「まさか冗談でしょ?」と思いました。それくらい驚いたのですが、今回このような賞をいただけたということで映画監督としての人生の中でとても自信を持てるようなことであり、大変ありがたく思っています。
IKA:日本での『本日公休』上映にあたり、公開当時の心境をお聞かせください。
フー監督:海外で台湾映画が上映される機会はあまりなく、台湾の映画が日本で公開されるということ自体、非常に喜ばしく思っています。日本の観客の皆さんが私の映画を観てくれてどのような感想を持っていただけるか、どれだけ台湾人の気持ちに沿って観ていただけるか期待していたのですが、私の期待以上の良い反応をたくさんいただきありがたかったです。舞台挨拶では、既に5回観てくれていた方もいて、私の描きたいものが通じたんだなと感じとても嬉しく思っています。
U子:台湾が舞台のお話でしたが、どこか昭和の日本の懐かしい雰囲気も感じるような作品だと思いました。『本日公休』の舞台はご実家で、主人公のアールイはご自身のお母様がモデルだとお聞きしました。ご実家で撮影されたのはリアリティを追求したかったからでしょうか?ご実家撮影にあたっての経緯を伺えたらと思います。
フー監督:昭和の雰囲気を感じたとのことでしたが、確かに植民地時代の影響もあり、台中の家屋はとても日本的な家屋が多いです。例えば、私は山田洋次監督の映画の中に出てくる雰囲気が私の実家にとても似ているなと思うことがよくあります。そのため、日本と台湾の雰囲気の共通点はかなりあるように感じています。実家でロケを行った理由ですが、当初、別の床屋さんを使おうと思っていたのですが、撮影期間中営業ができなくなってしまうため難しく、スタッフから実家の床屋さんが使えないか打診を受け、少し家に手を入れて撮影現場として使用することになりました。この撮影中も母は、撮影の合間を縫って自分の店を営業していました。また映画に出演しているお客さん役の1人は、実際の常連客なのです。そのお客さんを実際に見た時に、役に合うのではないかと感じキャスティングしました。
U子:主人公アールイの長女シンは、映像関係のお仕事に就かれていましたが、監督ご自身がモデルでもありますか?
フー監督:多くの方に「どの登場人物が監督のモデルですか?」と聞かれますが、私はいつも“全ての人物が私です”と答えています。特に誰のモデルというわけではなく、私自身で見聞きしたもの全てをもって役を作り上げています。シンと私との共通点は、車の運転が下手なところくらいです。(笑)
IKA:時系列の描き方など脚本に大変魅力を感じました。作家でもある監督が脚本を書く上で重視していることをお聞かせください。
フー監督:私は最初、作家として小説を書くことから入り、そこから脚本を書くようになりました。
そのためスタッフには、私の脚本を読むと小説を読んでいるみたいだと言われていました。この小説と脚本における共通点はあるように感じています。小説と脚本の相違点としては、小説では人物の心理的描写を文字で表現できることに対して、映画の脚本では心理描写を文字だけでは表現できず、どのように表現するか試されるという点が大きく異なる点です。この心理描写を、映画言語を用いてどのように表現するかといった点を重視しています。
IKA:台湾映画市場では多くの女性監督が活躍しているとお聞きしましたが、監督から見る現在の台湾映画市場についてお聞かせください。
フー監督:台湾女性の映画界での活躍ですが、監督だけでなく、プロデューサーやカメラマン、照明など映画業界で働く女性が増えており、既に台湾映画業界の半分ほどは女性が支えているような印象です。そのため私は、働いている中で女性だから難しいと感じることもないです。台湾でも世界の映画市場と同様に、家で映画を観る人が増え、映画館に足を運んでくれる観客がますます少なくなっています。私はこの状況に対して1人でも多くの観客が映画館に来てくれるように頑張らないといけないと思っていますし、映画館という空間でみんなが一緒に笑ったり泣いたりできることは映画館の大きな魅力と感じているので、これからも映画館に足を運んでもらえるような努力を続けていきたいと思っています。
U子:監督の作る作品は、女性らしい細やかで繊細な感情表現が素晴らしいと感じます。今後の映画作りで挑戦してみたいテーマやジャンルなどございましたら、お聞かせください。
フー監督:まずは『本日公休』のような家族をテーマにした作品です。このような家族をテーマにした作品はずっと撮り続けていたいと思っています。もう1つは、推理小説が好きでサスペンスのジャンルに興味があり、現在、心理サスペンスものを企画しています。人間の本質が強く現れるジャンルであり、この人間の本質の部分を表現して撮影していきたいと考えています。是非ご期待ください!
IKA:海外映画祭での受賞を受け、今後海外へ向けた展望などがあればお聞かせください。
フー監督:特に海外を目指して作品を作っていくのではなく、今は自然な形で自分の作りたい作品に挑戦していきたいと考えています。常に自分が思い描いていたものよりも、もっといいものに出会いたいと思っていますし、もっといいものを作りたいと思っています。
IKA: 最後になりますが、全国で絶賛上映中の「本日公休』の魅力・観てほしいポイントを教えてください。
フー監督: 『本日公休』は本当に台湾らしい映画だと思っています。台湾人の日常生活を映し出し、お互いに助け合って生活していくようなとても暖かく親しみを感じられる作品です。この人間としての温かみや親しみといった部分は台湾だけでなく世界共通であり、誰が見ても共感していただけるような部分だと思いますので、是非楽しんでご覧いただけたらと思います。
U子、IKA:本日はありがとうございました。
いかがでしたか?
今回、フー監督ご本人にお会いしてみた印象としては…背の高い美しい女性であり、そのお人柄には大変惹かれるものがありました。
日本語でも少しだけお話ししてくださり「ありがとう、光栄です。」「信じられない!!」「ちょっと写真の写り見せて!(笑)」などと、茶目っ気たっぷりの笑顔でフレンドリーに接してくださいました。
『本日公休』のアールイによく似た“芯が強くて可愛らしいキャラクター”だと感じます。
そして、この様な貴重な機会をいただき直接監督に取材できた事は、私にとって忘れられない経験となりました。
Discover usに感謝と共に、シネマニストになれたことを誇らしく思います。
本当にありがとうございました。
『本日公休』のコラムはこちらから↓↓↓
https://community.discas.net/announcements/rdnzcwh56vq2oyvp
監督
フー・ティエンユー(傅天余)
1973年9月13日台中生まれ。国立政治大学日本語日本文学科、ニューヨーク大学メディア生態学・映画研究所を卒業後、作家として活動を始め、短編小説『清潔的戀愛』で第24回時報文学賞最優秀短編賞、『業生命』で中央日報文学賞最優秀小説賞を受賞する。その後、脚本家・監のウー・ニェンチェンの指導の下に映画界のキャリアを開始しテレビ映画やドラマシリーズの監替・脚本を手掛ける。2009年『Somewhere | HaveNever Travelled (75我去遠方)』(映画祭上映)で長編映画監督デビュー。主演のリン・ボーホンのデビュー作でもある。2010年にはアーティスト村上隆のドキュメンタリー『到死都要搞藝術』と本作のモデルとなった理容師の母親を記録した『阿蕊的家庭理髪』を発表。2015年の岩井俊二、スタンリー・クワン、ウェイ・ダーション製作のオムニバス『恋する都市 5つの物語』の第4話 日本・小樽編、2016年のアリエル・リンとリデイアン・ヴォーン主演のファンタジー『マイ・エッグ・ボーイ』(映画祭上映)の監督と脚本を務める。2023年に3年をかけて製作した「本日公休」を発表。2024年には台北電影節のイメージCMを担当。映画祭PR大使を務めるリン・ボーホンを『Somewhere 1 Have NeverTravelled』映像と再会させた。
(「本日公休」公式サイト-ザジフィルムズより引用)
開催概要
名称:第37回東京国際映画祭
期間:2024年10月28日(月)~11月6日(水) [10日間]
開催会場:シネスイッチ銀座、丸ノ内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHO
シネマズシャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUSMEETS...、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示💈台湾映画好きなんですが本作はとてま沁みました🥲監督さんにインタビューて素晴らしい👏映画祭、賞も受賞してはりましたね!
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示