2024年に観た映画(42) 「シュリ デジタルリマスター」
日本で「冬ソナ」が放映されたのが2003~2004年。本作はその3年前に公開されていて、実際初めて観る韓国映画のタイトルバックに流れるハングル文字に見慣れない感を如実に感じたのを覚えています。日本語と発音が似ている単語の多さを知ったのもこの作品。まだまだ当時の韓国は近くて遠い国でした。
第12回東京国際映画祭特別招待作品。韓国で大ヒットを記録した本作は日本でも18億円の興行収入を上げ、この年の興行収入ランキングの堂々17位に入っていた。
私にとって初めての韓国映画であり、隣国の映画の面白さを初めて知った。その切ないラストに号泣した、記憶に残る作品となりました。
日本での公開から四半世紀。「そういえば『シュリ』って面白かったよなぁ」と度々振り返る事があったのですが、kikiさんの上映スケジュールの中に本作を発見。
今回のデジタルリマスター版の公開を機に、上映権等の問題でその後のリバイバルが叶わなかった事を知りました。どこも既に上映終了している中、これまた映画の神様に(いや、kikiさんに)感謝。
最高の殺戮マシーンを育成する手段はいつの世もどこの国も同じなのだろうか。小山ゆう作「あずみ」を思い起こすオープニングで幕を開ける本作。南北融和に湧く韓国国内を舞台に、人知れず暗躍する北の特殊工作員イ・バンヒと、彼女を追う諜報部員ジュンウォン(ハン・ソッキュ)、ジャンギル(ソン・ガンホ)との息詰まる攻防。そこに新たな北の一団も加わり、怒涛のクライマックスと切な過ぎるラストへまっしぐら。
今観返すと特殊第8軍団との銃撃戦がツッコミどころ満載だったりもしますが、スパイ・アクションとしての古典的な面白さが随所に詰まっている。韓国映画界の大スターとなったソン・ガンホやチェ・ミンシクの若かりしお姿を拝めもします。韓国版「パニック・イン・スタジアム」とでも言うべきクライマックスの攻防と待ち受ける決着に、最後まで目が離せない。
でもやっぱりこの作品が秀抜なのは、諜報部員と工作員という登場人物に人間味を持たせた事。絶対にハッピーエンドを許さないシチュエーションの中で繰り広げられる切な過ぎる愛のゆくえが、そのラストで畳み掛ける。最後にジョンウォンが知るミョンヒョンの真実。
"When I Dream"の調べと共に、24年経ってもやっぱり泣かされました。
南北融和ムード漂う当時の世相が隔世の感ありますが、かくして人生初の韓国映画であった本作は、24年後に観返してもグッとくる作品でした。
№42
日付:2024/10/19
タイトル:シュリ | 쉬리
監督・脚本:강제규
劇場名:あつぎのえいがかん kiki スクリーン3
パンフレット:あり(¥880)
評価:7
<CONTENTS>
・イントロダクション
・物語
・CRITICS 1 江戸木純(映画評論家)
・カン・ジェギュ監督インタビュー
・ハン・ソッキュ インタビュー
・キム・ユンジン インタビュー
・CRITICS 2 石井建夫(「銃器と映画」の専門ライター)
・プロダクション・ノート
・キャスト
・スタッフ
<CONTENTS>
・イントロダクション
・韓国映画は『シュリ』<以前>と<以後>に分けられる 崔盛旭(映画研究者)
・カン・ジェギュ監督インタビュー
・キャスト
・レビュー 西森路代(ライター)
・レビュー 佐藤結(映画ライター)
・『シュリ』宣伝、つれづれ記 圷滋夫(元シネカノン/『シュリ』宣伝プロデューサー)
・キーワード 佐藤結