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DISCASレビュー

J.T.Hammer
2025/03/01 09:51

「白鯨」(1956)

作家レイ・ブラッドベリ参加の脚本は要所を抑え海洋冒険物として手堅い仕上り。原作のイメージ損なわぬ配役は申し分なく特に船長エイハブに扮するグレゴリー・ペックは本から抜け出てきたかのよう。勇猛な南海人クィークェグも雰囲気十分だったがこれを演じた俳優がオーストリア人とは驚き。昭和流アナログ特撮を駆使した山場は逆に新鮮。小説の結び部分における銛打ちタシュテーゴがピークオッド号の掲旗棒で上空舞うカモメを突き刺し水没する印象深い場面は映画では使われず

★★★★★★☆☆☆☆

(2025-11)

【追記】

本レビュー投稿後皆様の感想に目を通すとエイハブ役グレゴリー・ペックの評価が余り芳しくないようである。どうやら彼では格好良すぎと云うことらしい

そこで参考までに岩波文庫刊「白鯨」(八木敏雄訳)でのエイハブに関する記述の一文を挙げておきたい

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その丈高く、胸幅広い姿は正真正銘の青銅でできているようでもあり、しかもチェリーニのペルセウスの像さながらに、一点の瑕瑾もない型から鋳造されたようにも見えた(上巻315頁)

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白鯨に対する私怨に駆られ或る種狂信者の如く振る舞うエイハブだがその容姿は海の男に相応しい堂々たるものだったと想像されるがゆえ私個人はペックが適役と考えるのだがさて如何だろうか

 

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2 件の返信 (新着順)
さっちゃん
2025/03/31 23:59

 『白鯨』という作品はさまざまな見方ができる映画ですが、そのひとつに聖書ネタというのがあります。語り手のイシュメールも主役のエイハブも旧約聖書の登場人物らしいです。私もキリスト教徒ではないので、よく知りませんがエイハブは神に仇名す人物のようで、つまり彼が追うモビィ・ディックを神に見立てたととることもできます。
 Hammerさんが書かれたように、私もグレゴリー・ペックは風貌も表現した性格もエイハブ船長にぴったりだと思います。クライマックスの白鯨との一騎打ちも迫力満点でした。今だとあの闘いもCGになっちゃうんでしょうね。
 脚本を書いたレイ・ブラッドベリの腕前も確かなものですが、後年、ジョン・ヒューストンに缶詰にされて怖い思いをしたと語っていたと聞いたことがあります。
 『日曜日には鼠を殺せ』も傑作ですよね。小学生のころに洋画劇場で観て、そのときにはよく分からなかったのですが何年か前にDVDを借りたらグレゴリー・ペックとアンソニー・クインの役を反対に覚えていたことが分かって可笑しかったです。スペイン内戦という背景を活かした苛烈な物語で、冒頭でグレゴリー・ペックたち共和派の兵士たちがフランスへ亡命するときの彼らの顔のアップが印象に残ります。


J.T.Hammer
2025/04/01 20:49

はじめまして

映画を含め欧米の芸術文化を語るためには聖書、ギリシャ神話、シェイクスピアに関する知識が少なからず必要なことを痛感しております。「白鯨」も旧約聖書のヨブ記やヨナ記を理解していたらもっと違う角度から物語を見られるのだろうと思います

無神論者のレジスタンス、長年追ってきた彼の逮捕を神に祈る警察署長、主人公の母親から遺言を授かった神父。「日曜日には鼠を殺せ」は、神への関わり方が全く異なる彼ら三人の人生が交錯するフレッド・ジンネマンらしい社会派エンタメ作品でとても見応えがありました。この強いインパクトを持つタイトルは「殺しが静かにやってくる」と並び「最優秀邦題」に挙げたいくらいです

YOSHIA
2025/03/02 15:36

予告だけで面白さを感じるので、是非みてみたいです😉


J.T.Hammer
2025/03/02 17:57

手作り感満載のアナログな魅力を堪能出来ると思います

グレゴリー・ペックは一般的に「ローマの休日」の印象が強いかもしれませんが、男臭い無骨な役も結構似合います。彼の主演では「日曜日には鼠を殺せ」と云う作品もお薦めです