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私の好きな映画

じょ〜い小川
2024/07/27 03:05

あどけないロンドン娘の虎穴に入らずんばロストバージンを得ず『HOW TO HAVE SEX』

■HOW TO HAVE SEX

(c)BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

〈作品データ〉
第76回カンヌ国際映画祭ある視点部門でグランプリを獲ったイギリスの新鋭モリー・マニング・ウォーカー監督によるガーリームービー。主人公タラとスカイ、エムは卒業旅行を利用してギリシャのクレタ島にあるリゾート地マリアで開催される何日間にも及ぶパーティー・イベントに参加をするが、バージンのタラはそれを他の仲間に隠しながら参加した。しばらくすると3人はホテルの隣の部屋の青年たちと仲良くなり、タラもその内の一人と仲良くなるがその先の展開に進めないでいた。主人公タラ役をミア・マッケンナ=ブルースが演じ、他ララ・ピーク、サミュエル・ボトムリー、ショーン・トーマス、エンヴァ・ルイス、ラウラ・アンブラーが出演。
・7月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷他全国ロードショー【PG12】
・上映時間:91分
・配給:カルチュア・パブリッシャーズ
【スタッフ】
監督・脚本:モリー・マニング・ウォーカー
【キャスト】
ミア・マッケンナ=ブルース、ララ・ピーク、サミュエル・ボトムリー、ショーン・トーマス、エンヴァ・ルイス、ラウラ・アンブラー
原題:How to Have Sex/製作国:イギリス/製作年:2023年
公式HP:https://culture-pub.jp/hths_movie/


〈『HOW TO HAVE SEX』レビュー〉

少し前なら『彼女がパーティーで初体験する方法』というような邦題がつきそうだが、和訳とかせずにストレートに原題をそのまま(小文字と大文字の違いはあるが)邦題にも使った『HOW TO HAVE SEX』。予想通り、ハーモニー・コリン監督の『スプリング・ブレイカーズ』タイプのパーティー・イベントでの出来事を利用したタイプの展開で少女目線のガーリームービーにした映画で、派手な展開こそはないが見方によってはクライム要素が少しある、

ハイティーンの少女の気持ちに寄り添った映画になっている。

(c)BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

15年ぐらい前の映画でみうらじゅん原作、俳優の田口トモロヲが監督を務めた『色即ぜねれいしょん』という作品があったが、あれは童貞の野郎たちの夏休みのリゾート地バイトから脱童貞を試みる青春映画だった。この映画はリゾート地でのバイトではないが夏休み(卒業旅行だが)のリゾート地を舞台にしていて、メンバーの中にバージンのコがいるので『色即ぜねれいしょん』の女子版と言いたいし、上記でも書いたハーモニー・コリン監督作品の『スプリング・ブレイカーズ』にかなり近い作りの作品である。こうしたバカンス映画の主人公を女子3人に絞ったので、ストーリーを追うのには彼女らを見ればいい。男女の違いはあれど、『HOW TO HAVE SEX』は『色即ぜねれいしょん』よりボンクラ色は薄目だが、少女タラのロストバージンを出来るかどうかのドキドキが絶えずある。

(c)BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

このタラとスカイ、エムは見た目は悪くない所か普通に良い方で、放っておいても彼氏が出来そうなルックスである。

(c)BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

なのに、特にこの中でもタラがバージンのままというのがある意味ミステリー。その謎はストーリーを見ているうちに何となく分かってくる。イベントの音楽のノリのまま野郎と仲良くなって、そのノリのまま行けばいいのにそうはならない。そうするとヤりたがる野郎との関係が崩れ、野郎も強引になる。そこが流れで行けるか強引になるかってまさしく犯罪になるかどうかでもあるから、そこの線引きでややクライム要素がある社会派ドラマに仕上がっている。

 

強いて言うなら、タラはメンバーの中でもあどけなさがある少女であり、作中では常に背伸び感がある行動になっている。その証拠に無理な飲酒と喫煙のシーンが目につく。あのタラのあどけない感じは

『フォーチュン・クッキー』の頃のリンジー・ローハンにどことなく通じるものがある。

そういえば、『フォーチュン・クッキー』のリンジー・ローハンもフライドポテトを食べていた。

(c)BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

それにしてもややこしいのが、タラの「ロストバージンを望んでいるのに、その気にならなきゃ嫌だ。強引なのは嫌よ。」という点だ。もちろん『アメリ』のようなプラトニックラブじゃないし、かと言って、ロストバージンが目的とはいえ誰でもカモンでもない。そこを野郎がどう突破するのか、その気にさせるのか?

また、

そこに妙なホワイトナイト的な男子がいないのもポイント。

ホワイトナイトじゃなければラウールみたいな壁ドンをやりがちなちょいワルイケメン男子とでも言おうか。いずれにせよ、女性からゾッコンになるような男子がいたら単なるスイーツ女子高生ラブコメになってしまう。2010年以降の邦画はずばりこれをやりがち。この映画はホワイトナイトがいないからこそリアルでいい。

(c)BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023

派手なトラブルやアクシデント、モンスターパニックとかはないし、肝心のセックスシーンもあまり映さないから若干地味な作品ではあるが、女子がロストバージンになるかならないかに絞った作品ということもあって不思議と『スプリング・ブレイカーズ』よりかはフックがあるようにも思える。ただ、『ゴーストワールド』や『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』のように斜に構えた女の子たちではなく、比較的純真なコたちなので正直物足りなさはある。

とりあえず、ひと夏のイベント気分を味わえる映画ではある。

(c)BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION, THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023
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