取材・イベント

J.T.Hammer
2025/11/09 09:10

老王を狂気の淵に追いやる骨肉の争い

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リア王

ウィリアム・シェイクスピア原作

フィリップ・ブリーン台本・演出

THEATER MILANO-Za

11/1(土) 17時開演


11月1日(土)午後、この時期にしては気温が高く半袖で闊歩する人の姿もチラホラ見掛けるなか、新宿歌舞伎町タワーに在るシアター・ミラノ座にてタイトルロールを大竹しのぶが演じる「リア王」を鑑賞してきた。ここしばらく観劇の機会からは遠ざかっていたが、舞台と客席が一体となる緊張感はやはり格別。幕間を含む三時間半があっという間だった

物語はほぼシェイクスピアの戯曲通りに進むが時代は現代(恐らく1950年前後ではないだろうか)に設定されている。リア王が嵐吹く荒野を彷徨う場面においては実際に天井より夥しい水を撒いたのには驚かされた。王の家臣が内乱で両眼を抉られるシーンではそれを目撃した側近が嘔吐する(口から液体を出す)など細部までリアルさに拘った感じである。ヴァイオリンやパーカッションを奏でるミュージシャンたちが常時ステージ上に居合わす演出もユニークだ



俳優では腹黒き長女ゴネリル役の宮沢りえが印象に残った。私生活のすったもんだも既に遠い昔、つくづく彼女は素晴らしいアクターになったものだと思う。今や日本の映画演劇界に欠かせぬ存在と云っても過言ではない。主役の大竹しのぶもその奮闘ぶりはよく伝わってきた。ただ、彼女がリア王を演る意義みたいな部分が今ひとつ私には分からなかったのが率直な感想。やや捻くれた考えをすればリア王に相応しい男優がいないとの見方も出来なくはないが(一層のこと、リアを女王にしてしまっても良かったのでは?)、、、。仲代達矢、山崎努らに取って代わり、狂乱の老王を表現可能な者は誰かおらぬか

惜しむらくは予習のために買い求めた原作戯曲を半分くらいしか読まぬままに公演当日を迎えてしまった点。終いまでストーリーを把握していたならもっと理解は深まったろうに。試験前に慌てて教科書を取り出す悪い癖は学生時分と変わらず若干の反省を胸に劇場を後にした



❲配役❳

リア王 : 大竹しのぶ

ゴネリル : 宮沢りえ

エドマンド : 成田凌

コーディリア : 生田絵梨花

エドガー : 鈴鹿央士

リーガン : 安藤玉恵

道化 : 勝村政信

(本記事内の写真は全て公式HPより)


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