痛む心にそっと寄りそう
第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞!長編デビューにして世界19冠の新鋭モリー・マニング・ウォーカー監督作品
『HOW TO HAVE SEX』
Discover usさんに招待頂き、オンライン試写で鑑賞させて頂きました。
思春期のリアルな感情と思い描く性行為とは
監督/モリー・マニング・ウォーカー
出演/ミア・マッケンナ=ブルース、ララ・ピーク、サミュエル・ボトムリー、
ショーン・トーマス、エンヴァ・ルイス
ラウラ・アンブラー
ーあらすじー
タラ、スカイ、エムの3人は、卒業旅行の締めくくりに、パーティーが盛んなギリシャ・クレタ島のリゾート地、マリアに降り立つ。自分だけがバージンで、 居ても立ってもいられないタラ。初体験というミッションを果たすべく焦る彼女を尻目に、親友たちはお節介な混乱を招いてばかり。タラは、バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、一人酔っぱらい、彷徨っていた。そんな中、ホテルの隣室の少年達と出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くのだが—。
(『HOW TO HAVE SEX』公式より引用)
「性的同意の有無が今後の焦点となる」
まるでお決まりのセリフのように、最近ではテレビのニュースから聞こえてくる。
このようなニュースがなくならないのは、同意の有無が非常に曖昧で、はっきりとした証拠を示すことが困難、それに加えて男女間での同意の捉え方が違うためだ。
何かが違う、自分の中で疑問が生まれたらその時点で同意は無かったと言っても過言ではないのだろう。
本作の主人公16歳のタラも、その疑問を感じたひとりだ。しかし男性との行為に至るまでを思い返して、「合意はなかった。性暴力だ」と言い切れずにいる。
「もしかしたら性暴力なのかもしれない?」
と疑問ばかりが頭の中を埋め尽くす。
それはタラが初体験だったからではなく、認識できるまで時間が掛かるのだ。
例えばタラの場合は、初体験をすることが旅行の目的で、旅行中はネガティブな発言やノリの悪さを許そうとしない同調圧力だったり、性や学力などで親友に対して劣等感があり、NOと言えない雰囲気が漂っていた。
タラが悪循環に陥るには充分すぎる状況が整っていた。
またグループ内にいるときは居場所を見つけられるが、いざ一人になると自分の輪郭がぼやけていく、そして自分が何者かもわからなくなってしまう。
焦る気持ち、それを解決するための性行為だとしたらとても悲しいことだ。
女性のタラにも落ち度があった、という意見もあるかもしれないが、女性、男性と区別する前に、性行為に対する認識の違いを今一度考えるべきだと本作が助言してくれたように思える。
仲間と踊り狂った鮮やかなナイトクラブと、ゴミで溢れ、くすんだ街とのギャップに心が痛む。映像を通してこれが現実だと私たちに訴えかけ、性行為に対する認識の違いに切り込んでいるが、何が起きても一人ではない、といった寄り添う優しさも見える内容になっている。鑑賞後は誰かとオープンに話したくなる作品だ。
『HOW TO HAVE SEX』
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7 月 19 日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、
シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
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©BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION,
THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
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ここまで読んで頂きありがとうございました