おぞましい事件をカラーで丹念・丁寧に描いた実録福田村事件『福田村事件』
※比較的最近レンタルスタートした作品をピックアップ。2024年04月03日レンタルスタート。
■福田村事件
《作品データ》
『A』シリーズ、『FAKE』など数々の社会派ドキュメンタリー作品を手掛けた森達也監督が初の劇映画に挑み、関東大震災直後の混乱の中で実際に起きた虐殺事件を映画化した実録ドラマ! 1923年9月、千葉県福田村で9人の行商団員が殺害されるに至った過程を多角的な視点で描き、恐怖により差別や偏見を暴走させる集団心理の恐ろしさを浮かび上がらせる。
脚本は佐伯俊道、井上淳一、荒井晴彦のベテラン脚本家3人が担当した。出演は井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、木竜麻生、ピエール瀧、水道橋博士、豊原功補、柄本明。
・テアトル新宿他全国ロードショー中!【PG12】
・配給:太秦
・公式HP: https://www.fukudamura1923.jp/
《『福田村事件』レビュー》
Facebook上での映画製作のクラウドファンディングからタイトルと事件のあらましを知った森達也監督の劇映画初監督作品『福田村事件』。
関東大震災直後に千葉県野田市の近くの村で起こったおぞましい事件を丹念・丁寧に描き、悲劇を現代に問うという意味では見る価値が高い。
事件が起こる約半年前から被害者側、加害者側、事件が起こった福田村と野田市(当時は野田町)の様子・エピソードを描き、後半に残酷な事件そのものを見せる「実録福田村事件」として完璧な作りである。もう少し踏み込むと、朝鮮の京城を離れ故郷の野田村に帰ってきた元教師の澤田夫妻と軍の分隊長の長谷川、世襲で新しく村長になった田向、船頭の田中、若き女性新聞記者の恩田の群像視点でドキュメンタリータッチでドラマを描く。ハイカラな澤田の妻・静子や新米新聞記者の恩田の視点から排他的な福田村の空気をしっかり作り、リアリズム満点。
一方の永山瑛太が演じる沼部新助をリーダーとする香川の薬売りの旅団の様子もまたしっかりしている。大正の世でありながら裏では残っていた士農工商の身分制度のさらに下の身分になる「穢多」の様子が見られる貴重な作品で、単に異国人排他を原因とした事件というだけではない別の社会問題も描いた作品として重要な作品になる。
そして、事件の最大の要因になる「デマによる人間心理」をきっちり見せる。それは軍部の大本営の情報で動かされる民衆であり、当時日本が統治して蔑んでいた朝鮮・朝鮮人に対する感情、こうした世間の事情に巻き込まれた長谷川や澤田らを中心とした野田村の人々を描いたのが本作である。
カラー映像そのものがクリア過ぎて、一見、近作で言えば『せかいのおきく』みたいにモノクロにした方が良かったのではとも思いながらも、現代に通じ且つ今を生きる令和の日本人に問いかける映画と考えれば過去のことではなく、一歩間違えれば現代でも起こり得る現代の社会派映画であるので、わざとクリアなカラー映像にしたことが伺える。
映画の意義やドキュメンタリータッチによるおぞましい事件の凄まじさ、作品のクオリティーの高さなどおそらく2023年を代表する日本映画とハッキリと断言する。が、あまりにも丁寧に作り過ぎて映画のテンポそのものは悪く、現代の映画としては非常にもったりとした作りになってしまったこともまた事実。惜しい。森達也監督の劇映画初監督作品としては素晴らしい作品と言いたいが、クリア過ぎる映像や劇映画としてのストーリーのテンポの悪さはやはり初監督の作品であることは否めない。
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投稿を表示これすごく気になってるんですけど、見た後にダメージが大きそうで悩んでます💦💦
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