ユートピアというよりディストピアな災害サバイバル『コンクリート・ユートピア』
〈作品データ〉
『JSA』や『グッド・バッド・ウィアード』、『KCIA 南山の部長たち』のイ・ビョンホン主演のディザスター・パニック&サバイバル・ヒューマンドラマ映画。世界的な大災害で廃墟と化した韓国・ソウルで、唯一倒壊なく立ちそびえるファングアパートの一室で突如火災が発生し、近くにいた902号室に住むキム・ヨンタクは機転を利かせ消火栓を使い、青年ミンソンと共に火を消し止める。ファングアパートの住人達はヨンタクの勇敢な行動を称え、ヨンタクはアパートの代表となり、アパートを守るためにルールを厳しく取り締まることに。主人公キム・ヨンタク役をイ・ビョンホンが演じ、他パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドゥユンが出演。
・1月5日(金)より丸の内ピカデリー他全国ロードショー
・上映時間:130分
・配給: クロックワークス
【スタッフ】
監督・脚本:オム・テファ/脚本:イ・シンジ
【キャスト】
イ・ビョンホン、パク・ソジュン、パク・ボヨン、キム・ソニョン、パク・ジフ、キム・ドゥユン
原題:Concrete Utopia/製作国:韓国/製作年:2023年
公式HP:https://klockworx-asia.com/CU/
〈『コンクリート・ユートピア』レビュー(レビュアー〉
丁度去年1月の同じ時期にイ・ビョンホン主演のフライトパニック&ウイルスパニック映画『非常宣言』が公開されたが、偶然にも今年も新年第1週目に公開されたイ・ビョンホン主演映画『コンクリート・ユートピア』。同じパニック映画でも今度はディザスター・パニック映画で、そこから巻き起こる人間模様、被災時サバイバル、サスペンス、大バトルは見応え十分。
2年前の11月に大地震ディザスター・パニック映画『奈落のマイホーム』が公開され、あっちは大地震前と一次の地震被災、二次災害被災がメインだったが、本作は一次の震災の被災後のストーリーがメインになり、ディザスター映画というよりはその後のサバイバルが主となる。そこで生き残った者たちがルールを決め、それを遵守することでファングアパートを自分等のユートピアにしようとするんだけど、そのユートピア建設&サバイバルのみで展開するのかと思いきや、リーダーに祭り上げられたキム・ヨンタクのストーリーも入れる。
このイ・ビョンホンが演じるキム・ヨンタクにまつわる謎、エピソードがこの映画の一番のポイントになる。このきっかけというかキーになるのが903号室にかつて住んでいて、ファングアパートに出戻って来た女性で、そこを起点に別種のサスペンススリラーの様相になる。このサスペンススリラーと災害サバイバルのミックスの塩梅が良く、終盤のカオスな大バトルに繋がる。
そもそものファングアパートだけ無事という設定のおかしさや、1号消火栓の使い方やラストシーンも微妙。しかしながら、キム・ヨンタクを巡った意地でも生き抜く極限の人間の心理をついたサスペンススリラーと災害サバイバルとしては飽きずに見られる。