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DISCASレビュー

じょ〜い小川
2024/08/19 22:09

テレビドラマ「渥美清の泣いてたまるか」を『男はつらいよ』生誕前夜として見る(その2)

■渥美清の泣いてたまるかvol.2

第三話「ビフテキ子守唄」
《作品データ》
昭和41年4月17日から昭和43年3月31日まで、およそ2年間にわたりTBS系列で毎週日曜日午後8時 から午後8時56分まで放映された渥美清(青島幸男、中村賀津雄)主演の1話完結形式の連続テレビドラマ。主人公・千葉五郎は妻・和歌子を亡くし、タクシードライバーとして生計を立てながらアパートで一人暮らしをする。ある日、五郎のタクシーに女性が無理矢理自分の息子をタクシーに乗せるが、目的地に行くと工場ばかりで五郎はタクシーに子供を置き去りされたことが分かり、にわかに子供の父親代わりに。主人公・千葉五郎役を渥美清が演じ、他京塚昌子、藤村有弘、黒柳徹子、悠木千帆、清川虹子、関敬六が出演。

・放映日:1966年5月8日
・製作:国際放映、TBS

【スタッフ】
監督:佐伯孚治/脚本:鈴木尚之、掛札昌裕
【キャスト】
渥美清、京塚昌子、藤村有弘、黒柳徹子、悠木千帆、清川虹子、関敬六


第四話「オールセーフ」

《作品データ》
昭和41年4月17日から昭和43年3月31日まで、およそ2年間にわたりTBS系列で毎週日曜日午後8時 から午後8時56分まで放映された渥美清(青島幸男、中村賀津雄)主演の1話完結形式の連続テレビドラマ。主人公・掛川松吉はプロ野球の主審を務めるが、クロスプレーの度に球場から罵声を浴びたり、帰りがけに暴徒と化したファンに襲われる。野球の主審の罵声は義理の息子ター坊にも飛び火し、クラスメイトから通せんぼされたり冷やかしを受けるが、そんな時にター坊は自分や母親のことを知ってる吉田という男に出会うが、ター坊の実の親である吉田は元妻との復縁を懇願する。主人公・掛川松吉役を渥美清が演じ、他津島恵子、佐藤英夫、高橋とよ、進藤英太郎、近藤和彦、渡辺謙太郎が出演。

・放映日:1966年5月15日
・製作:国際放映、TBS

【スタッフ】
監督:高橋繁男/脚本:光畑碩郎、高岡尚平
【キャスト】
渥美清、津島恵子、佐藤英夫、高橋とよ、進藤英太郎、近藤和彦、渡辺謙太郎


《『渥美清の泣いてたまるか』第三話&第四話考察》

先週「泣いてたまるか」の一話&二話の考を書いたけど、当然1回だけでは終わらせません。せっかくなので、見れる所まで見ていこうかと。このドラマは日本映画史上に燦然と輝くシリーズ映画『男はつらいよ』よりも前、さらにはフジテレビで放映されたテレビドラマ版「男はつらいよ」の直前に作られ、放映していたテレビドラマである。


さて、今回の第三話・第四話だが三話はタクシー運転手、四話はプロ野球の主審といずれも働く渥美清を見ることが出来るが、タクシーの運ちゃんならなんとなくフィットするが、野球の審判は……まぁ、いいのかなぁ?流石に巨人対大洋(現DeNaベイスターズ)で本物の巨人の選手を出すのは無理だったが、大洋から当時のクリンナップの一角の近藤がちゃんと出ていた。

 

そして、三話&四話共に野郎側の再婚エピソードや女性側がバツ一の夫婦で、ともに渥美清が演じる主人公とは血の繋がりがない子供を育てる話になっている。しかも、どちらのエピソードでも子供が半ば捨てられるような形で、渥美清が演じる主人公が健気に育てる展開になっている。一話&二話と比べるとどちらも子供が目立つ話だが、これはこのドラマの放映直前に円谷プロの「ウルトラQ」が放映され、爆発的な人気を博していたから、これに便乗した方向性として子供がキーになる話や、子供目線のエピソードが目に付く。何しろ、「泣いてたまるか」第三話の前の時間にウルトラQ第19話「2020年の挑戦」はケムール人の回で視聴率は28.6%、翌週第20話の「海底原人ラゴン」に至っては34.0%という高視聴率を叩き出す。


当時のテレビの番組編成以外にも、ラーメン1杯120円、ビフテキが300円、トンカツ50円など、当時の物価が分かり味わい深い。さらに独自で調べたが、昭和41年の高卒初任給が男子17,550円、女子16,630円だそうだ。今の10分の1ぐらいだろう。この計算で今を10倍と考えれば、ビフテキ3000円、トンカツ500円ぐらいの感覚だろうか?ん、その計算だとラーメン1杯1200円になっちゃうね…。そんな経済事情でタクシー運転手のおじさんにビフテキをねだる子供、しっかりしているというかヒドいね。


「オールセーフ」では因果な野球の審判の仕事でノイローゼ気味になり、夢でロボットが野球の審判をするシーンが出てくる。ようやく「ウルトラQ」を放映したばかりの頃だから、ロボットというと「鉄人28号」みたいなやつになるけど、当時の大人のドラマにしては頑張った演出と言えるし、やはり「ウルトラQ」の影響と考えられる。
そしてこのロボット審判の発想は昨今考えられている審判にAI導入と発想が近いが、この放映から60年後近くになろうとしている今でも解決してない。未来がまだまだおいついてない。


この2作にはどちらも渥美清が演じる主人公が血の繋がりがない子供の面倒を見るエピソードだが、後の『男はつらいよ』では寅次郎と子供のやり取りはちょっとしかない。せいぜい、満男とのやり取りぐらいだが、考えてみれば寅さんは基本的にテキ屋稼業だからか子供と一緒のシーンは少なく、『菊次郎の夏』みたいなおじさんと子供の長い時間でのやり取りはない。

 

これを考えると「ビフテキ子守唄」と「オールセーフ」は子供とのやり取りが密なおじさんを描いている。第二話で幼稚園の用務員(小使いさんと言ってたが)をやってた時は楽しそうだったし、渥美清と子供の組み合わせの相性は悪くない。むしろ良い。そんな渥美清が見られる2作でもある。


脇役に関しては第三話に集中している。まず、ラーメン屋の女将で超お節介おばさん役に清川虹子が出ている。これまでに何組のカップルの縁を取り持ち、29組カップル成立させている実績の持ち主。縁を取り持つと言うよりは独身のやもめの男や女をくっつけて、そんな個人結婚相談所というか勝手に結婚相談所なおばさんが昔はいたんだな、としみじみ思う。あと写真のみだが千葉五郎の亡くなった妻役には悠木千帆=若き日の樹木希林が。それと中盤に出てくるタクシーに犬だけ乗せて、千葉にあるペットホテルに預ける若いマダム役になんと若き日の黒柳徹子が!若いという以外は黒柳徹子だと分かる。それにしても、ラーメン1杯120円、ビフテキ300円の時代にペットホテルは7000円というのは皮肉が効いている。

ということで、『男はつらいよ』生誕前夜のドラマでありながら、毎回毎回働く渥美清を見るという、『男はつらいよ』で馴染んだ世代には不思議な感覚のドラマである。

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