「フローラとマックス」FLORA and SON
ミュージシャン出身というジョン・カーニー監督の作品には、重い扉を開く「鍵」としていつもポップミュージックが登場します。そして音楽の楽しさ、音楽が紡ぐ絆を感じさせてくれます。登場人物が歌い奏でるオリジナル曲もスゴく良い・・!
みて聴いて胸があつくなる✨ 同監督の2023年作品「フローラとマックス」もまさにそんな作品です。
主な登場人物
●フローラ(イヴ・ヒューソン)
高校を中退し、17歳で息子を出産した。同居の息子、別居中の夫とはケンカばかり。ベビーシッターの仕事はあるが経済的に余裕はない。
●マックス(オレン・キンラン)
仲の悪い両親の間を行き来して育った内気な14歳。盗癖があり、補導歴多数。PCで密かに音楽製作に励む。
●イアン(ジャック・レイナー)
別居するフローラの夫でマックスの父。一度は売れそうになったバンドのベーシスト。別の女性と同居中。
●ジェフ(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)
LAに住むフローラのオンラインギター講師。同じミュージシャンでも、イアンとまったく異なり繊細で思慮深い。
ストーリー
アイルランドのダブリン。ヤンママのフローラは夜のクラブではっちゃけ、息子マックスと住む狭いアパートに男性をお持ち帰りするようなこともある。
息子の誕生日も忘れていたが、ゴミ収集車に積んであったアコースティックギターを持ち帰りプレゼントする。実は、打ち込めそうなものを与えて盗癖を更生させたい、という考えあってのことだった。しかしマックスは「自分をジャマ者にしてきた母からの贈り物など受け取りたくない」といわんばかりに拒否。
ふたりは口汚くののしりあい、フローラは息子に手をあげる。おそらく度々の出来事かのように・・・
息子から嫌われ、別居中の夫イアンからも相手にされず、フローラの憤懣やるかたない気持ちはさらにつのるばかり。
再びゴミ捨て場行きかと思われたギターを手にし、「このままじゃイヤ」と彼女は自らが演奏することを目指し奮起する。そんな折り、ネットでギター講師ジェフとつながる。
LAに暮らす彼とのやりとりはオンラインに限られるものの、これまで知らなかった自分や音楽の力を知る糸口となるものだった。人知れず曲づくりの技術を磨いていたマックスも加わり、想像を超えた化学反応が展開していく・・
共同作業の高揚感
他のカーニー作品と同じく、本作にもひとつの音楽を共同でつくりあげるときの高揚感があふれています。
マックスはPCや機材を駆使して見事なポップミュージックを産みだし、それは思いがけずフローラの耳に届きます。殺伐とした部屋にカラフルな花が咲き出すかのように、音はふたりを包み込み、驚きと楽しさがスパーク。漫然と生きていると思っていた息子が、実はクリエイティブな世界に踏み込んでいたと知り、フローラは「あんたスゴイ!」と手放しで喜びます。そのさまは、息子を愛する母親の姿そのもの。ごく自然な合いの手で彼女もコーラスを入れ、共にステージを踏むラストへの流れがつくられていきます。
オンラインだけのやりとりでフローラとジェフが曲づくりするシーンはとても美しく✨この作品の見どころのひとつです。ふたりはPCのモニターを通して向き合っているはずが、いつのまにかリアルに向き合いセッションする画に・・・
「真ん中で会うのがいいかも
名も無い小さな街で
そこで少しでも時間があれば
それを家と呼べるかも・・・」
まだ実際にあったことがないふたりなので淡い恋ですが、物理的な距離がひととき吹き飛んでしまうようなファンタジックなラブソング。曲づくりのワクワク感を超えたトキメキ✨が胸に迫ります。
フローラ役のイヴ・ヒューソン、ジェフ役のジョセフ・ゴードン=レヴィット、ともに優しい歌声で耳に心地良いです✨
フローラにシンパシー
クラブではっちゃけないしヘソ出しファッションもしない、年齢的にもフローラよりずっと年上の私ですが、とてもストレートな彼女の気持ちは手に取るように「わかる!」伝わってきます。ちなみに息子が14歳なのも一緒・・ただ、年頃の息子がいるいないに関わらず、彼女の焦燥感やさみしさ、いらだち、怒り・・様々な感情は、多くの人が共感できるものと感じます。なぜなら、彼女は「母」であるだけでなく「女」でもありたいし、漠然とでも「今とは違う自分」になりたい、と望む人物だから・・
そして初心者でギターにチャレンジしたり、惚れっぽい恋愛体質だったり・・とてもイキイキした一面は彼女の大きな魅力です。息子から「クソババア」、夫から「魔女」とディスられてもめげない。口も悪くキレやすいけど憎めないキャラなんです。
大団円のライブシーンで演奏される「High Life」の歌詞には、彼女の飾らない気持ちが綴られ、グサグサ刺さるものがありすぎて思わず涙💦
「・・・私は嫌な女 君のクソババア
君には私しかいない
私は君の人生を 生きてるんじゃない
君は私の人生を生きてない
私たちにはこれしかない
でも挑戦を諦めない
豊かに生きるため
私たちの豊かな人生を
これが幸せな生活
生きてると感じる
これはラブソング
謝ってないよ
たまに君が嫌いになる
自分を見てるみたい」
とフローラが歌うと、マックスはラップで呼応します。
「僕らは似たもの同士 同じ喪失感・・・
でも拳を上げて 人生を笑い飛ばし
タフで毒舌 豊かに生きてる」
彼のリリックにも母への不動の愛があり、やっぱり涙があふれます。ここまでの道のりは長かったろうし、お互いボロボロになることもあった・・・でもこんな親子はスゴく素敵です。
本作は今のところAppleTVで配信されているのみ。Black CherryはDVD化を切望しております。
ちなみに本作未見で「みたいな~」と思っていた時分、シネマニストかこさんが書かれた投稿により、私はDiscover usのサイトを知りました。かこさんには感謝いっぱい✨
そのようなわけでも心に残る一本です。
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示ほとんどの音楽映画は当たりが圧倒的多い。これもその一つに思われます。近々観ます!
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示記事待ってました〜😍
Black Cherryさんの記事を読んで改めて良作だったなぁ、と感動が蘇ってきました😄この親子関係、お互いのダメなところを見て、似た物同士と理解したうえで再構築されたので絆は強かった😭✨
同じく私も「High Life」の歌詞が心に刺さって泣きました😭✨ぜひ円盤化して欲しいですね!
Black Cherryさんがネットで私の記事を発見してくれて、Discover usに入会してくれたことが本当に嬉しい😍❤️
私が記事を執筆している理由がまさにそれなんです🤩
知り合い同士のインスタの映画アカウントでもなく、Discover us内でもなく、全く違うキッカケでこのサイトに辿り着いて欲しい、その思いだけで執筆していました!だから私こそ感謝しなければ😭
こんな私ですが、これからもよろしくお願いします😊
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示こんにちは~。私も本作はかこさんの記事で知り見ました。
大好きな監督さんの作品なので、期待値マックスでしたけど、期待通りの秀作でしたね。
大好きな作品がまた一つ増えました。ほんと、DVD化してもらいたいです!
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示