【鬱・トラウマ・絶望映画マニア】『スノーピアサー』
■スノーピアサー

《作品データ》
『グエムル -漢江の怪物-』や『母なる証明』の韓国の鬼才ポン・ジュノ監督がハリウッドに挑戦した近未来SF大作!! 氷河期が訪れた近未来の地球で、人類が生き残る列車「スノーピアサー」で最後尾の被支配者階級達から先頭列の支配者階級に対して反乱が起きる。『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンス、韓国の実力派トップスターのソン・ガンホ他、ティルダ・スウィントン、ジェイミー・ベル、ジョン・ハート、エド・ハリスなどハリウッドの豪華な実力派・ベテランのキャストが勢揃い!
・2月7日(金)より、TOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国ロードショー 【PG12】
・公式HP:http://www.snowpiercer.jp/index01.html
《『スノーピアサー』レビュー》
『悪魔を見た』のキム・ジウン監督が『ラストスタンド』で、『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク監督が『イノセント・ガーデン』でそれぞれハリウッド監督デビューを果たし、今回は『グエムル -漢江の怪物-』や『母なる証明』の韓国の鬼才ポン・ジュノ監督がハリウッド大作に挑戦! どんな作品ができるかと思ったら、
これまでのポン・ジュノの監督作品まったく違ったSF大作で、アクションの痛快さとSFの古典にも通じる秀作である!!

未来の地球で、氷河期の状態で「スノー・ピアサー」なる列車内だけが人類が生き残る唯一の術という世界観で貧民層が上流階級に反乱を起こす、という展開。氷の世界で走る列車は形を変えた「ノアの箱舟」。さらに、その最後尾が貧民層で、先頭に行けば行くほど上流階級になり、先頭車両の一番先端の部屋が支配者の部屋となっている。この列車内の構造はまさしく1920年代のドイツ表現主義時代のフリッツ・ラングの傑作『メトロポリス』を踏襲したもの。最後尾の人々の点呼のシーンなど、『メトロポリス』の労働者が群れをなしているシーンにそっくり。つまり、「ノアの箱舟」でありながら走る『メトロポリス』でもある。

その貧民層の人々が反乱を起こし、列車の先頭車両に近づいていくが、車両が変わるたびにまるで違うステージが出て来て、横スクロールの『死亡遊戯』といった感じでもあるし、列車内のアクションやらパニックは『カサンドラ・クロス』的とも言える。特にティルダ・スウィントンが出てくる車両のシーンは一番人を喰った演出だ。

最初の内はポン・ジュノ監督作品とは思いにくく馴染むのに少々時間がかかったが、あらゆる仕掛けとSFの古典へのオーバーラップでしっかりとしたSF大作に仕上がっている。この2月の寒い時期にこの映画を見ることに体感的にもこの映画の世界観にドリフトするというのも面白いであろう。
寒さを感じつつも、アクションや様々な演出はキムチチゲ鍋のようなホットなSF大作だ!!

