「マイ・プライベート・アイダホ」My Own Private Idaho
今月のお題:ハロウィン映画とのことで、ハロウィンを描いた作品ではないのですが「マイ・プライベート・アイダホ(ガス・ヴァン・サント監督、1991年作品)」をとりあげてみます。
この作品の2年後、1993年10月31日に主演のリヴァー・フェニックスは亡くなられました。奇しくもハロウィンはご命日ですので、夭逝の美しき天才俳優を偲ぶ作品としてご紹介したいと思います。
主な登場人物
●マイク・ウォーターズ(リヴァー・フェニックス)
寄る辺ない男娼の青年。廃墟のような建物で暮らしている。ナルコレプシー(突如眠気に襲われる病気)の持病があり、突然路上で寝てしまうこともある。スコットに恋心を抱く。
●スコット・フェイヴァー(キアヌ・リーブス)
市長である父親と反目し、家出して気の合うマイクやその仲間たちとつるんでいる。いわゆる放蕩息子。
●ボブ・ピジョン(ウィリアム・リチャート)
路上生活者のリーダー的存在。マイクやスコットの父親分でもある。
●カルミラ(キアラ・カゼッリ)
マイクとスコットが旅先で出会う女性。スコットと恋に落ちる。
シェイクスピアの戯曲をもとにしたストーリー
本作はシェイクスピアの戯曲「ヘンリー4世」などをベースに、舞台を現代(といっても映画が作られた当時、1980年代後半~90年くらいでしょうか)の米オレゴン州ポートランドなどにしたドラマです。スコット(キアヌ・リーヴス)と市長であるその父親(トム・トゥループ)との確執や、不良たちのボスであるボブ(ウィリアム・チャート)との愛憎劇など、所どころ戯曲風のやりとりを感じさせるシーンもあり。偉大な劇作家の古典をまったく新しい世界に昇華させた作品となっています。
惹きつけられる✨ リヴァー・フェニックス
本作のリヴァー・フェニックスは、男娼という役柄でありながらとてもイノセンティック・・という表裏一体の人物・マイクを見事に演じています。マイクはつまり不思議感を醸したキャラでもあります。エキセントリックな美少年はリヴァー・フェニックスにまさにピッタリですね・・!
キアヌ・リーブスも素敵ですが、本作をみているとやはりリヴァーを目で追ってしまいます。
ロードムービー的な要素も
マイクはスコットとともに、ポートランドから母親探しの旅に出ます。スコットを愛するマイクにとって、胸躍る出発だったことでしょう。道中、焚き火を前にボソボソと告白するシーンは、切なさMaxの名シーンです。
しかし旅を経て彼らの関係は変化します。スコットは旅先で出会ったカルミラ(キアラ・カゼッリ)と結ばれ、帰国後マイクと決別。マイクが久しぶりに会ったスコットは、すっかり良家の子息然とし見違える姿となっていました。仲間うちで慕われていたボブも絶命し、もはや失うものはなにもなくなったマイクはどこへ向かうのでしょうか・・
観る側の胸には哀愁が迫るものの、あくまでもマイクはエキセントリック。まるで他人事のように、自分の人生をとらえるような彼の眼差しはとても印象的です。
ちなみに今年のハロウィン🎃わたくしBlack Cherryは、本作と「愛と呼ばれるもの(ピーター・ボグダノヴィッチ監督、1993年作品)」を鑑賞する予定です。