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趣味は洋画
2025/08/30 18:29

あまりに純真無垢なジェルソミーナ

ジュリエッタ・マシーナの演技は観客を魅了する。

丸くて、えくぼがある顔、大きな生き生きとした目、彼女はどこを見ているのだろう。

 

「道」 (1954年・イタリア、モノクロ、104分)

                 監督:フェデリコ・フェリーニ

 

旅回りの大道芸人と一人の女を主人公に、人生の哀歌を描き出す感動作。

怪力を売り物にしている粗野な大道芸人ザンパノ(アンソニー・クイン)は、純粋無垢で少し頭の弱い娘ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)を伴い、旅から旅への暮らしを送っている。ある時、ジェルソミーナはサーカスで出会ったイル・マットと呼ばれる陽気な青年(リチャード・ベイスハート)から慰めを受ける。彼が弾くバイオリンの哀しいメロディに引き付けられるのだ。だが、イル・マットを嫌うザンパノは彼をはずみで殺してしまい、泣いてばかりのジェルソミーナも捨ててしまう。数年後、老いたザンパノは、彼女がよく口ずさんでいた曲を耳にするのだが...。

 

フェデリコ・フェリーニ監督が世界にその名を知らしめた記念碑的作品であり、ザンパノとジェルソミーナの旅の生活を通して、人間のエゴと魂の救済が見事に描かれている。

そしてニーノ・ロータ物悲しい主題曲は広く愛され、本作のなかで重要なモチーフとなっている。

ジェルソミーナは最初ラッパも吹けず、ザンパノの野蛮さに怯えるばかりで、一向に役に立たない。それでも夫婦らしき関係が落ち着いていくと、懸命に芸をして客を喜ばせるようになる。
だが、ザンパノはよその女性に手を出したりと、勝手なことばかり繰り返す。ザンパノがジェルソミーナの大切さに気付くのは、ラストシーンに入ってからだ。

真実の愛に気づき、慟哭するザンパノの姿が印象的である。

 

フェリーニ監督は、妻であるジュリエッタ・マシーナのためにこの映画を着想したという。

イタリア映画界きってのおしどり夫婦と言われた所以だ。

本作は彼女が33歳のときの作品で、後に「崖」(55年)、「カビリアの夜」(57年)、「魂のジュリエッタ」(65年)などでも、 ‘独特の可愛さをもった女性’ を演じている。
夫のフェリーニ監督が亡くなってから5ヶ月後、彼女も73歳の生涯を閉じている。

アカデミー賞・最優秀外国語映画賞、ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞。
 

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