
【ネタバレあり】”あの童話”の変化球と、母性本能が生まれる台詞に涙『野生の島のロズ』

ロボット映画に弱い私が、2月7日公開日当日に映画『野生の島のロズ』を早速鑑賞させていただきました。ロボット映画の予想出来てしまう展開を、様々な角度から見事に涙腺を刺激され、一度の映画で2回泣くほど。圧倒的な情景描写の美しさから始まり、個性や生き方、鳥肌を奮い立たせる曲センスまで、是非劇場で体験して欲しい。
目次
誰もが知っている”あの”物語に通ずる
母性本能が表れ始める台詞と情景描写の緻密さ
シーンの紐づけが多数続出する巧妙な仕掛け
■作品概要
『シュレック』『ボス・べイビー』をはじめ数々の傑作アニメーションで世界中に笑いと涙を届けてきたドリームワークス・アニメーションが、記念すべき30周年に贈る、驚くべき感動に満ちた奇跡のアドベンチャー『野生の島のロズ』。2024年9月27日に3962館で全米公開され、週末3日間のオープニング成績は3500万ドルと予想を上回り、初登場第1位を記録。これは9月に公開されたアニメーション映画としては歴代3番目に高いオープニング興収となった。CinemaScoreではAを獲得し、Rotten Tomatoesでは98%と高評価で2020年代に公開されたアニメーション映画として最高のスコアとなっている。全世界でも43ケ国で初登場1位、世界興収合計2億ドルを超える成績をあげており(11月11日現在)、その成績、評価、評判から2025年アカデミー賞®の本命との呼び声もあがってきている。
■あらすじ
無人島に漂着した最新型アシスト・ロボットのロズは、キツネのチャッカリとオポッサムのピンクシッポの協力のもと、雁のひな鳥キラリを育てるうち、心が芽生えはじめる。ロズの優しさに触れ、怪物として彼女を拒絶していた動物たちも、次第に島の“家族”として受け入れていく。いつしか島はロズにとっての“家”となっていくのだった。渡り鳥として巣立っていくキラリを見送り、動物たちと共に厳しい冬を越えた頃、回収ロボットが彼女を探しにやってくる。果たして、築いてきた動物たちとの絆から引き裂かれようとするロズの運命は!?島の存亡をかけたロズと動物たちの戦いが、いま始まろうとしていた──。
▼以下、ネタバレを含みます▼
誰もが知っている”あの”物語に通ずる

雁のひな鳥キラリを育てるキッカケとなったのは、ロズの不可抗力で家族を亡くしてしまった使命感が発端ではあったが、そこから始まる物語は誰もが知る童話と通ずるところがある。物語の内容や結論まで知っているであろう「みにくいアヒルの子」である。
童話はビジュアルが仲間と異なることで、仲間外れやいじめが起きるが、成長することで実の姿に気が付くという物語。しかしこの作品は前談は同じでもその後の進み方が違う。アシストロボットの「ミッション」と支えのおかげで、童話では落ち込むはずだった流れが”アシスト”されることで、努力をしながら自分の可能性を信じて強く生まれ変わる。

ここで従来のロボットのあるべき姿”無機物”感があると、愛着や母性のようなものが生まれづらくなるがロズは少し違う。単に動物の真似をするだけだった能力が、長年の学習期間を経て、動物と少しカジュアルに対話できるロボットにプログラムが更新されているのだ。さらに、学習プログラムに加え”心”で感じ取ることができたため、キラリを育てる際にも”信じる心”や”母性本能”も次第に生まれてくるのも必然に感じる。
母性本能が表れ始める台詞と情景描写の緻密さ

この映画を観て、涙する箇所は何か所も存在するが、私は”台詞”に最も感銘を受けた。おそらく気がつかない人もいるぐらい、サラッと聞き流してしまうほどの一言。「息ko、あ...」というシーンである。これは本当に一瞬で涙が流れた台詞だ。ハッキリと断言しない点が、ロズの無意識の部分で変化している証拠で自分でも若干言葉を濁している。そのぐらい愛情が芽生えて、自分の子どもとしてロボットが認識し始めている瞬間に、僕は大泣きした。もうこれを書き綴りながらも涙を浮かべているほどだ。

そして、なんと言っても”自然描写”の美しさを語らずしては終われない。IMAXなどでの映像美という問題ではなく、そもそもの絵のタッチに立体感のある描き方で、色使いの巧みさにより上手く表現されていることが分かる。本文トップに掲載した画像は蝶80,000万羽を描いて、あの美しさを表現したとのこと。ロボットは武骨でパキッとした形状をしているため、その他の自然や動物の違いが分かりやすく見える。そして、ロズが自然や生き物と調和していくにつれて、少しずつ武骨で無機物の雰囲気も消えていくところもまた味が出るところだ。
公式によれば、ひとコマずつ手描きされた背景画は269点、無人島の大自然に生きる多様な動物たちは47種類、海を渡る雁の大群は28,710羽、羽の総数は1億本とのこと。
シーンの紐づけが多数続出する巧妙な仕掛け

最後に、個人的に感心させられた見所が”シーンの紐づけ”だ。伏線回収などはもちろん多く存在するが前半で触れた出来事が見事に後半に活かされている部分が多々あることに気が付く。
■動物の動き方を真似るシーン
島に漂流した時から動物の動きを真似していたが、回収ロボットに襲撃されるシーンは走り方がクマの四足歩行に。
■サンダーボルト(ワシ)の飛行
問題なく飛行訓練できていたが、最後は飛行のプロであるワシから指導を受ける。その甲斐もあって、ロズを回収した飛行船の窓を突き破る直角の滑空を披露する。
■ビーバーの無駄な切り崩し
同じことを繰り返すだけのビーバーは大きくて太い木を前半で削り続けていたが、後半では山火事の沈下をするための倒木として伏線回収された。
■緊急時の手
キラリが水泳訓練した際に魚に食べられそうになるが、ロズの手だけが飛んで助けに行くシーンがある。そのシーンはユニバーサル・ダイナミクス社の回収ロボットヴォントラに反抗した際にも使う最終手段。
■キラリとロズのフラッシュバック
心が通じ合った幼いころのキラリとの思い出は、後半でも離れ離れになった際にふと思い出すシーンでフラッシュバックする
■チャッカリの語り
キラリが幼いころ、怖がって寝付けない時にお話をしながら語っているシーンは、ロズがいなくなったあとのロズとの思い出を語る役割を担う。
一度観た限りではあるが、これほどのシーンとの繋がりがあることで作品への親和性を感じることができるようにも思う。改めてアカデミー賞ノミネート作品に選ばれている本作は、長編アニメーション賞を獲得して欲しい。

■出演
ロズ:ルピタ・ニョンゴ
チャッカリ:ペドロ・パスカル
ピンクシッポ:キャサリン・オハラ
クビナガ:ビル・ナイ
キラリ:キット・コナー
ヴォントラ:ステファニー・スー
ソーン:マーク・ハミル
パドラー:マット・ベリー
サンダーボルト:ビング・レイムス
ロズ(日本語吹き替え):綾瀬はるか
チャッカリ(日本語吹き替え):柄本佑
キラリ(日本語吹き替え):鈴木福
ピンクシッポ(日本語吹き替え):いとうまい子
クビナガ(日本語吹き替え):千葉繁
ヴォントラ(日本語吹き替え):種﨑敦美
パドラー(日本語吹き替え):山本高広
サンダーボルト(日本語吹き替え):滝知史
ソーン(日本語吹き替え):田中美央
赤ちゃんキラリ(日本語吹き替え):濱﨑司
(日本語吹き替え):近藤春菜
(日本語吹き替え):箕輪はるか
■スタッフ
監督:クリス・サンダース
製作:ジェフ・ハーマン
製作総指揮:ディーン・デュボア
原作:ピーター・ブラウン
脚本:クリス・サンダース
音楽:クリス・バワーズ
主題歌:マレン・モリス
配給:東宝東和、ギャガ
予告編
2025年2月7日(金) にて全国公開
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示メンションありがとうございます♪
(おそらく)無意識に発した「息子」というセリフは僕もグッときました🥹
身体が何度でもロズに会いたがっています笑
そういえばステッカー買いました!
QRを読み取ると……