【性的同意】未成年の「イエス」について考える
"人々の間で性的暴行に対する理解や認識に大きな違いがあるということ
(中略)
作品を通して性的同意や性的暴行にまつわる会話をオープンにしたかった"
モリー・マニング・ウォーカー監督(BBCでのインタビューより)
先日、オンライン試写にて、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞作『HOW TO HAVE SEX』をひと足先に鑑賞させていただきました
少し過激なタイトルとは裏腹に、映倫区分はR指定ではなくPG12
若い世代をはじめ、思春期を越えた全ての大人に向けて、改めて注目されるべき視点を、身近なタッチで鋭く問題提起した作品でした。
今回は、音楽の爆音とともにはじける青春を謳歌した少女の、心と思考の変化を鮮やかに描くとともに、加害者被害者の判別が極めて難しい性的同意の認識の違いについて切り込んだ映画『HOW TO HAVE SEX』をご紹介します
第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞作
『HOW TO HAVE SEX』
2024年7月19日公開 91分
原題:HOW TO HAVE SEX
監督・脚本:モリー・マニング・ウォーカー
製作国:イギリス・ギリシャ合作
音楽:ジェームズ・ジェイコブ
キャスト:ミア・マッケンナ=ブルース
ララ・ピーク
エンヴァ・ルイス 他
旅の目的は、最高に楽しむ、そして“ヴァージン”を捨てること
卒業旅行としてギリシャ・クレタ島のリゾート地、マリアを訪れた16歳の主人公タラと、彼女の親友であるスカイとエム。
酒、酒、たばこ、酒、爆音、酒。
年を二つごまかし、露出の多いドレスに、いつもより濃いメイクできめた3人は毎日パーティー三昧で存分にひと夏を満喫していた。
そんな中、主人公タラだけは、この旅行でもう一つ最大の目的があった。
それは、ヴァージンを捨てること。
3人の中で自分だけ未経験なことを気にしていた彼女はこの旅で絶対素敵な夜を過ごす、と期待いっぱいに、意気込んでいたのだった
「一緒にパーティーへ行こうよ」
そんな彼女に、隣のバルコニーにいた男性から声がかかり
男性の友人たちも合流して、ネオン輝くステージへ
今夜、きっと最高の夜を迎えるんだ。
そう思っていたタラだったが、期待とは程遠い灰色の景色が彼女を待ち受けていた
🐈ここミロポイント🐾
この作品で、タラが一線を越える時に発する「イエス」(yep)という言葉に対して
共感するのか、それとも理解不能な見解を示すのか
本作のモリー・マニング・ウォーカー監督が、BBCのインタビューにて、「私の考えでは、女性は誰しも性的暴行の被害者になったことがあると思う。一方、すべての男性が性的暴行の被害者、もしくは加害者になったことを自覚しているわけではない。(中略)作品を通して性的同意や性的暴行にまつわる会話をオープンにしたかったし、何より男性を会話から締め出さないことが重要だった」と語られていました
当事者同士の、性的暴行に対する理解や認識の違いはどの世代、時代にも常に存在し、正解を導き出すことが非常に難しいトピックだからこそ、この映画を観た一人一人が、彼女の「イエス」や、その時のシチュエーションに対して、それぞれ"考える時間を持つこと"がとても重要な作品だという印象を受けました
"ヴァージンを卒業する"という目的を達成したものの、後から襲ってきたのは「充実感」ではなく思いがけない「喪失感」や「混乱」
こういった複雑な心境が、タラの体全体にあふれ出たオーラからまざまざと生々しく伝わってきました
彼女の行動に対して「自業自得だ」と受け取る意見も多数出てくると思います
ちなみに私も、どちらかといえば、そちら寄りの考えを持ちました
しかしながら、タラに対して全く共感がないわけでもなく、「彼女は被害者だ」という意見に関しては、否定は決してできないとも同時に感じました
令和5年7月13日より、日本での性的同意年齢が16歳に引き上げられたことからも
個々の「イエス」に対する責任と認識、そして受け取る側のその場の状況も含めた見極めについて改めて考え直す必要性が強調されているように思います
“(We have to think about) HOW TO HAVE SEX”
「私たちはセックスの向き合い方について考えるべきだ」(意訳)
タイトルをこのようにも解釈できる作品だと感じました
『HOW TO HAVE SEX』
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7 月 19 日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋、
シネマート新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
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©BALLOONHEAVEN, CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION,
THE BRITISH FILM INSTITUTE 2023
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
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ミロシネマ🐾