雨の中の慾情〜最速レビュー〜
11月29日公開予定の映画『雨の中の慾情』を、一足お先に鑑賞しました。
第37回東京国際映画祭コンペティション部門公式出品作品。
日本と台湾の合作で、数奇なラブストーリーが描かれている今作。
少し昔の時代であろう田舎まち。
土砂降りの中激しく絡み合う、男女の奇妙な夢から覚めた漫画家の義男(成田凌)。
大家(竹中直人)から誘われて、小説家志望の伊守(森田剛)と3人で、美しい未亡人・福子(中村映里子)の引っ越しを手伝いに行き…
あの、『岬の兄妹』を撮った片山慎三監督の最新作と聞き、今度はどんな世界を見せてくれるのだろうかと、個人的にとても期待していた今作。
どこか不気味なほど、不思議な展開が続いていく物語前半。
時に美しく、時に荒々しい情景の中で、登場人物それぞれの欲望がむき出しになっていく。
エロスと不思議の無限連鎖。
男女間の欲情も、普段の生活の中に秘める企みも、文字通りの体当たりな演出で余す所なく描かれ、見ている方も物語の世界にどんどん引き込まれていく展開。
ラブストーリーと一括りにするのは勿体ない力作。
スリラーのような不気味さに息を呑み、激しいアクションに魅了され、時々ふいに訪れるコメディ的な展開にクスッと笑える。
1つのお話の中に、本当に色々な面が詰まっている、まさに究極のヒューマンドラマ。
そして、物語後半で種明かしされた瞬間、思わず息を呑んだ。
この不思議な展開は一体何なのだろうか、という違和感が一気に解消されたかと思えば、そこから息づく間もなく、また別の1つの作品として成立してしまいそうなほど、濃い場面の連続。
登場人物1人1人の存在意義も、その人たちから広がった前半の物語展開の1つ1つも、すべての意味がここで一気にはっきりと分かる。
こんなにもぞくぞくと衝撃を受け続けた作品は、いつぶりだろうか。。。
登場人物たちの欲望のままにコロコロと展開し続けていたこの物語が、実はとても緻密で繊細なものであり、深いテーマを秘めていたことに気づかされた。
久しぶりに消化しきれない、言いようのない感情を抱えたまま、試写室を出た。
帰宅してからも映画の映像が蘇るほど、1つ1つの場面が脳裏にこびりついたのは、本当に久しぶりだった。
1人で見て、悶々と考えるもよし。誰かと一緒に見て、あれこれ語り合うもよし。
1度は映画館で見て、この不思議で強烈な世界にどっぷり浸ってほしい作品。
11月29日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
◆◇◆作品情報◇◆◇
2024年日台合作映画
上映時間:132分
原作:つげ義春
出演者:成田凌
中村映里子
森田剛
竹中直人 他
監督・脚本:片山慎三
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