ぼんやりした堂本剛が迷い込んだ丸ワールドの世にも奇妙な物語と周辺人物らに感じられた荻上直子ワールド『まる』
■まる
《作品データ》
『かもめ食堂』、『めがね』を手掛けた荻上直子監督の最新作は堂本剛主演の不思議なコメディ&ヒューマンドラマ。人気現代美術家の秋元洋治のアシスタントとして働いていた沢田は、ある雨の日に自転車の運転中に転倒し右腕を骨折し、秋元のアシスタントをクビにされる。近所のコンビニで働きながら、アパートの自室で「丸」を大きな紙に描き、アートとして古道具屋に売りつけると、沢田の「丸」のアートが思わぬ反響を呼ぶことに。沢田役を堂本剛が演じ、他に綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、おいでやす小田、濱田マリ、柄本明、早乙女太一、片桐はいり、吉田鋼太郎、
小林聡美が出演。
・2024年10月18日(金)より、TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー!
・上映時間:117分
・配給:アスミック・エース
【スタッフ】
監督・脚本:荻上直子
【キャスト】
堂本剛、綾野剛、吉岡里帆、森崎ウィン、戸塚純貴、おいでやす小田、濱田マリ、柄本明、早乙女太一、片桐はいり、吉田鋼太郎、
小林聡美
公式HP:https://maru.asmik-ace.co.jp/
〈『まる』レビュー〉
前作の『波紋』と前々作の『川っぺりムコリッタ』は死生観を交えた意味深なヒューマンドラマで手応えがあった荻上直子監督の最新作で、堂本剛が主演の『まる』。要するに堂本剛が迷い込んだ世にも奇妙な物語の世界観と周辺の人物との関わりを見る作品だけど、堂本剛が演じる主人公のぼんやりした感じがそのまま映画の手応えに繋がり実にぼんやりとしてたが、小林聡美をはじめ、片桐はいりや吉田鋼太郎、森崎ウィン、濱田マリ、柄本明といった名優が演じる周辺人物には荻上直子ワールドが感じられるという映画だった。
現代美術家のアシスタントをクビになりフリーターになった沢田が何となく描いた「丸」が世間で思わぬ評価をされて、周囲の取り巻く環境が変わっていくという話。ストーリーのラインは筒井康隆の短編小説「俺に関する噂」のような感じの奇妙な世界の騒動によるコメディ。設定からして面白そうだから普通にやればミニシアターの佳作以上の作品に仕上がりそうだったが、ひたすらぼんやりした堂本剛と変なテンションで騒ぐ綾野剛のせいで作品全体がぼんやりした感じになってしまった。
これ、いつもみたいに小林聡美や市川実日子、ムロツヨシ、片桐はいりあたりが主人公、もしくは主人公の隣にいるキャラを演じていればかなり違ったはず。これらはしっかりとしたツッコミ、言動が出来るキャラを演じることが多く、彼ら・彼女らのおかげでストーリーにめりはりやテンポがついたが、堂本剛がひたすらぼんやりした主人公を演じたおかげでトロいテンポの作品になってしまったり、起こっている現象に対して見ているこっちまでぼんやりとしたものに感じてしまう。加えて、変なテンションのキャラを演じる綾野剛が空回りし過ぎて、沢田に色々絡むが滑りまくっている。
こうしたのっぺりとしたメインキャラの二人を小林聡美や片桐はいりや吉田鋼太郎、森崎ウィン、濱田マリ、柄本明らがどうにか荻上直子の映画の世界っぽい所に引き込む。彼らのおかげでどうにか見れる映画ではあるけど、それでも堂本剛がぼんやりし過ぎて、もう一つ盛り上がりに欠ける。
堂本剛が久しぶりの映画出演となったが、彼の特有のキャラクターに馴染めないと手応えが今ひとつになる。その堂本剛の独特さと荻上直子監督ワールドのミスマッチコラボを楽しむ作品かな、これは。