サッカーのパス回しのような会話の応酬が見られる令和の恋愛群像劇『違う惑星の変な恋人』
〈『違う惑星の変な恋人』レビュー〉
新宿武蔵野館で同作品の予告編を見た時は、新進気鋭の監督による群像ラブコメかな、と心に留めて見てみた木村聡志監督・脚本・編集作品『違う惑星の変な恋人』。
オープニングシーンから美術、ファッション、色彩感覚、さらには会話や各キャストの表情・間合いがずば抜けていい映画で、
終始圧倒されっ放しだった!
メインキャラは美容室で働くむっちゃんとグリコ、音楽事務所で働くベンジーとボウリング好きのグリコの元カレのモーによる交わらない四角関係の恋愛群像劇。これにベンジーの仕事からシンガーソングライター兼モデルのナカヤマシューコも加わるが、五角関係と言うよりは四角関係プラス1というのが的確。
メインキャスト4人の内むっちゃんとモーがやや発達障害のような会話をしているかと思うと、この二人になると急にスラスラと会話出来たり、誰と誰の組み合わせで会話の雰囲気、表情、態度までガラリと変わる群像劇。この四角関係の中で仕事仲間同士や大学時代の先輩・後輩、意中ではないがアドバイスを送る同士などあらゆるシチュエーションの会話劇を重ねる。木村聡志監督がどこまで意識しているかはわからないが、そのそれぞれのシチュエーションでの各キャラの心境の変わり様はロマン・ポランスキー監督の『水の中のナイフ』や『おとなのけんか』の応用でもあるかのようで、各演者の間合い、空気も絶妙。
さらにこの中では若干年上のベンジーによる野球やサッカー、アニメの例え話がアラフィフの筆者にはかなりツボで、それが20代の女性相手だと空回りになる様子もリアルさがある。
終盤のスポーツバーで4人が一堂に介するシーンはサッカーのパス回しのような会話の応酬で、脚本力の高さが最も発揮出来ている。
この作品を見た後に慌てて前作『階段の先には踊り場がある』を見たが、20代5、6人による会話劇・恋愛群像劇そのものは変わらないが、今回の『違う惑星の変な恋人』が前作よりも会話のレベル、キャストの間の取り方や表情のみの演技、美術、ファッション、色彩感覚などあらゆる面で覚醒的にレベルアップしたことが分かった。
10年に1本とまでは言わないが、