【ネタバレ感想】映画『関心領域』が私たちに問うこと


【関心領域】
2024年5月24日/106分/ドラマ・戦争/🇺🇸🇬🇧🇵🇱
製作年:2023年
原題:The Zone of Interest
受賞記録:2023年 アカデミー賞 国際長編映画賞、2023年 カンヌ国際映画祭 グランプリ、2023年LA批評家協会賞 作品賞
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解説・ストーリー 「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」のジョナサン・グレイザー監督がマーティン・エイミスの小説を映画化し、カンヌ国際映画祭グランプリやアカデミー賞国際長編映画賞&音響賞のW受賞をはじめ数々の映画賞に輝いた異色のホロコースト・ドラマ。悪名高きアウシュヴィッツ収容所と壁ひとつ隔てた隣に暮らす一組の家族を主人公に、その穏やかで幸せな日常を淡々と描きつつ、かすかに漏れ聞こえてくる音や家族の会話などから、収容所のおぞましい実態と、そのことに無関心で優雅な暮らしを謳歌していく家族の実像を鮮烈に浮かび上がらせていく。出演は「ヒトラ一暗殺、13分の誤算」のクリスティアン・フリーデルと「落下の解剖学」のサンドラ・ヒュラー。(TSUTAYA DISCUS) |
《STAFF》
監督:ジョナサン・グレイザー
音楽:ミカ・レヴィ
プロデューサー:Daniel Battsek、オリー・マッデン、ダニー・コーエン【製作]、テッサ・ロス、デヴィッド・キンバンギ、レノ・アントニアデス、レン・ブラヴァトニック
脚本:ジョナサン・グレイザー
《CAST》
クリスティアン・フリーデル(ルドルフ・ヘス)
サンドラ・ヒュラー(ヘートヴィヒ・ヘス)
💃🏻熟女が考える本作の見どころ💃🏻
この映画には一切、残酷な描与は出てこないにもかかわらず、常に不穏な音が私たちの意識下にそこ知れぬ恐怖を植えつけていきます。2種類の音の共鳴と日常会話の違和感、暗黒やモノクロでの表現方法は、言葉を失うほどの衝撃です!
冒頭、不穏な音楽がかかり、題名の『THE ZONE OFINTEREST』の文字が浮かび上がる。
※『THE ZONE OF INTEREST』とは、直訳するとそのまま“関心領域”だが、ドイツ語では「Interessengebiet」で、これは第二次世界大戦中にアウシュヴィッツ強制収容所で働<ナチスの人々が暮らすために設けられた、収容所周辺40平方キロメートルのエリアを指す。
そして、その後に画面が真っ暗になり、不穏な音楽と共に何かの音が聞こえてくる。それは、人の話し声のようにも聞こえるし、苦しんでいる呻き声のようにも聞こえる。その状態が2分近くも続いて、最初はファイヤーTVの不具合かと思った。
しかし、ポチャッという水の音がした途端、小鳥のさえずりや楽しそうな子どもの声に変わっていき、画面が明るくなって、家族で川遊びをするような場面が映し出された。
そこから家族みんなで楽しく過ごしている様子をカメラが追っていくシーンが続く。子煩悩で優しい父親と大泣きする赤ちゃんをおおらかに育てる母親。元気いっぱいの可愛い子ども達。裕福で幸せそうな様子を、ただただ呆気に取られて見ていた。

さっきまでの、あの暗黒の2分間は何だったのだろう...。
収容所の中の音なのかもとは思ったけど、ハッキリはわからない。あの真っ暗な画面は何を表現したかったんだろう。
音を聞いて想像しろということなのか、まさかガス室の中!?
不穏な想像をしながら、裕福で幸せそうな家族の日常を眺める。変な感覚だ。
だけど、幸せそうな家族の日常に少しずつ違和感が増してきて、会話の内容や子ども達の行動、使用人の格差などに、ああ、そういうことか!とその異常性にハッと気づかされることになる。
一番の異常さは、子ども達がお庭で元気に遊んでいる楽しい音や声と塀の外側の不穏な音や声が共鳴していることだ。
こんな騒がしいところで、のんびりお花に触れる母子の姿や、子どもが元気に遊んでいる背景に煙が上がる様子を見て、絶句してしまった。
思えば、一日中ギャンギャン泣き続ける赤ちゃん、夜眠れなくて徘徊する次女、粗暴で謎の音を口真似する次男、外に向かって吠えまくる犬。みんな知らず知らずのうちに心身に影響を受けている。
特に長男は、囚人を見ても平静で、見つけた歯をじっくり観察したり、次男をビニールハウスに閉じ込めたりする辺り、隣で何が行われているのか完全に理解している。
次男が理不尽な仕打ちに泣き叫ぶ姿には、ガス室に閉じ込められた人達の思いが表現されているように感じた。
よくもまあ、こんなところで愛する子ども達を育てようと思ったな…とまた絶句。
そこには、彼らに罪悪感がまったくないことが窺える。
ユダヤ人には人権などなく、悪者で処分されて当たり前。
それがお上の方針であり、自分たちはそれに従っているだけ。だから、ユダヤ人の所有物は奪ってたり前だし、どうなろうと関心がない。
人間って、時代って、恐ろしいものだ。
そして、この映画が実話を基に作られていると聞いて、さらに恐怖を感じてしまった。
けれど、母親以外は無意識下で異変が起きていた。
潜在意識では、その残酷さに気がついているのかもしれない。それを気がつかないように必死に押さえ込んでいるのかの様に見えた。

途中、シーンが切り替わってモノクロになる。
真っ暗な画面にレントゲンみたいに白く浮かび上がる少女。
なぜか、リンゴを土の中に埋めていたり、何かを川に流したりしている。最初は、父親が次女に読み聞かせしていた『へンゼルとグレーテル』の童話かと思ったが、そうではなく。
多分、彼女は収容所の中の人に食べ物を与えるために行動しているのだろう。
まるで、亡霊の様に見える映像だけど、これは収容所の中の人から見たら、一筋の光に見える映像かもしれない。
なんと、この少女も実在したそうだ。
ラスト、突然現代に切り替わって『アウシュビッツ収容所美術館』で、あのガス室内やおびただしい数の遺品や遺影などが展示されている横で淡々と清掃作業をしている人々の様子が映し出される。
また過去に戻って、吐き気をもよおす所長(父親)が私たち観客に視線を合わせて何かを訴えてくるような描写があった。
「これは、他人事か??」

ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示ナチスなどを扱ったものはみるのを躊躇してしまうので💦気になりつつみないでいた作品です
残酷なシーンはないとのことで、勇気だしてみてみようかなという気になりました…!