【蔵出しレビュー】白石和彌監督による降旗康男監督作品風のヒューマンドラマ
※9月18日からNetflixにて配信開始のゆりやんレトリィバァ主演白石和彌監督作品『極悪女王』にあわせて、白石和彌監督の過去作品のレビューをUPしました。尚、文章は公開当時のものを一部加筆・訂正したものです。
■ひとよ
《作品データ》
桑原裕子率いる劇団KAKUTAの代表作を『凶悪』の白石和彌監督と脚本の高橋泉がタッグをくんで映画化したヒューマンドラマ&サスペンス映画! 夫を殺してしまった稲村こはるは刑期を終えて職を転々としながら15年を過ごした後、大洗にある稲丸タクシーに現れた。こはるの息子・娘である大樹、雄二、園子は複雑な心境になりながらも母、子として接する。母・こはる役には田中裕子、次男・雄二役には佐藤健が演じ、他鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、筒井真理子、浅利陽介、韓英恵、MEGUMI、大悟(千鳥)、佐々木蔵之介が出演。
・ 公開日:2019年11月8日
・配給:日活
・公式HP:https://hitoyo-movie.jp/
《『ひとよ』レビュー》
前作『凪待ち』では香取慎吾を主演にしながらも相変わらずのキナ臭い世界観と降旗康男監督作品的なヒューマンドラマを見せたが、本作は茨城県の大洗を舞台に陰がある重いヒューマンドラマを見せてくれた!
要は殺人を犯した母親と子供3人のその後のストーリー。DV癖があった酷い父親とは言え母親に殺されたことはその後の人生に重いトラウマとなり、長男・大樹と次男・雄二にそれがしっかりと表れている。そんな中での母親の15年ぶりの帰還だから動揺が激しい。子供ら以外の稲丸タクシーの面々とは打ち解けているのに大樹と雄二、そして2人ほどトラウマはないが園子らとの温度差がある。
また、舞台にした稲丸タクシーという個人経営の地方のタクシー会社の様子もまたいい。『タクシードライバー』ほど荒んではなく、社長を中心にアットホームなノリ。唯一、佐々木蔵之介演じる堂下のみ陰があるキャラで、白石和彌監督らしいキナ臭さを出している。彼がいなければ白石監督作品らしさがなくなってしまうので、ギリギリらしさを感じ取れる。
前作『凪待ち』でも感じた降旗康男監督作品風のヒューマンドラマ路線の雰囲気は今回より推し進められている。これまで、ヤクザ、荒くれ警察、半グレなどアウトローが多く、中心になった作りから、過去に何かがあった(事件・元極道・半グレ)人物が地方の漁とかタクシーで再出発をするヒューマンドラマにシフトチェンジしている。それはまるで降旗康男監督が東映で任侠・アウトロー映画に携わった後に健さんと『駅/STATION』や『冬の華』、『夜叉』を作ったあの流れを匂わせる。
中身の具体的な作りは違えど、例えば過去の回想の挿入など当たらずとも遠からずな“何か”を感じ取れた。
あと、予告編の時に大樹を演じた鈴木亮平が「何気ないシーンが凄いシーンに変わる」と言っていたが、個人的にはどのシーンも凄いと思えた。ちょっとのシーンなのにコンビニでの某エロ本のシーンは名シーンだし、佐々木蔵之介演じる堂下の親子のシーンは焼肉屋やバッティングセンターのシーンなどどれもいい。堂下に関しては“酒”にまつわる小道具の見せ方が秀逸。
音尾琢真は今回は稲丸タクシーの社長役で比較的“いい人”な役で立ち回りながらも白石組には欠かせないし、大樹の妻役のMEGUMIもいい年の取り方をしたと思う。
白石和彌監督らしさでは若干カラッとしたものは薄目だが、『凪待ち』以上に渋味がある大人の日本映画を作り上げている。日本映画らしい日本映画を見たい方には見てほしい。
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投稿を表示この映画で佐藤健さんの鬱屈した次男役に驚きました。次々と新しい姿を見せてくれるので楽しみなかたです。
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