クラシック映画のオマージュに彩られたウディ・アレン監督復活作品『サン・セバスチャンへ、ようこそ』
〈作品データ〉
『カイロの紫のバラ』や『ミッドナイト・イン・パリ』を手掛けたウディ・アレン監督によるスペインのサン・セバスチャン国際映画祭を舞台にしたロマンティック・コメディ映画。作家のモートはサンセバスチャン国際映画祭の広報を担当する妻スーに同行し、スペイン・バスク地方のリゾート地サン・セバスチャンへ。モートはスーが担当する映画監督のフィリップとの浮気を疑いストレスに悩まされ、友人のツテで紹介された診療所に診察に訪れ、女医のジョーに恋心を抱くことに。主人公のモート役をウォーレス・ショーンが演じ、他エレナ・アナヤ、ルイ・ガレル、ジーナ・ガーション、セルジ・ロペス、クリストフ・ヴァルツ、タミー・ブランチャード、スティーヴ・グッテンバーグ、リチャード・カインド、ナタリエ・ポサ、ダグラス・マクグラス、エンリケ・アルセ、ダミアン・チャパが出演。
・1月19日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー
・上映時間:93分
・配給: ロングライド
【スタッフ】
監督・脚本:ウディ・アレン
【キャスト】
ウォーレス・ショーン、エレナ・アナヤ、ルイ・ガレル、ジーナ・ガーション、セルジ・ロペス、クリストフ・ヴァルツ、タミー・ブランチャード、スティーヴ・グッテンバーグ、リチャード・カインド、ナタリエ・ポサ、ダグラス・マクグラス、エンリケ・アルセ、ダミアン・チャパ
原題:Rifkin's Festival/製作国:スペイン、アメリカ、イタリア/製作年:2020年
公式HP:https://longride.jp/rifkin/
〈『サン・セバスチャンへ、ようこそ』レビュー(レビュアー〉
ウディ・アレンの監督作品としては前作『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』が2020年の公開だから、諸事情を経て久しぶりの公開作品となるウディ・アレン監督・脚本作品『サン・セバスチャンへ、ようこそ』。随所にクラシック映画のオマージュを散りばめながら、偏屈なおじさんの異国の地でのロマンティック・コメディで、相変わらずのウディ・アレン節を堪能。
実在するスペインの国際映画祭イベントであるサン・セバスチャン国際映画祭の舞台裏の顛末を中心にしたストーリーで、クラシック映画好きのさえない中年作家が映画祭の広報担当の妻が自らが担当する映画監督との不倫の脇で既婚者の女医に恋心抱いてあの手この手でデートをしようとするラブロマンス、というか中年W不倫になっている。この辺りは実際に不倫からの離婚騒動を起こしたウディ・アレン監督らしい作品で、ある種ウディ・アレンの願望をモロに表した映画と見るとより楽しめる。
そう考えると随所にあるオーソン・ウェルズ、フェリーニ、トリュフォー、ゴダール、ブニュエル、ベルイマンの大胆なオマージュがあるが、あれはウディ・アレンならではの遊びに見えるが、本質はウディ・アレンの願望である生々しいW不倫劇をぼかすための演出とも言える。
しかしながら、ウォーレス・ショーンを主演にしたラブコメディは面白くはあれど突き抜けて面白いとまではいかない。本来ならウディ・アレン本人が主演として出た方が面白く思えるが、自らの監督作では『ローマでアモーレ』以来出演してないし、実際に不倫していたウディ・アレンが演じるには生々しいからやむを得ないキャスティングと思えてならない。
それとクラシック映画のオマージュは『ミッドナイト・イン・パリ』でのマジカル演出というよりかはウディ・アレンなりのマルチバースなのかなとも取ることが出来るが、そこが小手先演出にも感じられる。
ジョー・ロハス役のエレナ・アナヤ、どこかで見たことあるなー、って思ったら『私が、生きる肌』のヒロインや『ワンダー・ウーマン』のマッドサイエンティスト役の人で、やっぱり『それでも恋するバルセロナ』のペネロペ・クルス同様情熱的。また映画監督フィリップ役を『グッバイ・ゴダール!』でジャン=リュック・ゴダールを演じたルイ・ガレルにキャスティングしたのも適役と言えよう。
最近のウディ・アレン監督作品で言えば『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』よりかはマシで、『僕のニューヨークライフ』や『それでも恋するバルセロナ』、『カフェ・ソサエティ』クラスの平均よりちょい上ぐらのクオリティ。
終盤の展開や着地点がかなりあっさりで、久しぶりのとりあえずのウディ・アレン監督作品といった所か。