世界最弱サッカーチームと不良監督による敗者復活のスポーツコメディ映画!『ネクスト・ゴール・ウィンズ』
■ネクスト・ゴール・ウィンズ
《作品データ》
『シェアハウス・ウィズ・バンパイア』『ジョジョ・ラビット』などのコメディ作品で知られ、俳優としても活躍するタイカ・ワイティティ監督の最新作! 2001年にワールドカップ予選史上最悪の0-31の大敗を喫し、1ゴールも決められていなかった米領サモアチームの逆転劇の実話の映画化で、主人公トーマス・ロンゲンをマイケル・ファスベンダー、米領サモアのサッカー協会会長タヴィタをオスカー・ナイトリー、ロンゲンの元妻ゲイルをドラマ「ハンドメイズ・テイル 侍女の物語」のエリザベス・モスが演じている。
・TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー中!
・配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
・公式HP: https://www.searchlightpictures.jp/movies/nextgoalwins
〈『ネクスト・ゴール・ウィンズ』レビュー〉
『ジョジョ・ラビット』や『マイティ・ソー』シリーズを手掛けたタイカ・ワイティティ監督最新作とあって期待してみたマイケル・ファスベンダー主演映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』。
概ね予想通りのスポーツコメディ映画で、南国のアメリカ領サモアを舞台としたあたりはニュージーランド出身のタイカ・ワイティティ監督としてもうってつけだったであろう。
マイケル・ファスベンダーが演じる零落れサッカー指導者と体型も習慣、気質を含めてサッカーに不向きな世界最弱のアメリカ領サモアサッカー代表による底辺からの這い上がりと住めば都なスポーツコメディ。いわゆる、『がんばれ!ベアーズ』や『メジャーリーグ』、テレビドラマ「スクール☆ウォーズ」のような指導者とダメダメチームの這い上がりをアメリカ領サモアの風景や宗教観たっぷりに味わう作品。敵対チームもそこそこ強そうなトンガ代表チームもちょっぴりヒールな感じで、弱者のスポーツコメディの王道を楽しめる。
デブデブで呑気なアメリカ領サモアの代表チームの底抜けな弱さが問題というだけでなく、指導者のトーマス・ロイゲンもサッカー指導者として問題児で、アメリカサッカー界から島流し同然でアメリカ領サモアにやって来たから、トーマス・ロイゲン視点として敗者復活感はある。そのトーマスが徐々にチームや島の風習に馴染むあたりに住めば都というか「南の島を毎日観光気分で味わえて、ダメダメチームだけどサッカーの仕事が出来るからいいじゃん」みたいになるのが、見知らぬ地に赴任した経験がある者ならシンパシーを感じる。
それと、チームのキーポイントにもなるジャイヤ・サエルアとトーマスとの衝突のエピソードは真っ向からトランスジェンダーについても描いている作品でもあり、中盤以降のサエルアが男子サッカーのチームに自然と溶け込んでいるあたりはタイカ・ワイティティ監督の手腕と言えよう。また、アメリカ領サモアの宗教事情や試合前にやるオールブラックスのハカのような踊りと掛け声が南国らしく、上手く全面に押し出している。
タイカ・ワイティティ監督らしくコメディとシリアスの塩梅が良く、音楽もいい。後半はあっさりだけど、概ね予想通り楽しめるスポーツコメディ映画である。