答えはわからないままの「リアリティ・バイツ」
「私たちは、BMWを買うために週80時間も働いたりしない。
反体制やカウンターカルチャーにも興味がありません。
我々はどう生きるか‥その答えは・・わかりません」
《「リアリティ・バイツ(ベン・スティラー監督、1994年)」の冒頭、大学卒業式にて、卒業生総代をつとめる主人公リレイナ(ウィノナ・ライダー)のスピーチより》
「リアリティ・バイツ」の頃
「既存の価値観が崩れたあと、自己のアイデンティティをいかに見出していくか」
これはいつの時代にもついてまわるテーマだといえるにせよ、90年代はなにかとてもはがゆかった‥!
年がバレますが💦自身が青春を過ごした頃でもあり、独特の虚無感?悲観・あるいは楽観etc.が漂う時代だったことを記憶しています。
当時、1960年代後半~70年代に生まれた若年層を指して「ジェネレーションX」という言葉が生まれました。
ベビーブーマーである親世代の「大人」は、例えば理想主義(「社会は変えられる」「正義は実現できる」などの信念)を掲げる一方、相反するような物質主義、拝金主義を醸すことも往々にしてあり・・ さまざまな矛盾、現実とのギャップをスノビズムとして見下すムードは、アメリカだけでなく日本の若者たちにも充満していたように思います。さらに不況・就職難のあおりを受け、シニカルにならざるを得ない状況がそこかしこにあったかもしれません。
X世代によるX世代ムービー
本作「リアリティ・バイツ」は、そんな「ジェネレーションX」が語られるとき、必ずといっていいほど取り上げられる作品です。ドキュメンタリー作家を目指す主人公リレイナや定職がなく哲学者くずれのようなバンドマン、トロイ(イーサン・ホーク)はまさに渦中の若者であり、その人物像やストーリーは当時、多数の共感を得たものと思います。「REALITY(現実)にBITEされる(噛まれる)」登場人物たちに自分を重ねる‥私もそのひとりだったかも?
作品が描いているのは、おもに彼らの「恋」や「自己実現」について。それは確かなのですが、あの時代背景が主軸で、それなしには生まれなかった作品であったことを、今みても強く感じます。
監督・出演もしているベン・スティラーは1965年生まれで当時は20代後半。MTV風のパロディなどに出演し人気を博していました。彼よりも少し若く、自らが生きる時代の空気を敏感に読み取っていた脚本家ヘレン・チャイルドレス、ともに非凡な感性です。本作は、コメディアンの顔が広く知られていたスティラーの多才を知るきっかけにもなりました。

ストーリーと音楽
大学卒業後、リレイナはTV局の契約社員として、友人ヴィッキー(ジャニーヌ・ギャルファロ)はGAPの店員として働き、男友達のサミー(スティーブ・ザーン)も交えてアパートで共同生活を送っています。そこへ、バイトをクビになったトロイが転がり込んで‥というわりとベタな展開。ただリレイナとトロイの間に漂う、友達以上の空気が甘酸っぱく✨ ウィノナ・ライダーとイーサン・ホークともに若く美しかった頃で、ふたりの姿だけでも胸がいっぱいになります笑
彼女らは薄給で、なんとか家賃を払うギリギリの暮らしを送っています。ヴィッキーの昇進祝いにピザをとるためのお金もなく、リレイナは父親から「今年だけは支払いをしてあげる」と卒業祝いに贈られたガソリンカードを頼りに、スタンドでスナックや飲み物を大量購入。店内にたまたま流れてきたザ・ナックの「マイ・シャローナ」で踊りだすシーンは、なんとなく既視感✨社会に出ても、学生気分が抜けきらない様子―大人になった誰もが、郷愁に誘われるようなシーンかもしれません。
「マイ・シャローナ」と並び、本作で印象深いのはリサ・ローブ&ナイン・ストーリーズの「ステイ」。すれ違いつつ、求めあう恋心がアコースティックサウンドに綴られています。脳内に90年代がよみがえる旋律‥!
このほかレニー・クラヴィッツ「スピニング・アラウンド・オーヴァー・ユー」やビッグ・マウンテン「ベイビー、アイ・ラヴ・ユア・ウェイ」、イーサン・ホークが劇中で歌う「アイム・ナッシン 」などを収めたサウンドトラックは同時代感いっぱいです。
揺れに揺れたその後は‥
リレイナは、トロイによれば「ヤッピー」な業界人マイケル(ベン・スティラー)とデートしつつ、トロイにもやはり惹かれています。
またTV局をクビになり家賃に困っても「私はGAPでは働かない」とヴィッキーの誘いを断り、「秀才でドキュメンタリー作家を目指している自分」への矜持はそのままに、なぜか父親のガソリンカードで現金捻出という愚行に走るなど、事態をどんどんこじらせていきます。
いっぽう「人生は拾った貝殻と同じで中身は空っぽ。だからディティールだけを見るようにしている」というトロイ。彼のいうディティールとは、「マクドナルドのチーズバーガーのうまさ」や「高くはじける君の笑い声」であり、それで満足なのだと語ります。リレイナと違い、大学を中退し一見してチャランポランな男かのようなトロイのしんみりした台詞に、どこか真理を感じてしまうことも否めません。
彼らが今の世界に生きていたら、どのように暮らしているでしょうか。リレイナは自身のスピーチの問いに答えを見いだせたでしょうか‥?



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投稿を表示本作を観たのはかなり前なのでうろ覚えでしかありませんけども劇中イーサン・ホークが「暴力脱獄」のポール・ニューマンを真似て沢山のゆで卵を食べるシーンが無かったでしたっけ?ストーリー自体は殆ど忘れてしまいましたが、自分自身が「暴力脱獄」を好きなので何だかその部分だけ記憶に残っています
それにしてもあの頃は前途洋々だったウィノナ・ライダーですが、、、残念で仕方ないです
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投稿を表示わー、当たり前だけど、みんなめちゃめちゃ若い!(笑)
共感しちゃうかも!
未見なので、観てみたいと思います。