私の好きな映画

かこ
2025/09/04 21:31

混沌を愛でて歩む道

公式様のご招待で、マスコミ試写会へ参加させて頂きました。9月5日(金)から公開する
『これらが全てFantasyだったあの頃。』
 

・第46回ぴあフィルムフェスティバル2024〈審査員特別賞〉受賞
・第25回 TAMA NEW WAVE「ある視点」部門 入選
・MOOSIC LAB 2025 ノミネートなど話題性も高い。
そして『空白』(21)や『ミッシング』(24)の
吉田恵輔監督も「映画を目指す者なら絶対に観るべき作品。」と本作を絶賛している。
 

本作で長編デビューを果たした林真子監督は、映像制作集団「世田谷センスマンズ」に所属。メンバーの北林佑基さんと松本佳樹さんと本作を作り上げた。
 

©︎世田谷センスマンズ

 

▼あらすじ
次のステップへ進むため留学することを決めた俳優の塚田えみは、引っ越しの準備中に見つけた1冊の脚本をきっかけに、これまでの歩みを振り返っていく。仲間や友人、恋人と過ごした毎日は、もがきながらも夢を諦めず、着実に進んできた美しい日々のはずだった。しかし、いつしか記憶の中に違和感が漂い、矛盾が生じはじめる。そんな彼女の様子を、孤独な青年が見つめていた。

©︎世田谷センスマンズ


 


夢を追いかけることや挑戦することは、決して容易ではない。迷ったり立ち止まったり、孤独を抱えながらも進み続ける。それは創作の過程にも似ている。正解のない中で、自分の感情や記憶をどう形にしていくのか、それは常に自分と向き合う作業だ。
 

本作は、その姿を「俳優」と「作り手」という二つの視点から描いている。仲間との思い出や脚本の断片、忘れていた過去の出来事が重なり、夢と現実の境界は次第に曖昧になる。観客もまた、どこまでが真実でどこからが虚構なのか迷いながら、物語の迷路に引き込まれる。
 

斬新な構造を持つ本作は、監督の言う通り後半に情報量が増して複雑になる。だがそれは混乱ではなく、「創作の渦」を映し出している。
物語は静と動を行き来し、緩やかな時間が突如加速する瞬間があるが、そのリズムは作り手の頭の中そのものだ。アイデア、感情、記憶、夢が絡み合い、ほどけてはまた結び直される。まだ見ぬ自分の輪郭を掴もうと走り続ける姿が、自然と重なっていく。
 

俳優視点では、きれいな思い出として片づけていた過去が、実はそうではなかったと気づく瞬間、心の奥から感情があふれ出し、現在の自分に重なっていく。こうした出来事や感情が幾重にも折り重なり、夢を追う自分の姿が再び浮かび上がる。
 

もしこれらを混沌したファンタジーとするなら、ファンタジーが現実に侵食する過程は、不安を抱えながらも夢への輝きを放つ。その様子はまさに「希望に飛び込む勇気」と「創作せずにはいられない衝動」を体現している。
 

ラストで「俳優」と「作り手」の視点が交わるとき、物語は単なる回想ではなく、人生そのものへとつながる。そこには、積み重ねた思いを昇華させた熱と、創作の原点を見つめる視線がある。

©︎世田谷センスマンズ


映画『これらが全てFantasyだったあの頃。』
2025年9月5月(金)より、シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』ほか順次公開

 

 

▼キャスト
塚田愛実、町田英太朗、米良まさひろ、在原貴生、花純あやの、鄭玲美、北林佑基、古川ヒロシ、岩永光祐、Q本かよ、木村新汰、青木成巨、川村瑞樹、五十嵐諒、山口改、長谷川愛美、山田竜弘、一嶋琉衣 冨田智 湯本充、藤田恭輔、幡乃美帆、堀内友貴、森田はるき 秋山実里、堀内萌絵子、田草川梓、松本佳樹、アライジン、藤王臣吾、綾部悠、上田茉衣子、りりか、西塚春月、乗定裕
 

▼スタッフ
原案・監督:林真子|企画:塚田愛実
監督補佐:松本佳樹|撮影:中村元彦|録音:堀内萌絵子|助監督:北林佑基、堀内友貴|美術:田草川梓、林真子、松本佳樹|衣装:林真子|照明応援:木下湧太|スチール:花村キエ|脚本:北林佑基、林真子|編集:松本佳樹、北林佑基、林真子|整音:堀内萌絵子|音楽:南敬大『all imperfect fantasy』|©︎世田谷センスマンズ

 

 

 

 

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