My Favorite Woody Allen PART1
ウディ・アレン監督作品を初めて観たのは「マンハッタン」のリバイバル上映。当時30代半ばの私にとって、彼の会話劇はおよそ魅力的とは思えませんでした。
その3年後にゴールディ・ホーン目当てで観に行った「世界中がアイ・ラブ・ユー」で少し印象が変わり、2007年に観た「タロットカード殺人事件」で、遅まきながらファンに。
久し振りの新作公開を機に、1970年代からほぼ年1作のペースで作品を撮り続けているアレン監督作品の中から個人的におススメしたい作品を紹介させて頂きます。
先ずは私がウディ・アレン監督にハマるきっかけとなった3作品から。
※()日本公開年
①マンハッタン(1980年)
「Woody Allen Classics」と題して銀座文化劇場(現シネスイッチ銀座)にて1995年にリバイバル上映された際に観賞。30代半ばでウッディ・アレン初体験。そのスノッブな会話劇に正直距離を置きたくなりました。
それから17年後、当時の彼より10歳近く歳を重ねて再見した本作品に、ウディ・アレン作品に、その世界にやられました。
所謂"ニューヨーカー"の男女達が繰り広げる他愛もない日常。マンハッタンだろうがどこだろうが、男と女の愛情のもつれに差異はなく、やってる事は当時のフジTVのトレンディ・ドラマと何ら変わりがない。アレンらしいジョーク、マシンガントークの如き会話劇も、今も昔も変わらない。どいつもこいつも身勝手で利己主義で己の本能に忠実で、どーしようもない。
なのに、です。
アレン扮するアイザックが、選んだ女に振られた結果ヨリを戻そうと元彼女のアパートにひた走るその姿がいじらしくて仕方がない。映画のラスト、トレイシー(マリエル・ヘミングウエイ)を見つめる彼の表情が純朴に見えて仕方がない。エンディングロールが流れ始めた後で、つまりは映画の余韻に、涙が溢れ出してしまった。こんな事は初めてだ。ジョージ・ガーシュウインの調べが胸に染み入る。
アレン監督が愛するN.Y.を舞台に描くしょーもない男女の恋愛話を、今の私よりも冴えない中年にしか見えない彼が等身大に演じるそのさらけ出し方を、インテリぶった会話の裏側にある人間性を、愛すべき世界として受け入れるしかなかった。即ち本作品の作家性にやられたという事。
この頃のアレン作品をほとんど観ていない私にとって、未見の作品達にこれから出会えるのは老後の楽しみの一つです(笑)。
②世界中がアイ・ラブ・ユー(1997年)
マンハッタンを舞台に四季を織り交ぜながら、ジュリア・ロバーツにナタリー・ポートマン、ドリュー・バリモア(お嬢様役が堂に入っていて最初判らなかった)と、素敵な女優達が素敵に共演。そしてその作風はちゃんとウディ・アレンしていて、ちゃんとミュージカルの良質なエッセンスも踏まえていて、アレンはショボくれた役回りをちょっとだけ格好つけながら好演していて、ちょいとハートウォーミングなテイストも。
パンフレットに掲載されたインタビューでは、この作品を作っていて本当に楽しかったと、「音楽に限らず、この映画に出て来るものは僕自身が好きなものばかり」だと語っていました。そんな監督のノリが見事に反映されていて、観ている方もハッピーになれます。
ウディ・アレンと三谷幸喜。なんだか東西の天才作家の資質がダブって見えました。アレン監督がグッと身近に感じるきっかけとなった小粋で素敵な小作品です。
③タロットカード殺人事件(2007年)
この監督の作品は字幕なんかじゃ半分も楽しめないと、常々思います。彼の作品においてとても大きな意味を持つ会話の醍醐味を、ほんの数行のセンテンスに”要約”された字幕でどれだけ理解出来るというのでしょうか?
「世界中がアイ・ラブ・ユー」以来10年振りに観た本作も、同じジレンマを感じつつも、かーなーり楽しめました。
いきなり突拍子もない話の展開で始まるも、何の違和感もなくこの映画の世界観へと誘われ、あとは最後までウディさんの軽妙洒脱な芸とやりとりを(それなりに)堪能できました(この”それなりに”ってのがホントくやしい)。
スカーレット・ヨハンソンはウディのボケに見事なツッコミを披露、これは名コンビです。ラストのオチも笑えます。この監督ならではの小粋な探偵コメディというところでしょうか。ごくごくオーソドックスな謎解きはこの映画のバランスの良さを演出するのに一役買っており、このままシリーズ化して欲しいとさえ思いました・・・が、そうかダメなんだ(笑)。そのくらい見事なコンビ振りです!
本作品は、この監督の初心者にも優しく楽しい映画です。