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2024/09/03 21:33

こころに響く音楽映画3選

音楽が先にくる「音楽映画」、映画が先にくる「映画音楽」...

意味合いはまったく異なりますが、今回は前者のご紹介

尚、私見だが、音楽映画というのは、ミュージカル映画とは別ジャンルであると認識している。

 

「ブラス!」(1996年・イギリス) 監督:マーク・ハーマン

 

この映画は泣けます。 実話です。

実在の英国の名門ブラスバンド、グライムソープ・コリアリー・バンドが、劇中の楽曲を演奏し、メンバーも出演者として登場する群像劇。

 

時は1992年、イングランド北部・ヨークシャー地方の、炭鉱の町グリムリー。
結成100年の伝統あるブラスバンド、「グリムリー・コリアーバンド」は苦境に陥っていた。
町は炭鉱閉鎖問題で揺れており、バンドメンバーは皆、気もそぞろだった。そこへグロリア(タラ・フィッツジェラルド)がこの生まれ故郷へ戻ってきて、バンドの練習場でいきなり難曲を演奏してみせる。彼女はフリューゲル・ホルンの奏者としてメンバーに入るが、実は、会社側が炭鉱の調査に呼んだ人間だった。バンドに情熱を傾けるリーダー兼指揮者のダニー(ピート・ポスルスウェイト)は、全英選手権に出場し、ロイヤル・アルバート・ホールで演奏し、優勝することが夢だった。
だが、炭鉱閉鎖と炭鉱夫の解雇が決まり、バンドメンバーの大半が失業者となる。更にダニーが持病をこじらせて入院してしまう...。

 

 

グライムソープ・コリアリー・バンド」は100年以上の歴史があり、しかも炭鉱の従業員の余暇活動として発足したというのだから、今日に至るまでの苦難は想像を絶するものがあったと思う。

 

 

グロリア以外の主な奏者役はユアン・マクレガー(アルト・ホルン)、フィリップ・ジャクソン(チューバ)、ジム・カーター(ユーフォニウム)、スティーブン・トンプキンソン(トロンボーン)。

 

 

苦境のバンドを救った人物がいるのは確かだが、そこには常に音楽が存在している。
本編では「ダニー・ボーイ」、「ウィリアム・テル序曲」が演奏され、ラストのダニーの感動的なスピーチによって泣かされるのだ。
 

音楽と共に生きる喜びを与えてくれる、素晴らしい作品。

 

 

 

 

「セッション」(2014年・アメリカ) 

               監督:デイミアン・チャゼル

 

一流のドラマーを目指す青年が、一流音楽大学の鬼教師の常軌を逸した指導で追いつめられていく姿を描いた衝撃のドラマ。

作品のスチール写真にある「才能」VS「狂気」...まさにこの対決の構図である。

 

 

19歳のアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)は偉大なジャズ・ドラマーになるという野心を抱き、全米屈指の名門校シェイファー音楽院に入学する。フレッチャー教授(J・K・シモンズ)が指揮する ‘スタジオ・バンド’ に所属すれば、成功は約束されたも同然だからだ。ある日、一人で練習するニーマンの前にフレッチャーが現れるが、ほんの数秒聴いただけで出て行ってしまう。数日後、ニーマンが所属するバンドのレッスンに顔を出したフレッチャーは、主奏者のライアン(オースティン・ストウェル)を差し置いて、ニーマン一人を ‘スタジオ・バンド’ に移籍させる。やがて、異様なまでの緊張感に包まれた教室でレッスンが始まるのだが...。

 

 

名ドラマーといえば、個人的には「ベンチャーズ」の旧メンバーであるメル・テイラー(故人)が思い浮かぶ。「ベンチャーズ」のエレキ・サウンドが大好きで、数々の名曲の中で、テイラーのドラムの技・業を楽しむことができる。本編の中でも、「キャラバン」が幾度か流れ、思わず「ベンチャーズ」に想いを馳せた。
メル・テイラーもこの「セッション」のフレッチャーのような師匠に師事したのだろうか。

 

それにしても、J・K・シモンズ扮するフレッチャーの音楽指導には閉口させられる。

僅かな音程のズレでトロンボーン奏者がクビになったり、ドラムを叩くテンポが違うと、椅子を投げつけたりする。冷静そうな男が豹変するのが恐ろしい。

もう ‘指導’ を超越しているかのようだ。

そのJ・K・シモンズは、本作の演技でアカデミー助演男優賞を受賞している。

 

ニーマンに扮したマイルズ・テラーは、2ヵ月間、毎日3~4時間の猛練習をこなして「才能」の役づくりに挑んだという。

 

第87回、米アカデミー賞・作品賞ノミネート

 

 

 

 

「ジュディ 虹の彼方に」(2019年、イギリス・アメリカ)

                監督:ルパート・グールド

 

「オズの魔法使」(1939年)で一躍スターとなったミュージカル女優ジュディ・ガーランドの晩年を、レネー・ゼルウィガーが演じた伝記ドラマ。

 

 

1968年。幼い2人の子をもつ47歳のジュディ(レネー・ゼルウィガー)は、クラブ巡業の日々が続いていた。全盛期を過ぎた彼女のギャラは安く、宿泊代が払えず定宿のホテルを追い出される。仕方なく3番目の夫だったシドニー・ラフトルーファス・シーウェル)の家を訪ねるが、2人の子の親権をめぐって口論となる。次に2番目の夫だったヴィンセント・ミネリとの間に生まれたライザ・ミネリジェマ・リア=デヴェロー)のパーティ会場に向かうジュディ。そこでミッキー・ディーンズ(フィン・ウィットロック)という若い実業家と出会ったジュディは意気投合する。数日後、ジュディの元へ、ロンドンの著名な興行主のバーナード(マイケル・ガンボン)からライブショーへの出演依頼が来る。ジュディは借金返済と生活費を稼ぐ為、単身ロンドンに向かう...。

 

 

ジュディ・ガーランド1922.06.10~1969.06.22)米・ミネソタ州生まれ
レネー・ゼルウィガー1969.04.25~      )米・テキサス州生まれ
レネー・ゼルウィガーは、ジュディが亡くなる僅か58日前に生まれている

奇遇で、何か因縁を感じる
 

 

ジュディの47年の生涯を支えてきたものは、幾たびもの挫折を乗り越えた飽くなき芸人根性

ミュージカル・スターとして有り余る才能を持った彼女だが、天才ゆえの過敏な神経が、飲酒や睡眠薬の過剰摂取に繋がっていったのかもしれない。

そんなジュディの晩年を、レネー・ゼルウィガーがジュディに成りきって演じている。凄みすら感じるレネーの熱演は、まるで魂がジュディに乗り移ったかのうようだ。

一挙手一投足すべてジュディに瓜二つなのだ。


彼女は本編で6曲歌ったと思うが、その歌い方、首を振りながらの表情はそっくり。
何より歌唱力とパフォーマンス、素晴らしいの一語。
華やかなショービジネスの世界が描かれるが、相反するように業界の厳しさや虚無感に晒されるジュディの姿も映し出される。

ロンドンの裏通りを一人歩くジュディの後姿には、胸が締め付けられる思い。
レネーは本作出演時50歳、晩年のジュディを演じきるには適した年齢で、アカデミー主演女優賞受賞は当然の結果だった。

 

 

「3選」と題したが、

上記3作品に肩を並べる音楽映画の名作が、もう1本ある。

 

「歌え!ロレッタ・愛のために」(1980年・アメリカ)

                     マイケル・アプテッド監督作品。

 

シシー・スペイセクが、シンガー・ソング・ライターのロレッタ・リンに扮し、彼女の波乱の半生を描いた映画だ。

ストーリーは割愛するが、シシー・スペイセクが、「コール・マイナーズ・ドーター」などのヒット曲を、彼女自身の歌声で聴かせて楽しませてくれ、見事アカデミー主演女優賞に輝いた。
 

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