デカダン×一途な恋「クィア QUEER」
テレパシーを信じるか否か。
個人的には漠然とでも「思いは通じる」などと思ってしまうフシがあります。ただ、以心伝心については🙄 不確かなものですね・・!
ルカ・グァダニーノ監督最新作「クィア QUEER(2024年)」は、愛する人との一心同体を切望し、テレパシーを手に入れようとする男、リー(ダニエル・クレイグ)の物語。1940年代末~50年代の猥雑なメキシコシティや泥だらけの密林を舞台にしながら、見事に耽美な世界を描き出しています。
「みっともないほど、君に触れたい」
物書きらしきリー(ダニエル・クレイグ)は、訳ありでメキシコシティに身を潜めているアメリカ人。すでに初老の域でありながら、酒、薬物におぼれ日々をやり過ごしています。金銭にそれほど困らない様子であることはせめてもの救いです。

彼がなぜ身を持ち崩すことになったのかは、幻想に去来する過去の女性(おそらく自らが殺してしまった妻)にも関係していそうなものの、本作では明確には描かれません。ただリーは紛れもなく原作者でありビートニク作家のウィリアム・バロウズを投影した人物なので、そのデカダンぶりは自然なものとして受け止めることができます。

ある意味、放蕩におぼれ続けるリーは無様かもしれません。そんな彼がさらに惨めになるべく、若く美しい青年ユージーン(ドリュー・スターキー)に恋心を抱きます。リーがユージーンを一途に追いかけるさまは、まさに「みっともないほど」必死。007と対極にありそうなピュアで複雑なキャラに、ダニエル・クレイグがしっかりハマっています。
魔性すぎるユージーン
リーが夢中になる青年ユージーンの、どことなくノーブルな美しさは格別です✨ 本作でドリュー・スターキーをはじめて知ったBlackCherryも、思わず圧倒されました。
ユージーンはつかみどころがなく、とてもミステリアスな人物です。口数が少なく一見して柔和そうな彼は、非情な部分も合わせ持ちます。むき出しの愛を供するリーに対して、時に冷ややかなユージーン。彼らの関係はアンフェアなのです。


「君と話がしたい、言葉なしで」と願うリーは、服用すればテレパシーをもたらすといわれる幻の植物ヤヘを探して、無謀な旅へ出発。地獄めぐりのような旅路の果てに、ユージーンはいったいどこへ行ってしまったのか・・そもそもどのように事は運ばれてきたのか・・さまざまな境界が見えなくなった先に訪れるラストシーンは、はっとするほど衝撃的です。

本作のコピー「みっともないほど、君に触れたい」は、絶妙だと感じました。
改めて、映画のキャッチコピーって面白い✨ 今後も注目していきたいポイントです。

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投稿を表示「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督の作品なのですね。ウン・・・。