推理スリラー映画の傑作「悪魔のような女」
「サイコ」における衝撃のエンディング、「生きていた男」における意外などんでん返し!
本作「悪魔のような女」は、その両方が加味されたスリラー映画である。
「悪魔のような女」(1955年 フランス、モノクロ、112分)
監督:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー


パリ郊外にデュラサール学園という寄宿学校がある。昔からの資産家の娘で英語教師のクリスティーナ(ヴェラ・クルーゾー)が学園の所有者である。だが彼女の夫で校長でもあるミシェル(ポール・ムーリス)は、横暴でドケチなうえ利己的で、平気で他人を見下す最低の男だ。ラテン語教師のニコール(シモーヌ・シニョレ)を公然と愛人にしているが、ニコールはミシェルの暴力によって、顔に酷い傷跡がある。夫の粗暴な行動に対し、我慢の限界に達しているクリスティーナ。ニコールはそんな彼女に同情し、ミシェル殺害の計画を持ち掛ける。2人は謀ってミシェルに睡眠薬入りのウィスキーを飲ませた後、湯を溜めた浴室のバスタブに沈めて殺害した。さらにアリバイ工作を完璧に成し得た2人は、死体を学園のプールに投げ込み、偶然にその死体が発見されるのを待つばかりであった。ところが、翌日になっても死体が発見される兆候はなく、しびれを切らした2人は、プールの水を抜く決断をする。結果、死体はやはり見つからず、気弱なクリスティーナは気を失ってしまうのだが...。

一体、死体はどこへ消えたのか?!
その疑問もさることながら、不可思議な出来事が次々と起こる。
何と数日後、ミシェルが殺されるときに来ていた洋服が、クリーニング店から届けられる。
さらに学校では、生徒がミシェル校長を見たと言い出すし、記念撮影の写真にミシェル校長らしき人物が写っていたりと...
ひょっとしてミシェルは生きているのか、いやいやそんな筈はない...
謎が謎を呼ぶ展開に、観客は釘付けになる。
クレジット1位のシモーヌ・シニョレ(ニコール役)は、本作出演時34歳。
いきなり黒いサングラスをかけて登場する彼女、サングラスを外すと、目のあたりに酷い傷跡が残っている。常にヴェラをリードする圧倒的な存在感は、彼女独特の魅力だ。

一方、クレジット2位のヴェラ・クルーゾー(クリスティーナ役)は、本作出演時42歳。
だが、画面を見るかぎりでは、シモーヌよりよっぽど若く見えるから不思議だ。
【上段の写真(右側がヴェラ)では、必ずしもそうとは言えませんが】
ヴェラは本作監督のアンリ・ジョルジュ・クルーゾー夫人であるが、彼女自身も心臓が弱かった。
本作公開6年後、ヴェラは夫の留守中、ホテルの浴室で死体となって発見されている。
まさに映画を地でいくような謎の死だった。(本作DVDの特典映像の記述から抜粋)

そしてクレジット3位のポール・ムーリス(ミシェル役)は、本作出演時43歳。
身勝手で陰険、独善的で冷酷な校長は、まさに男の風上にもおけない悪役。
もともと器用な俳優のポールは、多才な役柄を演じているが、「影の軍隊」(69年)でもシモーヌ・シニョレと共演しているほか、アラン・ドロンと共演した「ルイ・ジタン」(75年)における暗黒街の大物役も忘れ難い。

ほかの共演陣では、フランスの名わき役が大勢顔をみせているのも楽しい。
なかでも、事件解決に乗り出す元警視のフィシェ役を演じたシャルル・ヴァネルは、地味ながら独特の存在感を放っている。
学園の用務員役のジャン・ブロシャール、ガソリンスタンドの給油係を演じたロベール・ダルバン、さらにはノエル・ロクヴェール、ジョルジュ・プージュリー(「禁じられた遊び」のミシェル少年)も出演している。
本作のリメイク「悪魔のような女」(96年)には、シャロン・ストーン、イザベル・アジャーニ、チャズ・パルミンテリ、キャシー・ベイツらが出演、なかなかのサスペンスに仕上がっているが、やはりオリジナルには遠く及ばない。

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投稿を表示こんにちは。
とても興味がそそられ、リストインしました!
ところが、本品は廃盤で在庫が確保されないと書いてあります。
洋画さんはディスカスでレンタルされたのですか?
アマゾンプライムビデオでもレンタルは出来るみたいなんですけど。。。
ミュートしたユーザーの投稿です。
投稿を表示シモーヌ・シニョレは、貫禄がありますね。ブラックな役もしっかりこなせています。