向上心がホラーになる瞬間
強すぎる向上心。
監督:ローレン・ハダウェイ
製作国:アメリカ
時間:97分
大学生活開始
ノーヴィス=新人、新入生。
最初からもうヒリヒリした感じが伝わる。
物理の授業、何度も何度も確かめる。決して分からないのではない。彼女は完璧を目指している。そして、いつも焦燥感で一杯に生きてる。
この日も、入部したいボート部の説明会に、ギリギリ遅刻して席に着く。
すぐにライバル発見。物凄い負けず嫌いな一面を剥き出しにするダル。あんなに露骨に出す人いるの?って位に凄い。目の敵にされるは、ジェイミー(エイミー・フォーサイス)彼女は才能に溢れていた。よく居る、そこまで努力せずともある一定のレベルまで簡単に行ける人が、ジェイミー。アレックス・ダル(イザベル・ファーマン)は違う。
最初は憧れもあったはず。ノーヴィスの中ではジェイミーと自分だけが抜きん出ていると思っていた。しかし、上級生の一軍練習に呼ばれたのは、実はレイチェルの代わりだった事がわかる。しかもレイチェルは金持ちで、休みは遊びたいから練習を辞退したから、そこにハマっただけだった。こんなに努力したのに。朝練も抜け駆けしてまでやったのに。遊び半分の同級生にすら勝てていなかった。衝撃の事実をジェイミーから聞かされ、思わず悔しいのと、浮かれた自分が恥ずかしくて涙が止まらないダル。
スポ根として観られるのはここまで
痛々しいのは見た目だけでなく、心も病んでくる。私、こんなに自分に厳しくした事もないし、追い込んだ事もない。だからと言ってわからない訳じゃない。世界のトップになる人は少なからずこんな感じだろうし、理解されない事だって多いと思った。
でも、このアレックス・ダルは、ここまでして一体何が残ったのだろう。
ジェイミーとのライバル関係が悪化。自分の知らない所で何かが起きてる。ジェイミーがここまでボート競技に入れ込む理由は、奨学金を取るためで、同じ境遇で必死に闘ってると思っていたダルが、全く違う立場な事を知って離れて行った事に起因する。最初の頃は、きっと物事をはっきり言うジェイミーの方が上級生から疎まれていたはずだ。この辺りは非常に女子心理を突いていて面白い。
いよいよ壊れ始めるダル
ここからホラー味を増していく。手が届きそうだったのに、全てがすり抜けて行きそうな時、自分の力ではどうする事も出来ない時、自分の身体を傷付ける事がある。この自傷行為がまた痛々しい。しかし、ここまでボート部では四面楚歌になっていても、ダルにはちゃんと家族も居るし彼女も居る(ダルはバイセクシャル)支えてくれる人がいる。本来はこの強すぎるストイックさ、向上心を持つようになった背景が描かれるが、あえて描かない事で不気味さを出している。
実際、こんなギラつかれて、触るものみな傷付けるようなチェッカーズ女子(そんなネーミングない)がいたら、引くわ。そもそもチームでやる団体競技に向かない。協調性ゼロ。是非個人競技へ、と思う。チームって仲間の為に自分を犠牲にしたり、高めていくことで、更にチームの力になって貢献出来る。ところがダルは、自分の為にしかそれが出来ない。全然、がんばっていきまっしょいではない。
セッション、ブラックスワンとの比較
この作品を紹介するにあたり、よく耳にする作品がある。まずは『セッション』
これはコーチが居て、才能ある若者を追い込んで行く鬼スパルタな作品。しかし、今回はコーチは至って普通。なんならストイック過ぎるダルに休めと言う常識人。あくまでも、ダル本人の意思で自分に鬼スパルタを課している。
じゃあ、個人の問題ならば?と言う事で、狂気的という意味で比較されるのが『ブラックスワン』だ。
これは、主役の座を取られまいとどんどんとおかしくなっていく訳だが、このダルは1番になっていないし、その座を取りたくて必死になっている。似ているけれども違う立場なのだ。
どちらの作品にもありそでないのが
この作品である
サイコパス自分追い込み女。まだ手に入れたい欲求ってなんなんだろう。結局、引っ掻き回して暴れまくって人も自分も傷付いて、執着して固執するものにすがるしか生きていく方法がわからない女の子にしか見えなかった。こうやって、ボートの次はどんな困難を見つけようと思っているのだろうか。
どうか、私の前に現れませんように。
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投稿を表示単なるスポコンドラマに『セッション』の要素を入れたような映画と想像していたのですが、随分とサイコパスな、心理に突き刺さるような作品のようですね!コラム拝読してかなり見たくなりました!
それにしても「触るものみな傷付けるようなチェッカーズ女子」のフレーズ、かなりハマります(笑)
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