レディオヘッド「クリープ」がつなぐ2本の映画
最近映画を観たら、全然関係ない2本の作品で、レディオヘッドの1993年のヒット曲「クリープ」が劇中で印象的に使われていました。
いや、たまたまなんですけどね。どちらも登場人物の心情を伝えるのにすごく効果的な使われ方になっていて、ちょっと感動してしまったのです。
1つは、マーベルの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」。人気ヒーロースペースオペラシリーズの完結編です。
冒頭、ガーディアンズの一員であるアライグマ「ロケット」が聴いている曲として、ロケットのテーマソングのような形で「クリープ」が流れました。
ここで「クリープ」について説明しておくと、イギリスのロックバンド「レディオヘッド」の、ブレイクのきっかけになった初期の代表曲です。
「CREEP」というのは「這うもの」って意味なので、「イモムシ」とか「ウジ虫」とか、気持ち悪い嫌われ者といった意味。
で、「彼女は天使みたいにきれいだけど、僕はクリープ」と陰鬱に歌う曲。
それがもう、世界中の自虐的な気分にハマりがちな若者の心をグイッと掴んで、大ヒットしたんですね。
なので、これがロケットというキャラクターの心情と重なるのは、彼が「なぜか知能が高くて喋れるアライグマ」で、人間でなく動物でもない、どこにも明確な帰属先を持たない「奇妙なはみ出し者」であると、自分を見なしている…ということなんですよね。
そして今回の「Vol.3」では、そんなロケットの悲しい過去が描かれていく。
彼が「クリープ」であることを余儀なくされた辛すぎる過去と、それを経て今かけがえのない仲間になったガーディアンズの絆が描かれて、それはもう気持ちが高められていくという。
そんな本編へ向けての助走となる、見事にぴったりな音楽の使い方になっていたのです。毎回そうだけど、ジェームズ・ガン監督の選曲センスの素晴らしさには、感動させられます。
第2弾「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:REMIX」はこちら
もう1本は、イタリア映画「フリークスアウト」です。
第二次大戦中、ナチス時代のイタリアが舞台。ユダヤ人の団長が率いる小さなサーカス団に属する、電気少女、毛むくじゃらの怪力男、虫を操る男、磁石人間の4人が、ナチスと対決する。
2015年に公開された、日本のアニメに触発された異色のダークヒーロー映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」を監督したガブリエーレ・マイレッティによる作品です。
サーカス、見世物、奇妙な能力を持ったフリークスたち……という設定で、それこそまさに世間から差別されがちな、はみ出し者たち。「クリープ」の心情がぴったり来るのですが。
ポイントは、本作での「クリープ」はただBGMとして流れるのではなく、劇中であるキャラクターによって演奏されるのですね。
ナチスの時代なのに、なぜ「クリープ」?
…というのが、すごく面白いポイントになってます。どういうことかは、ぜひ映画を観て確かめてください。
本作で「クリープ」を演奏するのは、主人公たちではなく、敵であるヴィランです。
本作では、ヴィランも主人公たちと同じ、「クリープ」と重なる心情を抱えている。そこが、なかなか切ないところです。
どちらも、音楽とストーリーがとても効果的に結びついていて、物語から受ける感動をより高めてくれる。そんな作りになっていました。
迫力ある音響の映画館で、ぜひ楽しんでほしい映画です。
これも面白い異色ヒーロー映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」はこちら