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matchypotter
2023/07/10 11:16

~おいしい映画~ ②<庶民>パターン

前回<高尚>おいしい料理の映画を紹介したので、今回は<庶民>パターン。きっと①とは違う雰囲気を味わえるに違いない。


<庶民>パターン:①『深夜食堂』(2015)

出演:小林薫、松重豊、オダギリジョー、多部未華子、高岡早紀ほか

 

とある新宿の繁華街の路地裏にある食堂。皆が寝静まる頃に開店し、その心地よさから常連やらワケあり一見さんなど、夜な夜な風変わりなお客が集まってくる。
まずこの食堂、“メニュー”がない。その日その日で仕入れた物でお客のリクエストを汲み取りながらありもので定食を提供する。この即興で出来上がる定番メニューが美味そうで仕方がない。
 

そして、これぞ“庶民の味方”みたいな場所。新宿という雑多な一角で、誰だかよくわからない人たちが集い、狭いカウンター越しに顔を合わせて取り留めのない話から、やたらと切羽詰まった話まで。
別にそこに利害関係なんてないのに、やたら真摯に相談に乗ったかと思えば、くだらないと突き返してみたり。利害関係がないからこそ話せることもあり、突き返されようが話を聞いてもらって突き返されたことで吹っ切れることもある。
 

それを店主の小林薫が聞き役に徹しつつ、店主と客の関係性を超えるような暖かな物語もあったり。
料理がメインではないしココでしか食べられないおいしいメニューがあるわけでもない。が、だからこそココに来て、ココのメシが食いたくなるような。しがないサラリーマンの憧れのような空間がココにある。

 

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深夜食堂のmatchypotterの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画
続・深夜食堂のmatchypotterの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画

(C) 2015安倍夜郎・小学館/映画「深夜食堂」製作委員会

<庶民>パターン:②『タンポポ』(1985)

 

出演:山崎努、宮本信子、役所広司、渡辺謙、安岡力也、大滝秀治ほか

 

伊丹十三監督作品。

旦那に先立たれた未亡人が惰性でやってるラーメン屋行列のできる美味いラーメン屋にしよう、と先に見兼ねた周囲がやる気になって、本人が徐々に目覚めていく話。
いやま<庶民>代表の料理ラーメン。ロードサイドで何の変哲もない、「ただそれしかないのでやってます」というラーメン屋。ここに山崎努がたまたま長距離トラックの仕事の流れで立ち寄ったことから色々始まる展開。

ラーメンのおいしさを追求することもさることながら、食に対するマナー庶民に愛されることの大切さホスピタリティなどをある意味前述の<高尚>を引き合いに出して、形だけの追求と、それを形だけ踏襲し、従ってる<庶民>の滑稽さも描く。


偶然の人と人の出会いがどんどん色んな人を巻き込み、色んなアイデアを生み、この未亡人も自分の可能性を見つけ、自分にも周囲にも新しい価値を生み出す。寂れたラーメン屋で起きるドタバタ“ラーメン道”が本当に盛り上がる。

 

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タンポポのmatchypotterの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画


<庶民>パターン:③『劇場版 きのう何食べた?』(2021)

出演:西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗ほか

 

もともとTVドラマだったシリーズが劇場版で豪華な物語に。しかし、中身はいたって豪華ではない

お互いに惹かれ合いながら1つ屋根の下で暮らすシロさんケンジ。彼らにとってこの2人で囲む食卓自体がかけがえのないモノ。
それが劇場版でシロさんの提案でケンジの誕生日プレゼントとして「京都旅行」に!となる。
舞い上がるケンジ、しかしシロさんからセンシティブな話もあり・・・・。
 

色々ある中で、2人で食べるご飯2人で囲む食卓。結局2人でいる幸せって何だろう、という話に帰結していく物語がものすごく等身大で<庶民>にリアルな生活感を呼び起こす。
背伸びしようが、自分を誤魔化そうが、楽しいことや厳しいことがあろうと自分の生きたい道を生きることこそが悔いのない人生であると思える“食”を囲んだ人のありのままを感じる。

 

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劇場版 きのう何食べた?のmatchypotterの映画レビュー・感想・評価 | Filmarks映画

(c)2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (c)よしながふみ/講談社

<高尚>or<庶民>

やや強引に恣意的に(笑)無理矢理分けてみたけど、分けたら分けたで最初に言っていた差が多少なりともある気がする。
「食の映画」「料理の映画」と言っても、一言で片付けるには勿体ない世界がそこにはあった。

 

正直<高尚>だからと言って、出てくる料理がすべて美味しそうに見えるかというとそうでもなく<庶民>だからと言って、ありきたりで平凡な見た目と物語でもない

 

ただ、いずれにせよ、どちらにも共通して言えること。
“空腹時に観てはいけない”
これがこの手の映画を観る時にもっとも重要で注意すべきことかも知れない。


<完>

 

<高尚>おいしい料理の映画

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