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私の好きな映画

じょ〜い小川
2024/06/29 19:55

明治・大正・昭和の伝説の怪豪・怪人が一堂に集結『ゴールデンカムイ』 

〈作品データ〉

「週刊ヤングジャンプ」に2014年38号から2022年22・23合併号まで連載され、アニメも第4期まで放映された野田サトル原作漫画「ゴールデンカムイ」を山崎賢人主演で実写化したアドベンチャー&アクション映画!日露戦争の帰還兵の杉元佐一は一攫千金を夢見て北海道で砂金採りをしていた所、酔っ払いの男からアイヌの埋蔵金にまつわる話を聞く。話によれば、埋蔵金の情報を知った男が網走監獄に収監され、囚人24人に埋蔵金の在り処のヒントになる刺青を彫り、その囚人24人が移送中に脱獄したというもの。杉元はその話を聞いた直後にアイヌの少女・アシㇼパに出会い、二人で金塊探しとその鍵となる囚人らの刺青人皮を探す旅に出ることに。主人公・杉元佐一役を山崎賢人、アシㇼパ役を山田杏奈が演じ、他眞栄田郷敦、矢本悠馬、工藤阿須加、柳俊太郎、大谷亮平、勝矢、木場勝己、大方斐紗子、マキタスポーツ、秋辺デボ、玉木宏、舘ひろし、高畑充希、泉澤祐希、島津健太郎が出演。

 

・1月19日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー【PG12】

・上映時間:128分

・配給:東宝

 

【スタッフ】

監督:久保茂昭/脚本:黒岩勉

 

【キャスト】

山崎賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、矢本悠馬、工藤阿須加、柳俊太郎、大谷亮平、勝矢、木場勝己、大方斐紗子、マキタスポーツ、秋辺デボ、玉木宏、舘ひろし、高畑充希、泉澤祐希、島津健太郎

 

公式HP:https://kamuy-movie.com/

 

 

〈『ゴールデンカムイ』レビュー〉

映画を見る前まで「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた原作漫画もアニメも全く読んでも見てもいなかったが、なんとなくアイヌが関わる北海道での金塊探しのアクションとだけしか知らなかった山崎賢人主演映画『ゴールデンカムイ』。本作を見る前にほぼ作品前知識ゼロの状態で見てみたら、日露戦争や明治30年代後半といった時代背景で、大日本帝国陸軍の第7師団や網走監獄の囚人ら、脱獄王、土方歳三他新選組残党など、幕末から昭和初期に実在した数々の伝説的人物達が北海道での幻のゴールドラッシュで一堂に会する超大型アドベンチャー&アクション映画で、これにアイヌ文化とマタギ文化が存分に見られるので、原作の知識が無くても日本の明治時代の歴史や上記の文化が好きならかなり楽しめる!

 

今回の映画は杉元佐一とアシㇼパの出会いから、第7師団に囚われた杉元のアシㇼパや白石による奪還・脱出作戦までを描いており、筆者が後にアニメ版を見てみたらほぼ忠実再現がされていて、そのクオリティが非常に高いと見受けられる。

 

大半はこの作品元来の原作の魅力になるが、本来なら微妙に活躍期が異なり、実際には邂逅してない土方歳三や永倉新八といった新選組残党と大日本帝国陸軍の中でも最強と言われた第7師団、さらには「昭和の脱獄王」と言われた白鳥由栄や大正末期から昭和初期に活躍した柔道家の「鬼の牛島」こと牛島辰熊といった実在ベースのキャラなどが一堂に会させ、埋蔵金探しをし、そのヒントとして網走監獄の囚人に彫られた刺青の人皮集めをするといった幾重ものロマンが折り重なっているので、この辺りの歴史や文化に興味がある方なら原作未読でも十分に楽しめる。

 

その上、アシㇼパによるアイヌの狩猟・食・生活文化がたっぷりあり、さらに原生するヒグマの恐怖と戦いと北の大地の厳しい寒さの中でのサバイバルもあり、こうした文化も楽しめる作品になっている。

埋蔵金探しや敵対勢力やヒグマとの戦いで忘れがちになりそうな「寒さ」の描写もしっかりとしていて、佐一と白石による真冬の川に濡れてからの寒さ凌ぎのサバイバルはスリリングに描かれている。

 

こうした北の大地のサバイバルはレオナルド・ディカプリオ主演、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作品『レヴェナント : 蘇えりし者』と重なる。こちらもアメリカの西部開拓時代に実在した罠猟師ヒュー・グラスを題材にした原作小説ベースの映画で、国と時代は違えど極寒の開拓地での寒さと獣害のサバイバルに先住民との関わりなど、通じるものが多い。

 

また、同じく漫画原作で明治時代の日本を舞台にした映画『るろうに剣心』シリーズにもフィクションと実在人物・史実を織り交ぜた展開のさせ方は近いものがあり、後継作品と見るのも悪くない。が、より現代に近く、実在人物が多い『ゴールデンカムイ』の方が見応えがある。また、『るろうに剣心』シリーズが題材とした幕末から明治初期を題材にした作品はいくつもあるが、日露戦争の前後の作品となると舛田利雄監督作品『二百三高地』などの日露戦争をダイレクトに扱った戦争映画か、鶴田浩二や高倉健を主演にした東映の任侠映画、あるいは『八甲田山』や『劒岳 点の記』、『吉原炎上』などあるにはあるが比較的少ない。そういった意味でもありそうで実はなかったタイプの映画であり、『るろうに剣心』シリーズよりも遥かにのめり込める。

 

そして山崎賢人が演じる「不死身の杉元」こと杉元佐一の戦闘力・サバイバル能力の高さと、玉木宏が演じる第7師団の鶴見篤四郎中尉の不気味さと残忍さなど原作通り。山田杏奈が演じるアシㇼパに若干ぎこちなさを感じたが、そこは演者よりも低い年齢のキャラを演じる上の演出とも考えられるし、今後の長期シリーズ化を見据えた上での起用とも思える。矢本悠馬が演じた白石由竹は小柄でコメディもこなせる矢本悠馬にぴったりな役柄だし、勝矢の牛山辰馬もパワフルさを活かせているし、舘ひろしの土方歳三もカッコいい老剣士に仕上がっている。

 

ストーリー展開の一部にアニメと若干違う箇所もあるが、約2時間の実写映画にまとめるのに最適な演出になっていて、

『るろうに剣心』シリーズに匹敵する一大シリーズ作品の序章としては最高のスタートである!

原作漫画やアニメのファンならもちろん、原作・アニメに全く触れて無くても

日露戦争や明治から戦前の昭和の歴史やアイヌ、マタギ、網走監獄といった文化が好きなら必見である!

 

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