目には目を。鍼には鍼を。『梟』

褒めるとこしかない！！

　　　　監督、脚本:アン・テジン

　　　　　　製作　:韓国

　　　　　　製作年:2022年

　　　　　　主演　:リュ・ジュンヨル

　　　　　　時間　:１１８分

韓国サスペンスのお手本

と言いましたが、これハラドキも安定の巧さで魅せてるけど、物凄く人間の愚かさや虚さなどを描いたヒューマンドラマとして秀作です。悔しさとあまりの構成の上手さに、涙が溢れたわ。とにかく凄く良く出来てて、褒める所沢山あり過ぎる笑

目に針を刺すインパクトあるポスター（特に寝かせてるバージョン）素晴らしい。あとは『題名』鳥目とは違うんだわぁ。梟なのよぉ。同じく【盲目の人が目撃者】という設定が『落下の解剖学』と同じであり、梟という題名に通じるネタバレも被るというシンクロ。世界的に流行ってんのか？

朝鮮王朝のファクション

盲目のギョンス（リュ・ジュンヨル）は心臓の悪い弟と2人で細々と生きてきた。目は見えないが聴感覚と洞察力を買われて、宮廷入りした。時は1645年。朝鮮王朝の国王、仁祖（ユ・へジン）の息子、世子（キム・ソンチョル）が8年ぶりに、人質となっていた清から解放され戻ってきた。しかし、仁祖国王は明と懇意にしていたが、明が滅んでしまったのに、新しい事を受け入れようとしない。しかし、息子は新しい国を作りたいと考えていた。

もうね、老害なんだよ。そして、その立場にすがりついて嫉妬しちゃってんの。我が子なのに。気になる咳をしている世子に針を打ち、心の隙間にそっと寄り添った助言から、信頼を得たギョンス。喜びも束の間、世子急逝。しかも目の前で。死因は、感染症。

いやいや、そんな訳ないと証拠を持って逃げるギョンス！ここからのスリルったらない。世子の幼い息子から囚われた母（ユンソ）を助けてくれと懇願されるが、貧しいが故に目が見えない事を利用して、生き延びてきたギョンスが国王に逆らえる訳がない。このシーン、子役がまた良い。韓国はどいつもこいつも芦田愛菜か寺田心か、という演技派揃いで胸を打たれてしまう。また、さらし首がサラッと（オヤジギャグではない）出て来るのとか、センス良いわぁ。緊張感のピークに冒頭のシーンへ戻るのも最高の構成だ。

安定のキャスト

そして、哀れな仁祖国王を大好きなユ・へジンさんが怪演。笑いが１つも無く、さすがの演技力で魅せてくれる。長いキャリアの中で、王様役は初めてだそう。しかし、軽い脳卒中で後遺症が残る仕草や、恐怖心や猜疑心から起こす行動を見事に演じている。

実は、主演のリュ・ジュンヨルとは今回３度目の共演。「より繊細になっています。これは表現が容易な役ではありませんでしたが、彼は全ての細かいディテールにまで細心の注意を払っていました」と絶賛。そのリュ・ジュンヨルも共演はもちろん嬉しかったようですが「二度共演したから、三度目も同じだろう”という気持ちはなかった。今作ではまた別の姿でお会いしたかったし、また別の感情でユ・ヘジンさんと演じられるという期待があった」と。また、「予想通りこれまでとはまた違う印象だった。なぜユ・ヘジンさんが愛される俳優なのかわかり、大きな感動を受けた」と、ユ・ヘジンへの尊敬を明かしたそう。このあたり目上の方を敬うコメントが、非常に韓国らしくて良いのです

ギョンスの同僚の医師を「パラサイト半地下の家族」のパク・ミョンフンがコミカルに好演。

側室役のアン・ウンジン（「賢い医師生活」でお馴染み）側室らしいあざとさはお見事。また世子の奥さん役、ユンソは見たことあると思ったら「不思議の国の数学者」で高校生役してた子じゃん！31歳だったのね〜。そっちにビックリ。

光と闇、ポイントのロウソク

光が眩しいと見えにくいのは、白内障の症状らしいのですが、私も雪国ならでは、軽い雪目になって眩しくて目が開けられなくなります。この作品の多くは宮廷内での出来事。夜はロウソクの光が頼りです。そして、それが消えた所からが、ギョンスの秘密の見せ場。そこに説得力を持たせるか否かで、観客が後半楽しめるかどうかが掛かっています。もちろん、ここにも成功しています。